【医療】妊娠・育児の豆知識

母乳が出るハーブティはアフィリエイトによるデマです~母乳が出ない・不足すると悩んでいるお母さんへ

投稿日:2014年12月4日 更新日:

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最近、この本を読みました。 江戸しぐさという偽史を検証した本です。大変おもしろかった。「江戸しぐさ」についてはこの辺を参照。

“偽物の歴史”を教育に用いるのは、倫理の根幹を破壊する行為~「江戸しぐさの正体」著者・原田実氏インタビュー (1/2)
第2章まで試し読みできます

そして気付きました。「母乳にハーブティが効く」という話は江戸しぐさと同じで、商売の為に作られた「流行」、ある種の信仰であると。

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アフィリエイト収入の為に作られた嘘

自分もハーブティを飲んでいた

出産後、全然母乳が出なかった。自分のおっぱいは冷えてこわごわとしていて、助産師さんも心配していた。冷え症でもないのに、芯まで冷えていると言われた。
薦められるままに葛根湯を飲み、足湯をしても、全然変わらなかった。
同じ病院で自分の3日後に赤ちゃんを産んだ女性のおっぱいはアイスノンで冷やすほど熱く膨れ、母乳が滴り落ちるほどだった。
妊娠中からおっぱいマッサージもして、準備万端だと思ったのに。入院中は、一晩中娘におっぱいを咥えさせながら眠れない夜を過ごし、助産師さんに勧められてミルクを足した。よくわからない罪悪感で泣いた。娘に申し訳なかった。

退院の日。娘は母乳を20gしか飲めておらず、1週間後に母乳外来に来るよう言われた。ダメな母親だと言われているように感じた。
心配になったのだろう。退院指導を担当した助産師さんが「マリエン薬局のハーブティは効果があると聞く」と教えてくれた。そういえば妊娠中に読んだ漫画にも、ハーブティが効くと描かれていた。産院の部屋にもハーブティが置いてあった。
藁にもすがる思いでその日のうちに注文し、ドイツから届くのを待った。届いてからは毎日5杯くらい飲んだ。早くおっぱいが出るよう、祈りながら。

飲み始めると、数日でおっぱいが張るようになってきたように感じた。助かった…と安堵し、苦しい局面を救ってくれたハーブティに感謝した。
その後も、乳腺炎を予防する為に飲み続けた。1度も乳腺炎にはならなかったので、再びハーブティに感謝した。

ブログ「育児漫画目録」を始めた後、妊娠時に読んでいた漫画の感想を書きながら、一緒にマリエン薬局のハーブティを薦めた。効果があると思ってた。
その後、森戸先生や戸田先生のブログと出会い「ハーブティが母乳分泌を促進する効果は実証されていない」 と知ったが、リラックス効果くらいはあるだろうし、私には効いたし、まあいいか、と思っていた。

アフィリエイト報酬は1点400円

最近、アフィリエイト商材を確認していたら、マリエン薬局ではないが「母乳がでるハーブティ」があることに気付いた。アフィリエイト報酬の金額を見て驚いた。

私はブログで漫画を紹介しており、1冊1000円の育児漫画が1冊売れると、商品の1%(10円)が手に入る。ハーブティは1点1796円(税込)で、商品単価の24%(約400円)が得られる。破格である。

ふと思った。

「私が飲んだマリエン薬局のものではないけれど、ハーブティやたんぽぽ茶は母乳に良いと聞くし、紹介しようかな…?

魔が差した。でもその瞬間、はたと構造が理解できた。

ハーブティを飲んだ人が「自分が試した上で、効果があった」と他人に薦める。1点売れたら、400円が手に入る。母乳が出なくて不安な誰かの為になり、自分の利益になる。だから、広めようとする。
それが積み重なって「ハーブティを飲めば母乳が出る」という数値的な根拠も、検証結果もない情報が「さも事実であるかのように」扱われるのではないか。

「母乳神話」が生み出された原因の一端は、アフィリエイト広告が握っている。

Googleの検索上位はハーブティのアフィリエイトばかり

Googleで「母乳 でない」で検索すると、結果にハーブティの広告が表示される。

母乳がでなかった体験や自分の苦しみを書くと共に、ほぼすべてのサイトで、ハーブティを売っている。
例えば検索結果の1位として「母乳がでない・母乳不足の人へ」というサイトが表示される。→Web魚拓

一見、情報サイトに見えるが、左上に商品リンクがでかでかと存在している。運営者情報は企業ではなく個人で、名字は書かれているがフルネームではない。住所も詳細はない。これは個人のアフィリエイトサイトである。

母乳育児を強調した上で「ハーブティが効果的だった」と書いている。買うしかないような気分になる。

検索1ページ目、全てでハーブティを勧められる。これは信じてしまうだろう。

ハーブティが効くことの根拠は"個人の感想"

リンクをたどってハーブティの販売元にいく。「試して良かった今は完母です!」と書いている。→魚拓がブロックされたのでarchive.today(キャッシュ)

効果的とする根拠は製造・販売している会社自身が実施した「ハーブティを飲んだ人の感想アンケート。効果効能には個人差があるとの警告表示もある。

※↓の文章
効果に個人差があるのは別にいいとして、アンケート結果の数字の読み方がおかしい

問1では”少しはでているが十分な量ではなかった”という当たり前のことを「悩み」としてアピールしている。
問2では、母乳がでない時に実践した内容を書く。強調されている66.8%は「水分補給」「食べ物・飲み物に気をつける」「ハーブティの」の合計である。ただの水分補給が26.2%であり、ハーブティ単体では17.6%である。

これにより、「食べ物に気を付けるという新常識の刷り込み」と「母乳が出ない時ハーブティを対策とする人が多い」といった印象操作を行っている

問3では飲み始めて実感できるまでの日数。「実感」=個人の感想である。

母乳がでるまでには時間がかかる

産後の身体は疲れている。ホルモンバランスも激変する。赤ちゃんだって初めておっぱいを飲むのだ。慣れるまでには時間がかかるだろう。口の大きさだって乳首の大きさだって、個人差がある。初日からは、上手く飲めなくても不思議ないだろう。

周りの人のサポートを得てちゃんと寝て、美味しくごはんを食べる。テレビだって見ても良い。リラックスして待っていれば、母乳はでるようになる。

出来るだけおっぱいを吸わせて、赤ちゃんが慣れるのを、おっぱいがでるのを、ただひたすら待つ。待つのはつらい。でも子育ては待つことの連続だ。これから先の予行練習。子どもの成長を待つ方法を模索しても良いだろう。

自分は2カ月かかったけど、そのくらいかかる場合もある。

助産師さんに娘の口の大きさに対して私の乳首が大きくて吸いにくいのと、体重が少なく(生後1カ月で4200g)体力不足だから、安定するまで1~2カ月はかかるとも言われたが、振り返ると最初の1カ月、まともに寝てないからだと思います…ハーブティ飲まずに寝ろよと…。

何故、根拠がないのに信じるのか?

ハーブティは多数のメディアで紹介し、芸能人も飲んでる。効果を感じた。だから信頼できる。果たしてそうなのか。

2012年12月に発生したアメブロのステマ事件を覚えているだろうか?芸能人も仕事。報酬面で合意できれば広告に協力するだろう。

お金を出して買った広告記事であっても、地方放送のCM枠でも、メーカーは「雑誌・テレビで紹介した」と言える。嘘は言っていない。TV局や出版社にとって、メーカー(広告主)はお客様だ。わざわざ否定することはない。

霊験あらたかな壺を売っているのと変わらない

アンケートの問4は「友人・知人への紹介したいと思いますか?」回答者の96%が紹介していると答えている。

ハーブティやたんぽぽ茶について、1人目の育児の時に「効果がある」と錯覚したら、人に薦めるのは自然なことだ。

自分と同じように、苦しむ人に光を与えることが出来る喜び。アフィリエイトを利用すれば、お金というわかりやすい”御利益”もある。それはとても幸せな事実だ。

しかし、壺や水晶で母乳がでるようになるという根拠がないように、「ハーブティを飲めば母乳が出るようになる」科学的な根拠は全くない。「たんぽぽ茶」なども同じ。

メーカーとしては笑いが止まらないだろう。効果に保証がなくても売れる。検査もいらない。効果を調べる必要も示す必要もない。

クレームも無く、感謝され、時間が経てば自動的に顧客が変わり、また売れるようになる。アフィリエイト手数料として商品の24%もの金額を支払えるのであれば、原価は、メーカー側の利益はいくらだろう?ホメオパシーで砂糖玉を売るのと同じ話である。

母乳ビジネスは商売の構造がカルト宗教と同じです。詐欺です。ハーブティを飲まなくても、きちんと寝て、ごはんを食べていれば、母乳は出るようになる。

別に最初から完全ミルクにしても問題ない。義母の話だと私の夫は最初だけ母乳、途中から完全ミルクで育ったようです。昭和40~50年代生まれはミルク育児が多かった。一時的にミルクで補った後、完全母乳に移行することもできます。

しかし、自分の希望通りには進まないかも知れません。ミルクにしたいのに母乳がですぎて乳腺炎になるから吸ってもらわざるを得ないこともあれば、母乳にしたいのに全然出なくてミルクにせざるを得ない時もあるでしょう。

どういう方法であれ、お母さんと赤ちゃんが笑顔で過ごせれば、それで良いのではないでしょうか。

デマが「事実」に変わる時

数値的な根拠がない「母乳が出る自然なハーブティ」という不自然な存在に頼る。紹介する。それが続く。

「江戸しぐさ」と同じで、今現在、「おっぱいが出ない時にハーブティを飲んでいた」というデマが事実(史実)に変えられようとしている。

最近は「妊活に効果があるハーブティ」も登場しました。そのうち、就活に効果があるハーブティも登場するでしょう。

真っ当な情報源を選ぼう

情報を判断するポイントは「内容」に注目することです。発言者が他に変わっても、例えば自分が一番嫌いな人が言ってもうなずけるかどうか。

でもそれは、上級者向けの方法なので、まずは”真っ当な”情報源を選びましょう。

産後の育児については、産婦人科医・戸田千先生と小児科医・森戸やすみ先生のブログやTwitterが参考になります。

(母乳育児の食べ物情報はこちらのブログ)
やわらかな風の吹く場所に:母乳育児を応援
戸田 千 (@miyakowasureLC) | Twitter

(小児医療や子育てや育児漫画)
Jasmine Cafe
森戸やすみ (@jasminjoy) | Twitter

ちょっと難しいけど、幅広く勉強になるこちらのブログもおススメ。
ふぃっしゅ in the water
うさうさメモ
とらねこ日誌

私が紹介した方たちも、間違えます。勘違いをします。でも、間違いを認め、反省し、謝罪することが出来る方たちです。だから信頼しています。
この記事を読んだ皆さんが、私と同じ轍を踏みませんように。

***

その後の情報を追加

2017/8/27追記:
森戸やすみ先生、戸田千先生、ナカイサヤカさんに紹介頂いたおかげで、沢山読んで頂き、ありがとうございます。
頂いた感想はTogetterでまとめました。
母乳が不足するときはハーブティが効果的?根拠のない助産師監修のハーブティ販売について

この中から気になった情報を上げます。

2017年時点の怪しい話

現在、上で取り上げた「AMOMA」は、全国の産婦人科や助産院でサンプル配布が行われています。現場の助産師に勧められたといった声もありますが、効果を示すエビデンス(研究結果など)はありません。単なる口コミ、デマですのでご注意ください。

でもなぜ助産師がデマを言うのだろう?と思う方もいると思いますが、「日本助産師協会」という団体がそもそも、信頼できない部分がありまして。
過去にホメオパシー(これも、「レメディ」と呼ばれる砂糖粒を飲むと治るといった根拠のない効果を謳ったデマですが)を推奨したり、2010年頃にそれが元で赤ちゃんが亡くなっても謝罪と撤回がなかったりしています。

助産師提訴に関しての日本助産師会の非常にお粗末な対応(Not so open-minded that our brains drop out.)

更に(産婦人科ではなく)開業の助産師がレメディを販売してたりと。詐欺に近い行為を行っている状態です。

産婦人科の現場は忙しく過酷で、お産に関わる方たちの労働問題(余暇がないと新しく学ぶ機会を得れない)もあるとは思います。この解決は難しく、現場にいてハーブティを勧める助産師の多くは、単純に勘違いしている・知らないだけだと思います。

相談先・通報先を知ろう

しかし、「忙しいから」「知らないから」で済む話とも思いませんし、上述したように高額な商品を売りつける悪質な助産師もいます。
何かあった場合は、消費者センターなどに通報しましょう。

また、20178月24日に厚生労働省は「医療機関ネットパトロール」を開始しました。母乳促進、妊活も以外にも、例えば癌など難病に効果があるといった「医療的な根拠がない表示によって販売される商品」は告発の対象となります。
「うそや大げさな表示」の医療機関ウェブサイトは、誰でも通報できる

株式会社ボーダレス・ジャパン

また、「AMOMA」を製造・販売するボーダレス・ジャパンは、フェアトレードを行うなど、割と本気で「お母さんたちを楽にするために!」「世の中をよくするために!」ハーブティを製造・販売しているっぽいです。
どれほど信念があり、正しいことをやろうとしたとしてもデマはデマですし、結果的に不安な人を陥れている構造となっている事実に気が付いて欲しいと思います。

食べるものと乳腺炎の因果関係は否定されています。

当然ですが、食べ物でおっぱいが詰まるとか言ってるのは日本だけの話です。
イギリスとフランスで子育てした方のブログから引用します。

それでイギリスのお医者さんが言っていたのを思い出しました。「乳腺炎だからと言って食べ物の制限をしなければいけないなんて聞いたことがない、、、」。
乳腺炎の嘘とホント?(★★ イギリス子育て AtoZ ★★)より引用
でも、フランスでは「食事と乳腺炎の因果関係」をうたっていません。

フランスでは授乳に際しこのような指導があります。
「野菜や果物、お肉をバランスよく食べて、一日2リットルのお水を飲む事。お酒とカフェインの摂取は控える様にね」以上。

授乳してなくてもごもっともな事ですよね。私もこのフランスの意見に同意です。
食事と乳腺炎の因果関係がないフランス(ちょっとだけ!)おしゃれなフランス生活)

私の友人はアメリカで子どもを産み育ててますが、「アメリカでは食事の指導はない」と話していました。
日本の母乳信仰は、ちょっとおかしいとろこまで来ています。商売(利益)が絡んだせいで余計に。

たんぽぽ茶の効能

私の記事を読んだ方から、こういった声が寄せられました。

たんぽぽ茶はちゃんとした漢方薬局で買ったものは効き目アリでした。通販の安いのはダメダメでしたけどw
アフィ業者が混じって効能のないものが売られてるなら、漢方薬局でちゃんとしたのを買うのがオススメです。
私がお世話になった総合病院の産科で出されていたものです。

ただのお茶や水を2リットル飲んでも乳は張らなかったのに、たんぽぽ茶だと張ったり溢れるほど出たので、
出過ぎる時はたんぽぽ茶減らすとかしてました。

ネット通販でも正規の漢方薬局の通販であればまともなものが手に入るかも?

連絡くださった方が購入したのはこちらの商品とのこと。
たんぽぽコーヒー【栃本天海堂】(150g)

ちなみに、「出過ぎる時は量を減らしなさい」と病院から指導があったそうです。
この話を伺って「成分がしっかりしたタンポポ茶であれば、効果があるのだな」と思いました。

タンポポ茶/タンポポコーヒー=蒲公英の根を煎じたものです。
タンポポ茶について調べたところ、根拠を説明して間違いを示しているサイトと、曖昧な根拠でただ不安を煽るものとがありました。

↓この漢方薬局さんは(多分本草書を根拠に)正しいことを書いています。不妊症に効く・体を温めるといった効能は否定していますし、”お乳が出ないのはお母さんの疲れ”と、その通りのことを書いています。商品を売りたいというより、知識をもとに改善する方法を提案しています。
蒲公英(たんぽぽ・ダンデライオン)と漢方薬(高木漢方)

↓で私が解説していますが、「【気味】平」とあるので、体を温めることも冷やすこともありません(私の大学での研究対象が中国古代の本草書や医学書です)。
「乳腺炎に効果がある」と書いてあるので、母乳促進かは分かりませんが、おっぱいへの作用はあるようです。

ただ、コメントを下さった方も書いていますが、タンポポ茶をネットで買うなら漢方薬局で購入した方が良いでしょう。成分が足りてないと、効果はありません。
多くのサイトでは「身体を温める」「不妊にも効果あり」「助産師監修」といった言葉が躍っています。アフィリエイトや利益目的が多いので他のハーブティと同じ構造だと思います。
***
イヤな思いをする人が、少しでも減るよう、願っています。

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