出産時の年齢が30~39歳

『うわばみ妊婦』(カワハラユキコ)感想~”楽しみを生み出す”37歳のマタニティ・ライフ~

投稿日:2014年5月12日 更新日:

宴会好き、お酒好きなイラストレーター・カワハラユキコさんによる妊娠・出産漫画です。
妊娠中に書いていたブログ「踊る!うわばみ妊婦」を下敷きに、妊娠・出産体験漫画を描き下ろして発売されました。

読んだ感想は「地に足がついてるなあ…」。
37歳で妊娠、38で出産したカワハラさんの姿勢は、フリーのイラストレーターとして自分自身のキャリアを形成しながら、結婚・妊娠というステップを歩んで来た女性の落ち着きを感じました。全体に明るく前向きな雰囲気なのも良いです。
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色々な妊娠・出産漫画を読んできましたが「年齢相応に落ち着いている作品」って実は少なくて。
キャリアを積んで来て、ようやく妊娠…という女性が共感しやすい作品だと思います。

176Pと厚め。紙の本は1188円(税込)、kindleは880円(税込)です。
出版社の紹介ページで数ページ試読できます

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amazon ★★★★★(5.0) ※レビュー1件
楽天 レビューなし

【内容紹介】

かつてはひとりで呑み歩き、お酒とダンスをこよなく愛するうわばみ女子が妊娠したら…。
お酒はガマン、怒涛のつわりに苦しんだり、甘いお菓子にハマったり、大変だけど楽しいこともいっぱい!
笑いあり、涙ありのマタニティライフを書き下ろしマンガで楽しくまとめました。
さらに、妊婦さんにおすすめのエクササイズや簡単レシピ、マタニティムービーなど、役立つ情報が満載のコラムも収録。
妊婦さんはもちろん、これから妊娠を考えている人や子育て中の方にもおすすめの一冊です。

【感想】

作者のプロフィール

カワハラユキコさんは1974年2月生まれ。
イラストレーター、漫画家として活動中。
代表作は『女子が踊れば!』『王子と赤ちゃん』。

2011年(37歳)に妊娠が分かり、2012年2月(38歳)に出産。
家族はカワハラさんと夫・王子の2人と飼い猫・レンぞう。
産後はお腹にいた腹太郎も加えて3人+猫1匹の家族。
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この漫画の特徴

題名の通り、ほんっっとうに酒が好きな作者さんが描いています。
お酒が好き、宴会が好き、美味しいお店を調べて食べ歩くのが好きな人は楽しめると思います。

こんな人におススメかな。

・お酒が好き、食べることが好きな人
・読書、映画鑑賞が好きな人
・ダンスなど体を動かすことが好きな人or体を動かしたいと思っている人
・妊娠・出産をフラットに描いた漫画が読みたい人
・キャリアを積んできた作者と近い年齢の人(37歳前後)

全体として、一つ一つの出来事の捉え方が冷静な印象です。
自分の経験や友達のアドバイスを元に、自分で考えて自分で決める感じ。良い意味で、甘えや若さ(幼さ)を感じません。
他の妊娠・出産漫画に比べて情報も満載なので、読み直して何度も楽しめます。
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「お酒が好きな人が妊娠したらどうなるか?」が描かれている妊娠・出産漫画は珍しい…というかこの作品しかないと思います。
私もお酒好きで妊娠前はよく飲んでいたこともあり、他の人の体験談、失敗談が読めて楽しかった。

お酒が好きなだけど妊娠したから我慢…!という人や、酒好きな自分が妊娠したらどうなるんだろう?と思う人には役立つ情報が多く、漫画の中で酒にまつわる名文が登場するのも楽しいです。
酒・マタニティ関連の本や映画も多数紹介されていて興味深いですし、妊娠中の運動はスイミングやヨガなどしか聞いたことがなかったので、ベリーダンスもいいんだ~と新鮮に感じました。
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逆にこういう人には勧めない…と思うのは
・妊娠・出産の悩み、葛藤、トラブルを読みたい人
・妊娠中の飲酒なんてありあえない!!と思う人
・妊婦がSEXを語ることに違和感を感じる人

…かなあ。
「悩んでいる姿があまり描かれていない」ことで、人によっては作者との距離を感じてしまうかもしれません。

また、題名に「うわばみ」とついているだけあり、お酒の経験は色々書いてあります。
妊娠中は一滴もダメだ、ウィスキーボンボンやバッカスやラミーもダメだ、女なのにそこまで飲むの?…と思う人は読まない方がいいと思う。
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ほんの数ページしかないけれど「出産はSEX以上の快感らしい…」というエピソードは人を選ぶかも知れません。
カワハラさんの友達の出産体験談や、読んだ本(MINMIの『キセキ 今日ママに会いにいくよ』)のはなしを元に描かれており、体験した人が「セックスによるオーガズム」に例えているのだから、過去の経験と比べて1番近いのがそれなのでしょう。
「出産は痛い」以外の感想、特に「出産が気持ち良かった人がいる」という話は珍しいし、マイナーな体験談が語られることは良いと思う。

(身体の)場所が同じだから近い感覚になるのは自然と思う反面、セックスの気持ち良さについても個人差が大きい話。
この辺は生理的にOKかNGかによって感想が変わる気がします。
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漫画の構成

漫画は1話6~8ページ程度です。話ごとにテーマが絞られ、1~2話で妊娠月ごとの変化を描いています。
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漫画の後に、情報をまとめた「うわばみ新聞」4ページがあります。
最初目にしたときは突然紙面が白くなるので驚きましたが、読んでみると絵が主張しすぎないせいか、読みやすく頭に入りやすいです。

おすすめのマタニティ映画や本、エクササイズ、ノンアルコールワインやビールの話など、扱うテーマが幅広くておもしろかった。
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その時期のカワハラさん(妊婦)の体型や体重変化、役立ったグッズや簡単エクササイズ、おススメレシピ、飼い猫・れんぞうの様子などが描かれています。
エクササイズは、簡単なのに身体が楽になります。症状に合わせて数種類あってお役立ち。
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漫画の内容

4つのパートに分かれています。

初期編(発覚~4か月まで) 約40ページ

・妊娠発覚
・お酒との付き合い方の変化
・初期つわり(吐きつわりだったようです)
・趣味や嗜好の変化(突然宇宙にハマる)
・産み方や産婦人科の検討(里帰り出産で普通に分娩)

「宇宙の映像を見たら落ち着いた話」にはびっくりしました。おもしろいなあ。
「産み方や産婦人科について考えた話」はポイントがまとまっていて参考になります。
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中期編(5か月~7ヶ月) 約38ページ

・体型変化と似合う服探し
・踊る妊婦(フラメンコ、ベリーダンス、サンバ、ピラティス、マタニティビクス)
・出生前診断のはなし(病院からの説明と作者の考え)
・ママ友の息子自慢

特に印象に残ったのは出生前診断の話。
30歳を過ぎての妊娠だと、やはり気になりますよね…。
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通っていた病院の先生の説明も素敵だと思いましたが、さらっと1ページで描かれた作者の考えに「年の功」を感じました。
積み重ねた知識や経験が、妊娠・出産という場でも活きている。
(インド人俳優・リティック・ローシャン。…すげーイケメンでびっくりしました…。)
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後期編(8か月~10ヶ月) 約36ページ

・押し寄せる身体変化とトラブル(甘味、大食、体重増加、腰痛、便秘、眠気等々…)
・旦那さんとデート(表参道の「バー・ラジオ」へ)
・出産は最高のSEX以上の快感?
・この日に産みたいな~…と色々工夫するはなし

妊娠8か月くらいから、多種多様な妖怪に憑りつかれるカワハラさん。
後期は自分の体が思い通りにならないですね…。甘いもの食べたいですね…。パン美味しいですね…。
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出産編 約34ページ

出産当日の様子が朝から細かく描かれます。

陣痛をジョーズに例えて、馬のように?乗りこなす感じはわかりやすい気がしました。
出産の時は、波のように訪れる陣痛のピーク(痛みの頂点)に合わせていきみます。不思議なことに、タイミングが合うと、痛くありません。赤ちゃんもぐいっと進む。
これが難しくってね…。私はタイミングが分かるまで結構時間がかかりました…(タイミングが合わないと激痛…)。
出産経験のない方には分からない気もするんですけど、産むときにイメージするといきみやすい気がする。
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自分の胎盤を食べた話も描いてあります。
約4ページなのですが、この漫画ほど胎盤を食べることについて詳しく描かれた作品はないような気がします。私は抵抗感があるので食べませんが、興味のある方は参考になるかも。
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好きなところ

お酒が好きな女性が妊娠したら…というエピソードの数々

私もお酒が好きで大酒飲みだったので「こういうことあったなあ…」と思って読みました。

妊娠5週目に友達との飲み会で酒を飲んでしまった話は、失敗談としてブログにも書かれていました。
考え過ぎという人もいるでしょうけれど、安定期に入る前に妊娠を伝えるべきなのか?で悩んで、嘘をついたら心配されて楽しめない…というのは分かるなあ。
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正直に「妊娠した」と話して飲み会に参加したら気を使われてしまって楽しく感じられなかったり。
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私も妊娠発覚後に酒を止めたことで体重は減り、お金は減らなくなり、断酒に付き合った旦那さんは健康になり…と良いことでいっぱいだったのですが、周りに気を使われて飲み会に誘われなかったり断られたりして寂しかったんですよね…(相手も気を使うしだろうし、仕方ないと分かってはいるのですが)。

妊娠して嬉しいという気持ちと、お酒という楽しみを失って寂しいという気持ち。
引用された勝慎太郎さんの「無駄の中に、宝がある」というこの言葉。名言だなあ。
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単に愚痴るのではなく、お酒を飲まなくても場を楽しむ方法を作っていく様子が描かれており、好ましく思いました。

特に、妊婦専用フルコースを出すレストランの話やノンアルコールワインの情報は勉強になりました。海外でもノンアルコール飲料って作ってるのね…。
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紹介されてたワイン。amazonレビューも4.5と高評価。
1本1000円くらい。妊娠~授乳期の誕生日やクリスマス、友達との家飲みには良さそうだな~。

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落ち着いた雰囲気

上にも書いたけれど、変に悩まない、暗くならない、乙女(母性?)に走らないところが好きです。作者が困ったり葛藤した経験も描かれていますが、カラッとしてるんですよね。
終始「私の場合はこうでした」というIメッセージで語られており、押しつけがましくないのも好ポイント。

個人的に、さらりと描かれた「インドの占い師に言われたこと」にびっくりしました。
出産で仕事を引退するどころか、出産をきっかけに2冊も単行本を出しているのだからスゴイな…。

でも、産後を描いた『王子と赤ちゃん』を読んでいると、カワハラさんが占い結果を受け入れたらその未来が訪れた(占いは当たっていた)気がするんですよね。
現実世界にゲームのような「そのルート(運命)に進むフラグ」があるとしたら、元々のフラグをへし折って自分が進みたいルート(運命)を生み出している感じが気持ちいいです。
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個性豊かな友達

宴会好きなせいもあってか、個性的な友達が多いですね。
同業(イラストレーター)の人、サンバ仲間、飲み仲間などなど…。年齢もタイプも、子供の年齢もいろいろ。

漫画を読んでいて視野が広い・視界が多角的(=客観的)と感じましたが、多種多様な友達と付き合っていることで色々な物の見方・考え方が出来るのかもしれません。

中でも、体重116㎏で妊娠したみほちゃんの妊娠話は漫画で読んでみたいと思いました。
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あとがき部分で描かれた、子宮がんになった友達・カオリさんの話は、色々な人に読んでほしいと思いました。
他人事だと思わずに、定期的に婦人科健診を受けた方がいいなあ…。
※ブログにも同じエピソードが書かれています。
→「妊娠5週5日〜女子と子宮と卵巣と
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より楽しむために

元になったブログを読む

WEBで読める妊娠・出産・育児漫画」という記事でも紹介していますが、作者・カワハラさんが妊娠中に書いていたブログ「踊る!うわばみ妊婦」は役立つ情報も多いし、おもしろいです。
…美味しいものの写真が多いから、ちょっぴり目に毒な気もするけれど…。

私は更新終了してからまとめて読みましたが、今度は漫画と比較しながら読むのも楽しいかも知れない。
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作者の別の作品を読む

産後の生活を描いた『王子と赤ちゃん』
私がカワハラさんを知ったのはこちらの漫画がきっかけでした。
続けて読むと王子(旦那さん)のキャラクターが分かってより楽しいです。

描かれるテーマが「産後クライシス」ということもあって、産後は夫婦間の雰囲気が一変していますが、その変化がリアルというか…。
渦中にいるときは出産後の幸せな気持ちがぶっ飛ぶんだよな…。

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産後のカワハラさんが寄稿しているおからレシピ本。
私が気に入ったのはおから餅のレシピ。
材料は家にあるし作るのも簡単、ローカロリーなのにお餅の食感が味わえて良かったです。
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このムック本は、レシピ本と言いつつ実際はダイエットに成功した人の体験談集でして。
内容もページも薄いので買うことは勧めません…。(カワハラさんが書いた部分はすごく良いのだけどな…)
※「最近のつれづれ~最近買った育児漫画と料理とおからレシピ本~」にもう少し詳しく感想を書いています

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紹介されていた本や漫画、映画を見る

作中で紹介された作品は沢山あるのですが、自分も読んだものだけご紹介。

映画は『2001年宇宙の旅』や『ベンジャミン・バトン』、『プリミエール』などが紹介されていました。
私は映画には興味ない(…大抵の場合、途中で寝ちゃうんですよね…)ので全部見たことありません…。

ひうらさとるさんの『ヒゲの妊婦(43)』。
『うわばみ妊婦』が好きな人にはおススメかもしれない。
matsubiの感想文

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まついなつきさんの『笑う出産』。
絶版していますが、ベストセラーなので図書館に置いてあることが多いです。

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鈴ノ木ユウさんの『コウノドリ』。
産婦人科を舞台にしたリアルな妊娠・出産漫画です。現在4巻まで。もうすぐ5巻が出ます。
読んでいて胸が痛むこともありますが、妊娠・出産は「出来て当たり前ではない世界」だと思える作品。
実は、感想を書こうと思って挫折しております…。おもしろいですよ。

講談社モアイで4話まで試読できます

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まとめ

30歳を過ぎてからの妊娠・出産が当たり前になった昨今。
私は33歳で妊娠、34歳で出産でしたが、「もっと若ければ…」と思えて仕方ありませんでした。

でも、自分の考え方ひとつ、捉え方ひとつで見える世界は変わる。
体力的、身体的な部分は若い方が有利だと思いますが、年齢と経験を重ねたことで楽しめる部分、苦しんだり悩まなくて済む部分もある。

妊娠のベスト・タイミングは人それぞれ。年齢だけで判断するものじゃない。

そんな風に感じさせる妊娠体験漫画でした。

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