【新波】新しいことを始めた育児漫画作家さん

『夫の扶養から抜け出したい~専業主婦の挑戦』(ゆむい)感想~子育て中の主婦が復職することの難しさ

投稿日:2018年11月22日 更新日:

おはようございます。末尾です。
今日はゆむいさんがサイト「ママの求人」で連載中の『ふよぬけ』の紹介と感想です。

夫の扶養から抜け出したい~専業主婦の挑戦~(ゆむい)

子どもの妊娠・出産を機に、仕事(夢)を諦めた主婦の「ももこ」、仕事をして家計を支える夫の「つとむ」夫妻の、仕事を巡る物語です。

仕事や家庭、行政の問題や不満を表面的にさらうのでなく、妻の生き方や考え方や夢、夫の生き方や考え方や夢まで掘り下げて描かれており。それぞれの気持ちや言い分が理解・共感できるし、根の深い問題だと改めて考えさせられます。

●「ママの求人」で連載。読めるのは1~6話と最新話です。

※追記:単行本が発売されたので、記事の最後に単行本を読んだあとの感想も加えました。単行本は連載全21話+描きおろしを収録。描きおろしが加わったことで、連載時よりも印象(物語のバランス)が良くなりました。

内容紹介

夢をあきらめて家事や子育てに専念している専業主婦・ももこ。

夫に扶養されている無職の自分になんとく罪悪感を感じ、パートに働きに出ましたが、待っていたのは夫・つとむさんからの言葉。

「たった40万円の収入で『共働き』って堂々と言えんの?」

ショックを受けるももこは、つとむさんの転勤が決まり、当然のようにパートを退職し再び専業主婦にー。
気持ちがもやもやするなか、さらにショックな出来事がももこを襲う?がんばれももこ!

『ふよぬけ』第一話より引用

作者のプロフィール

ゆむいさんは、育児漫画ブログ「ゆむいhPa(ヘクトパスカル)」を運営しているイラストレーター。女性。

お子さんは2012年2月生まれの長男・みつ君、2014年4月生まれの次男・みの君の2人兄弟。
家族はゆむいさん、夫・ぷーさん、みつ君、みの君、の4人です。

夫・ぷーさんが転勤族で、最近も長野から関東の方へとお引っ越しされていました。

●作者Twtter:@yumuihpa
●作者Instagram:@yumui_hpa

感想

コミックエッセイ形式なので勘違いしそうですが、『ふよぬけ』は創作漫画(フィクション)です。
感想には14話までのネタバレを含みます。

女性の再就職の理想と現実

『ふよぬけ』で主人公のももこは、出産のタイミングで「漫画家になる」という夢を諦めます。

選ぶ仕事は、
・資格なし
・正社員としての経験もなし
・2歳の子どもがいる
・夫の都合で転勤もあり得る

…といった条件をクリアできるもの。
「興味があるかどうか」といった自分の気持ちを押し殺し、「子持ちな自分でも採用してくれそうな職場」を探す日々。

産後の再就職活動をした人なら分かると思うんですが、↓ みたいなこと、本当に言われますよね…。面接前の電話の段階で言われたり、面接で言われたり。

子育てをした経験は、仕事にも活かせると思うのですが、そういった経験は考慮してくれなくて、産前に働いていた「履歴書に書いてある経験」だけを問われる。

保育所もいっぱいで預けられない。子どもがいるから残業ができない(短時間勤務になる)ことや、子どもの病気やケガで突然休む可能性は、経営側には「リスク」に映る…。

就職活動をしていると、だんだんと疲弊していって。「自分は労働市場では何の価値もない人間だ…」などと、暗いことを考えてしまったり、「働ければどこでもよい!」と、自分の過去のキャリアや「やりたいこと」「適性」を見失って、ひたすら「採用してくれるところ」を探して猛進してしまう。

なので友達の、こういった冷静な視点(つっこみ)はありがたいですね。

ももこは就職活動を経た後、悩みに悩んで「もう一度絵の仕事にトライする」と決意します。絵や漫画の仕事はフリーランスで不安定だけれど、これまでの自分自身の経験や人脈を活かせるし、子どもの体調等の心配をしなくて済むからです。

この決断は良かったと思います。アルバイトやパートに拘らず、自分を活かせる道を選べて良かったと安心しました。

夫との関係

でも、夫のつとむさんには、ももこの苦労や葛藤が全く伝わっていない。好みだけで仕事を選んでいるように見えるし、一度は諦めた夢に、しがみついているように見える。

ももこが「自分のことを伝えきれていないのに妥協している」部分もありますが、八つ当たりのようにも見える。家族はチームの筈なのに、自己責任論を振りかざして、言葉で殴りつけている。

つとむさんはつとむさんの考えで、家族の為に我慢しながら仕事をしているとは思うのですが、つとむさんは、なんでこんなに優しくないのか…。

相手を思いやれないほど、余裕がないのかな。もうちょっと、ももこの話をちゃんと聞いた方が良いと思います。

厚い常識の壁

そもそも、従来日本では、「男性は外で働いて稼ぐ、女性は家で家事育児をする」を良しとしていました。そういった「時代に合わない常識」の刷り込みがある。

この刷り込みのやっかいなところは、「女性は特に悩むことなく家事育児が出来る生き物」といった、間違った認識を産むことでもあり…。

いや、家事育児も、普通に得手・不得手があるものです。ももこは「家事は苦手」と語っているし、育児についてはお子さんの特性によって難易度や負担が大きく変わります。

でも、つとむさんはその可能性を考えもしない。そこには、共働きしながら育ててくれた実母の影響もあるかも知れません。

家事や育児が疎かになるのは、「ももこの努力不足」と責め立てる。
ここまで来たら精神的DVだとも思います。さすがに。

役割分担がはらんでいるリスク

つとむさんが、ももこの責任を追及するのは、つとむさんの性格の問題ではなく、「そうなりやすい仕組み」のせいだとも思います。

家族で生活するうえで「やりがちだけどやっちゃいけないこと」に、「役割分担をはっきりさせる」ことがあります。最初から「家事シェア(共有)」みたいな考え方だったら、また違ったと思う。

会社などでも担当部署=責任者と決め付け、自分の仕事以外には無関心になる「セクショナリズム」が問題になることがありますが、「担当を決める」ことは、「あなたの責任」と全てを押し付けたり、「自分は無関係」と思いこむ人を増やすことでもある。

つとむさんの気持ちも分からなくもないですが、正社員だけが社会人ではありません。ももこもアシスタントやパートとして働いて来たのだから、社会人経験はあると捉えた方が良いとは思います。また、家族の問題を「社会の常識や規範」と照らし合わせるのもナンセンスです。

ついでに、話し合いに「酒飲んでるタイミング」は最悪だと思うので、ももこも気をつけた方が良いと思う…。無駄にトラブルが増える…。

ももこもつとむさんに甘えすぎ?

ももこの言い分に共感しつつも、気になる部分があります。
色々な不満を抱きつつも、メイン収入源(仕事担当)=つとむさん、であることは疑っていません。

年収の目標額は扶養を抜ける程度の201万円。子どもの面倒をみながら目指すには非常に高い金額ですが、ももこの収入だけで一家3人が生活するのは難しい。また、彼女の仕事はフリーランス。収入金額を会社員と同じように考えるのは危険です。
※イラストレーターの平均年収はライトノベルの挿絵など定期的な仕事を担当する人気作家でも300~500万円程度と言われる厳しい世界です。多くは年収100万円未満です。
※年金や健康保険といった社会保険料が自己負担であり退職金等ないことを考慮すると、フリーランスは会社員の3倍稼ぐ必要があると言われます。

ももこが「夫の扶養から抜けること」を目標としたきっかけは離婚であって、つとむさんを思いやっての結果ではありません。

今、つとむさんが病に倒れたら、ももこはどうするんだろう?
傷病手当金が支給されるからそこまで生活が逼迫することはありませんが、「なんで倒れちゃうの??」「仕事はあなたの役割でしょう?」…と責めたりはしないか。

ももこの気持ちも分かるし、彼女は頑張っていると思うけれど、この辺については認識が甘いと思います。

夢を諦めるということ

ももこは出産を機に「漫画家になる」という夢を諦めます。
でも、その夢は「つとむさんがももこを好きになる理由のひとつ」でもあった。

いやー、あのねー、私も勝手だとは分かっているんですけれど、パートナーの夢に、夢見ちゃう部分ってあると思うんですよ。パートナー(ももこ)の才能を認めているからこそ、夢を応援・支援した、つとむさんも過去にはいた筈で。

ももこは「子どもが産まれて自分の夢を諦めた」と書いているけれど、つとむさんにとって「夢を諦めたももこ」って、魅力が半減というか、「あれ…?ももこの何処が好きだったっけ…?」「夢を諦めたももこの何処を好きになれば良いんだろう…?」といった、堂々巡りを生み出すとも思うのです。

勝手に夢を諦めるなよ、と。俺を裏切らないでくれ、と。思うのではないかと。

その失望が現れているのが ↓ のコマですが、ここは、つとむさんのターニングポイント、ももこに呆れ果てて、何かを切り捨てた瞬間だと思う。読み飛ばしてしまいそうだけれど、ここは重要な転換点だったと思うんです。

その結果、「ももこに家事や育児を押し付ける」=「努力家のももこに新しい”結果”を見せて欲しい」という行動に繋がるとも思います。自分も頑張っているんだから、ももこも頑張れと。ややこしい。

「ももこ(家族)の生活を支える」は、つとむさんの願いだった筈なのに、気が付いたら「ももこの生活は自分の犠牲によって成り立っている」にすり替わる。こういう思考のすり替えもよくあるよね…。あるある…。

つとむさんの苦しみや「男らしさ」の呪い

作中では描かれませんが、つとむさんの苦しみ、葛藤もあると思うんです。
現実というか、仕事というか、お金というか。毎日の生活が重たくて、一緒に考えて欲しい。でも自分の役割は仕事という思いもあって。

SOSを出したくても出せない、泣きたくても泣けない、仕事をして家族を養って一人前という、男性にかけられた「男らしさという常識の呪い」もあって。それが男性の自殺率を高めてたりしているとも思うのですが。
※一般に日本人男性の自殺率は女性の2倍と言われます

つとむさんには、つとむさんの苦しみや葛藤がある。

↓ のセリフは、本心だと思いますよ。生活を支えずに済む、仕事を選べる、担当である家事で手を抜いたり外注したりできる、ももこが心底うらやましい。

ももこだけに何でもかんでも背負わせるのは心苦しいのですが、夫婦は「病めるときも、健やかなるときも」と誓い合って結婚した仲です。

私には、つとむさんが心を病んでいるように見える。今はうつ病とかではないけれど、このまま仕事を続けていたら、うつ病とかアルコール依存症になりそうで心配。しっかりしているように見えて、ももこ以上に常識の呪いに蝕まれているのは彼だと思うのです。

つとむさんの役割は、誰かに代わってもらうことができないという思い込み。その苦しみは人を狂わせると思うし、実際、つとむさんはどこか狂っている。

ももこも「つとむさんがおかしい」とは考えていると思う。でも、ももこにも余裕がなくて、「つとむさんが心配」にはならない。難しい。

親と子の負の連鎖

ももこの父親は、母親に暴力をふるう人だったことも描かれます。

自分の父親≒毒親の存在によって、つとむさんの毒(精神的DV、モラハラになっている言動)を許容してしまっているとも思うのです。自分が生まれ育った家庭によって植え付けられた常識は、無意識に毒を許容してしまうものです。

このままだと、ももこの父親とは形が違うけれど、家庭の状況は同じようになるのではないか。
言葉のDVはエスカレートしていくし、それはそのうち殴るといったフィジカルな暴力になるかも知れない。

つとむさんがももこに家事育児を押し付けるのも、自分の母と重ねて、刷り込まれた常識を押し付けているように思います。

これからどうなっていくんだろう…

ももこは、「自分がどうしていくか」を決めて、行動を始めました。もう、つとむさんの言葉には流されない。これからが本番です。

現在14話まで公開中の『ふよぬけ』。
全21話で、来年1月中には終了するそうです。これからどうなっていくんだろう…楽しみ。

どんだけ僕を悪者にしたいんだよ 『ふよぬけ』14話(ゆむいhPa)




主夫を描いた漫画を読んで「夫婦の役割」を考えてみよう

『ふよぬけ』を読んでいると、ももこの気持ちが分かる分、つとむさんの気持ちや、存在価値が分からなくなる方もいると思うのです。正直、「…つとむ…ムカつくわあああ…!」と怒りに打ち震える方や、「つとむと家族である必要性って何なの?」と思う。

私がブログを始めた5年前よりはマシになった気がいますが、今でも「性別役割分担」の呪いや、「女らしさ」「男らしさ」の呪いは存在すると思います。

そういった、自分の中の「バカの壁」に気付く手段のひとつが、主夫漫画を読むことです。

プロチチ3巻(逢坂みえこ)

『プロチチ』は専業主夫の夫と、編集者として働く妻が子育てをしていく様子を描きます。

主人公・直は、息子・太郎を保育所に預け、書店でアルバイトを始めます。そこで、「自分ばかりが家事や育児を担当している」問題に気付き、妻に、家計に占める給料の割合を基に、家事や育児を分担するよう、求めます。


妻・花歩は、お金の力を使って育児をアウトソース(この場面は「保育所へのお迎え」をベビーシッターに任せた後の場面)。
同僚との会話では「アルバイトと自分の仕事を同列に扱ってほしくない」といった本音も覗かせます。

『プロチチ』はコミカルに物語が進んでいくので、単純に面白い漫画であるのですが、自分が同じような問題に直面した時、「ふ、深い…」と思わせるセリフや諍いが描かれています。全4巻なので手を出しやすいのも嬉しい。

拙者、無名でござる(丸本チンタ)

Amazonの「Kindleインディーズマンガ」で無料公開中の『拙者、無名でござる』も、主夫の主人公が家事育児を担当しながら、「忍者」という夢職業を続けていく…という物語。


※楽天やYahoo!のリンクありますが、配信はAmazonだけです

この漫画では、妻がメインで働いて、家計を支えています。
夫の「忍者」という仕事では生活ができない。夫が家事育児を担当しているのは、そういった流れに乗った結果でしかない。

「夢を追う」夫を支えるのは、結構、大変です。
自分ももっと子どもと関わりたい。夫を信じているけれど、現実を突きつけたくなる時もある。疲れて愚痴を吐露したいときもある。

あなたの夢は素晴らしいと思う。でも、それを叶える為に私が「犠牲」にならなきゃいけないの??
こういった思いは、つとむさんの気持ちにも繋がります。

子どもが生まれてからの家庭に潜む闇というか影というか。当たり前にある「悲しさ」をうまく切り取っているな~と思うのです。お勧め。

新ニッポンの父ちゃん ~兼業主夫ですが、なにか?(杉山 錠士 (著), アベ ナオミ (漫画)

主夫となった杉山錠士さんの日常を描いたコミックエッセイです。
これを読むと、私たちの発する不満などは、「男性」「女性」という性別ではなく、「役割」によって成立していることに気付かされます。

でも絶版してるなこれ…。Kindleもないとは残念…。良い漫画なのですが。




結婚後の女性の仕事

女性の労働に関しては、「M字曲線」というグラフが有名です。
「女性は結婚、出産のタイミングで仕事を辞める」ことが数値的に現れたグラフ。

調査が始まった昭和50年頃はハッキリとした谷が出来たM字でしたが、30年を経た平成24年(2012年)には谷が緩やかになり、右側(年齢が上の方)にずれています。

男女共同参画白書 平成25年版 > 第1-2-1図 女性の年齢階級別労働力率の推移

別のグラフで見てみると…。結婚で退職する人の割合は減りました(水色部分、37.3%から25.6%に減少)。
国土交通省『平成24年度 国土交通白書』第2章 第1節

でも、出産後も働く人の割合は変わらず(ピンク+水色、24.0%→26.8%)、出産を機に退職する人はむしろ増えています(緑色、37.4%→43.9%)。

結婚後も働く人は増えましたが、女性の「働き方」=雇用形態については、パート・アルバイトの比率が非常に高いです(オレンジ部分、28.5%→42.4%と増加。男性は3.3%→9.5%で増加しているが女性の4分の1以下)。
男女共同参画白書 平成25年版 > 第1-2-8図 雇用形態別に見た役員を除く雇用者の構成割合の推移

今、子育てしてる人は20代~40代だと思いますが、私たちが子どもの頃よりも専業主婦は減り、共働きが増えています。しかし、数字を見ると出産を機に退職する女性は増えているし、正社員は減り、非正規雇用が増えています。

出産を機に退職した理由は様々だと思いますが、保育所不足の問題、保育所は「働いていないと入れない」といった制度の問題、企業側の理解不足…等々、「子どもを育てながら働くのは難しい」というのが現実であり、それは個人の努力では解決できない社会問題です。

個人の問題か、社会問題か?

ももこのように、頑張ってパート・アルバイトを始めても、保育費用と給与がとんとんで、働く意味はあるのか?…といった状態に陥っている女性は多いとも思います。離婚を考えるほど追い詰められても、子どもを育てられるほどの給与を得ることは難しい。”子どもの将来ために”離婚を選ばない(選べない)女性も多いのではないでしょうか。

ももこのキャリアは「ただ夢を追いかけていただけ」「将来のことを考えてない」ようにも見えますし、「転勤族なのは分かっていただろう」などと彼女の過去を責めたくなる部分もありますが、全てが彼女の問題であり自己責任とするのは違うと私は思います。

がんばり続けないと、正しい選択を続けないと生活が維持できない世の中はおかしい。作中で描かれる、夫婦の様々な衝突の根っこには、社会や政治の問題があると思います。

例えば、保育所の待機児童問題以外に、女性の所得が男性よりも著しく低い≒男女の賃金格差や女性の貧困問題もありますし、上で「非正規雇用が多い」と書きましたが、非正規雇用の労働単価が著しく低いのも日本の労働問題です。

個人の性格か、環境に生み出されたものか?

同様に、つとむさん個人の問題と思える部分も、社会問題に繋がると考えます。
つとむさんのモラハラ言動の原因は、勤務先が「ブラック企業」であることだと考えます。

説明が長くなるのでグラフ等は示しませんが、日本は他の国と比べ労働時間が長く生産性が低いと言われます。「過労死」という言葉が生まれたのは1980年代ですが、それから40年近くを経た現在も状況は改善していません。

つとむさんの「性格に見えるもの」は、男性にかけられた常識の呪いと、長時間労働の問題が相まって生じていると考えます。残業もなく十分な休息が取れ、時間に余裕がある生活を送っていたら、つとむさんは作中に描かれたようなモラハラ言動を行わないと思います。

※2019/6/19追記:
この辺の「子育て世帯に関わる社会問題」について詳しく知りたいという方がいたら、こちらの本が分かりやすかったです。ももこ・つとむ夫妻を見て「うちと同じ…」と思った人、「自己責任」と思った人、どちらにもお勧めです。

しかし、政治や制度は今すぐ変わるものではないので、個々人や個々の家庭が努力して乗り切るしかないっていう現実がある…。色々と難しい、しんどい時代ですね…。

まとめ

『ふよぬけ』は甘い絵柄のコミックエッセイで、「ある夫婦の物語」として読んでも良いのですが、意外と深い問題に切り込んでいる(社会問題の可視化を試みている)と思うので、読みながら感心しています。

『ふよぬけ』のテーマの一つは「夫の扶養から抜ける」ことですが、「扶養」って、社会保険の扶養や税制上の扶養など複数あって分かってない方も多いのでは。そういった制度の説明はあっさりしている感がありますが、「夫婦」「家族」「働くということ」に潜んだ色々な問題が描かれていて、読んでいて楽しいです。

来年1月には完結するようなので、これからどうなっていくか、楽しみにしています。

***

2019/2/8追記:

単行本が発売されました。Twitterで書いた感想を追加しておきます。

単行本の感想

上の感想は連載時のものなので絵がカラーですが、単行本では白黒になっています。でも見劣りすることはなく、自然な仕上がりでした。
単行本化に合わせて描き足した部分がとても良くて、WEB連載では不足と感じた部分や事情が理解しやすくなっていました。

単行本では、ももこが自身が「夫の扶養から抜けたい」と考えた理由ときちんと向き合って、ひとつの”解”を見出した場面が描かれています。そこは是非、読んで欲しいです。

「ご都合主義」を一切せず、ももことつとむ、それぞれの「筋を通した」構成は素晴らしかったです。

つとむさんにかけられた呪い

連載途中で書いた感想でも言及しましたが、私は、つとむさんは「現代日本人男性にかけられた呪い」を体現していると考えています。彼の「性格に見えるもの」は多くの父親(あるいは稼ぎ担当者)が持つ要素です。

「日本人男性にかけられた呪い」は、日本の労働問題であったり、教育の問題にも繋がりますが、『ふよぬけ』はその呪いを可視化した作品だと思います。

ももこへの厳しい眼差し

その一方で、ももこという存在によって「日本人女性が気付いてない甘え」や「見失っている可能性」をも示した。そこに、真の男女平等を追及していく作者の意識、フェアネスを感じました。

育児中の母親は扶養の範囲内でパートかアルバイトで当然…。
始める前から自分の可能性を諦めている、ももこのような人は少なくないと思います。

『ふよぬけ』で、主人公のももこは、”働くことは生きることだ”という、当たり前にも思えるメッセージを口にします。
でも、その”当たり前”を深く考えた人は少ないとも思うのです。

まとめ

連載よりも、描きおろしを加えた単行本の方が各段に面白かったです。
可能であれば、働いている色々な世代の男女に読んで頂いて、自分の生きる道を再確認して欲しいと思いました。

単行本発売に合わせて公開された、作者・ゆむいさんの「あとがき」が面白かったので未読の方は是非。

「あとがき」で予告された、新連載も気になるわ~。福祉がテーマらしいです。
※追記:描かれるのは共働きの正社員夫妻です。『ふよぬけ』とは違った切り口で子育てや仕事について描いています。

親になったの私だけ!?社会福祉士ママと保育士パパの子育て奮闘記

他の人の感想も読みたい!という場合は、こちらをどうぞ。

【マンガ】『夫の扶養から抜け出したい』(ゆむい)単行本の感想まとめ(Togetter)
ふよぬけ書籍の感想ありがとうございます!(ゆむいhPa)
重版出来!広告出稿と感想記事紹介

『ふよぬけ』と似たテーマを描いてる漫画

産後クライシスや、子育て中の夫婦について描いた漫画がいくつかあります。
いずれもWEBで連載していて、今でも全話、WEBで無料で読めます。

本当の頑張らない育児

サイト「コノビー」で2017年12月連載スタート。好評を博し、連載の累計PVは500万を突破。全25話+番外編。正社員と働いていた女性が出産してから育休復帰するまでの日々が描かれます。単行本も出ています。

本当の頑張らない育児

伝説のお母さん

子育て中のイラストレーター・かねもとさんが描いた、ファンタジー世界の保活漫画。魔王が復活した世界で、子どもを保育所に預けられず、戦線に復帰できない魔法使いが主人公です。保活や育児と仕事の両立の難しさをコミカルに描いています。単行本もあります。

伝説のお母さん(いっぱいかあさん)

欲しいのは「つかれない家族」

深刻な産後クライシスに陥った、イラストレーターのハラユキさんが様々な夫婦・家族にインタビューし、「つかれない家族」を作るためのヒントを紹介していく漫画です。今作だけ連載中です。
※深刻な産後クライシス体験を描いたコミックエッセイ『王子と赤ちゃん』もお勧めです…。

ほしいのは「つかれない家族」

水谷さるころさんの本とか連載

バツイチ同士で再婚した、事実婚カップルによる家事や育児のことを考える連載。単行本『めざせ!ツーオペ育児~2人で親になる訳で』『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』にも、夫婦での家事育児シェアや役割分担についての体験談が綴られています。

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