今日は「間違った情報だから真似しない方が良いよ~」というのと、情報として記録しとこう、という記事です。
コリックにガス抜きチューブやカテーテル?
元になったツイート
私「教え子に赤子生まれたからコリック用ガス抜きチューブ送る」
夫「?日本で買えばいいんじゃ?」
私「それが日本じゃ売ってないんだ、存在すらしねえ」
夫「?!?!」
コリックに黄昏泣きなどと意味不明なネーミングをしママにのみ無駄な苦労を強いる謎の根性論大国日本
今何世紀だったっけ? pic.twitter.com/hms48zfKrj— Labarumラバルム (@antiquelabarum) 2017年11月3日
これがハム速で扱われたりTogetterまとめに掲載されたりで、拡散されました。
後述しますが医師は勧めていませんし、エビデンス(科学的、数値的根拠)も不足していると感じます。
個人的にトピシュさんの記事を読めば良いと思います。
「地獄への道は善意で舗装されている」というのは酷だけど、そんな感じ。/
「私も苦しんだから」「ノイローゼのママを救いたいから」でもエビデンスのない怪しい医療・育児情報は蔓延する - 斗比主閲子の姑日記https://t.co/QL769ApjZx— 斗比主閲子 (@topisyu) 2017年11月4日
ツイ主さんに悪意はなかったと思うし、黄昏なきの原因にガスがあることを知らない人も多かったので、問題提議としては悪くないと思います。
育児関連は「地獄への道は善意で舗装されている」と感じることが多いですね。
コリックとは?
「コリック」って何?初めて聞いた言葉だったので調べました。
簡単に言うと、生後3カ月以内の乳児が、夕方にお腹が痛くなって泣く現象のことのようです。
(1)「 疝痛せんつう 」に同じ。
(2)主に生後三か月以下の乳児に見られる、夕方の時間帯を中心に長時間にわたって激しく泣く現象。臍疝痛さいせんつう。三か月疝痛。
●コトバンク「大辞林 第三版の解説」より引用
疝痛を引くと
主に腹部臓器の平滑筋の攣縮れんしゆくによって起こる疼痛で、強い痛みが間隔をおいて繰り返し襲ってくるもの。
●コトバンク「大辞林 第三版の解説」より引用
一方で、「黄昏泣き」について調べると
●コトバンク「妊娠・子育て用語辞典の解説」より引用
用語としてはコリック=黄昏泣き、と考えて問題なさそうです。
黄昏泣きの原因の一つに「お腹にガスが溜まっている」があり、カテーテルで出す、という方法のようです。
医師のみなさんの反論
こちらにまとめもありますが、小児科医、産婦人科医を中心にまとめました。
●黄昏泣きとコリックの話(Togetter)
結論としては
・カテーテル刺すのは止めて
・泣きが異常と感じる時は病院へ
小児科医で2歳児の母・ここあさん
小児科専門医の個人的な感想としては「うーん、ないなぁ」です。
そもそもコリックの原因が明らかであるのは5%以下とも言われていて医学的には問題がないものを指すことが多い。腸内微生物原因説もあるけど、少なくとも穿孔するリスクがありそうな長いカテーテルを家庭で盲目的に使う必要はない。 https://t.co/ExDSowFEpY
— ここあ (@_Schokola__) 2017年11月4日
お腹のガスをスッキリさせてあげたければオリーブオイルつけた綿棒浣腸で十分。薬局で乳児から使えるいちじく浣腸売ってます。
腸管は長く、肛門から入れても腸管をチューブの長さ分さか上るだけだし、口からの方が長さ的には到達しやすい。経口的にも経肛門的にも家庭でする手技ではない印象です。
— ここあ (@_Schokola__) 2017年11月4日
小児科医・kamekuraさん
強いガス貯留を伴うような赤ちゃんに関しては、例えばヒルシュスプルング病やその類縁疾患も考えなくてはならず、だとすると結腸が拡張して極端に脆弱であることも予想されます。極論ですが。適応外使用はおすすめしません。
じゃあどうかするかってーとなかなか悩ましいところです。すんません。 https://t.co/nGkDlg9VDQ— kamekura@エグゼイ聴診器作った (@kamekurasan1) 2017年11月4日
もちろん新生児科や小児科で治療として上記のような疾患に洗腸導気をすることはありますが、正常新生児の疝痛に導気が有効でかつ安全だというエビデンスはmedlineでは見つけられませんでした。出先なのでちゃんと調べたらあるのかもしれませんすみません。
— kamekura@エグゼイ聴診器作った (@kamekurasan1) 2017年11月4日
リスクとベネフィットを天秤にかけてその人の総合的な利益を考えるのが現代医療なので、これが良いという体験談ではない、エビデンスができればみんなやり始めると思います。
ただこれまでそういうのがないというなら推して知るべしかも。ガスが出ない子の結腸を突っついてほしくはないです。
— kamekura@エグゼイ聴診器作った (@kamekurasan1) 2017年11月4日
かるがもクリニックさん
赤ちゃんの急な泣き(啼泣)は保護者にとってストレス。一般的に元気に泣き続けるのは元気な証拠(例外あり)。「黄昏泣きとコリックの話」https://t.co/lMOb3MnozE
— かるがもクリニック@病児保育こがも (@atsushimiyahara) 2017年11月5日
泣き続けるので気をつけないといけないのは、腸重積、急性胃軸捻転、消化管穿孔(壊死性腸炎など)、腸回転異常症、鼠径ヘルニア嵌頓、そけいヘルニア嵌頓、事故、虐待など。「黄昏泣きとコリックの話」https://t.co/p3WMyU14RE
— かるがもクリニック@病児保育こがも (@atsushimiyahara) 2017年11月5日
赤ちゃんを危険にさらす可能性が高い情報が中途半端な形でこれ以上流布するのであれば、何かしらの対策を立てるべき。「赤ちゃんのコリック(黄昏泣き)を解消するガス抜きチューブが日本では売られてい..」https://t.co/6XfnRxH6Nj
— かるがもクリニック@病児保育こがも (@atsushimiyahara) 2017年11月5日
総合周産期センター新生児科医 Dr.ラスカル先生
RT : > 本当に素人のカテ扱は危ないよ。
カテは少しズレたら簡単に人死にます。
真面目な話です。
腸管も相当柔らかいです。大切な事なんでもう一度。
新生児や乳児期の肛門への刺激は、綿棒で肛門の周りをくすぐるような程度以上の事をしてはいけません。
— Dr.ラスカル@頑張ろう献血と風疹予防 (@Dr_RasuKaru) 2017年11月5日
※死亡事故については、まきりえこさんが関連したツイートをしています。
成人が浣腸で直腸穿孔>母の知人が亡くなっている。孫が来るから病院行って便秘治してくる!が最後の電話
— まきりえこ@猫コミックエッセイ発売中 (@toriatamaxp) 2017年11月4日
産婦人科医・タビトラさん
冷静に考えて、カテーテルぶっこまないと自力でオナラができない赤ちゃん、消化管に問題があると思うんですけど…そして、出そうで出ないオナラやウンコは大人でもあるでしょ…一時期不快でも、カテーテルつっこまないっしょ…よく考えて…
— タビトラ (@tabitora1013) 2017年11月4日
※タビトラさんのリプ欄ではこんな指摘も
日本にはガスが溜まらないようにげっぷさせるという指導が行き届いているし、うちの子はゲップ出ない時は新生児期からオナラプップマンだったし、コリック=ガスが原因なんて英語の文献でも見たことが無かったので、日本だけが遅れてる!カテーテルやるべき!みたいな拡散っぷりに若干引いてます…。
— もも@かーたーくん9m (@momo_mochan) 2017年11月4日
イタリア(に限りませんが)では夜泣き・歯痛対策に琥珀のネックレスを赤ちゃんに付けるというのもありますよ。育児情報はどの国でもマユツバな物が大手を振ってまかり通っていてなかなか疲れます。欧米伝承が正しい!とも正直思えなかったり。逆もまだしかり。 pic.twitter.com/Kp5XuA6igl
— Naoko (@Naoko_Imadokoyo) 2017年11月4日
内科医・HALさん
「海外ではこう言われているし、常識です」
という話にすぐに飛びつくのは気をつけた方がいいと思う時があります。なにせ、
「日本では便秘があると、キャラメル浣腸で治すのが常識です。そんな事も知らないの?」
という内容の可能性もあるからです。— HAL@37歳女医 (@halproject00) 2017年11月4日
「海外からコリックチューブを個人輸入しようか」というツイートを見かけたので、流石に見過ごせず取り急ぎ記事を書きました。イタリアと日本では事情が違います。情報には注意を。
黄昏泣きとコリックの話|33歳女医、やっと子どもができた頃 https://t.co/ofJCCKppIq
— HAL@37歳女医 (@halproject00) 2017年11月4日
「医療者はあれもだめこれもだめというばかりだ」といったご意見がきたので、この記事も書きました。夜泣きはガスが原因とは限りませんが、試してみるならこんなケアを。
夜泣き・黄昏泣きでコリック(疝痛)かなと思ったらガスと便秘のケアを https://t.co/cWK0vmqdsZ
— HAL@37歳女医 (@halproject00) 2017年11月4日
※余談ですがキャラメル浣腸もデマです。場合によりアナフィラキシーショックを起こします。ダメ。
●キャラメルで便秘がよくなる?(森戸やすみ小児科医/朝日新聞アピタル)
赤ちゃんは「泣かない」ものなのか
赤ちゃんは理由もなく泣きますね。全然寝ない時は寝てくれませんし。
おっぱいをあげた、おむつを替えた、温度も適温のはず(涼しめを心がけた方が良いです)、抱っこしてゆらゆらさせた。
それでも寝ないときは寝ないし、泣く時は泣くものです。残念ですが。自分も、疲れ果てて呆然としたことは何回もあります。
赤ちゃんの睡眠リズム
3カ月くらいまでは、睡眠リズムが整わないから眠れずすぐ起きてしまう、といった側面もあるようです。
新生児は3ヶ月経ってようやく概日リズムが安定します(個人差はあります)。親は大変ですが、発達段階なので「仕方ない」です。人の脳が外界に合わせて「時計合わせ」してリズムを刻むのは当たり前のことのようですごいことです。本当に精緻にできています。 pic.twitter.com/c3CTdqlF21
— 河合 真 (@EarlyQuarry) 2017年11月4日
睡眠医学の専門家である河合真先生のツイートを引用します。表の黒線のところは寝ている時間で白いところは起きている時間。縦軸は生後何日かを示しますが、0~35日あたりは黒線がとびとびで、細切れの睡眠ということがわかります。下にいくほどリズムがでてきてまとまって眠れるようになってます。 https://t.co/YLY7K37W5x
— パパ小児科医(ぱぱしょー) (@tangeganbaru222) 2017年11月5日
3ヶ月未満の赤ちゃんが眠れなくてすぐに起きてしまうことは、医学的にみてある程度仕方のないことといえます。なのでこの時期にはとくにマンパワーが必要です。もちろん睡眠リズムだけではなくて暑い寒い、痒い、痛いなど睡眠を邪魔する原因が何かあるなら、まずはそちらの対策をします。
— パパ小児科医(ぱぱしょー) (@tangeganbaru222) 2017年11月5日
疳の虫や虫封じ
ツイートを見ていたら、赤ちゃんの泣く原因が特定出来ると信じて、医師を批判している方もいました。
元ツイート主さんも「コリックに黄昏泣きなどと意味不明なネーミングをしママにのみ無駄な苦労を強いる」と書いてますが、理由や原因が特定出来ないことを妖怪などのせいにするのはある種のライフハックです。
昔は「疳の虫」と言って、虫封じのおまじないをしたり、神社に参ったり、「宇津救命丸」「樋屋奇応丸」という丸薬がよく売れたりしたようです(今も売ってる)。
「疳の虫」は平安時代の記録が残っているみたいだし、昔からみんな悩んでいたんですよ。
昔は、神社に参るくらいお手上げで原因不明のものだった、と思った方が良いかも知れません。
一方で、外に出ると気分が変わって泣き止むこともあります。ベランダに出たりするだけでも、ちょっと違ったりしますね。
赤ちゃんを預けることも出来る
初めての子育ては、楽しいし嬉しいけれど過酷です。
1人で対応するのは無理なので、夫の協力は必須だと思います。
両親や義理の両親、近所の人。ファミリーサポートセンターや児童館。ベビーシッター。頼れる人には頼った方が良いと思います。
近くに頼れる人がいない場合は、お金で解決するのもありだと思います。
キッズライン
ベビーシッターは高いんだけど、最近は気軽に利用できるサービスも出来てきました。
キッズラインには産後に特化したプランも有ります。
●キッズライン
●キッズラインのベビーシッター体験レポート漫画【PR】(ふたご絵日記/Pika)
※黄昏泣きじゃなくて夜泣きプランですが。
\#夜泣き でお悩みのママ・パパ必見!/
これで一晩中ぐっすり寝れる!?
#キッズライン の #お泊まり保育 を試してみませんか?https://t.co/EsWQTjVGpG#kidsline #ベビーシッター #保育 #子育て #産後 #乳児— キッズライン@ベビーシッター (@KIDSLINE_Colors) 2017年10月30日
AsMama
託児というか、近所に住む方に子どもを預かってもらえる子育てシェアサービス。交流が出来るイベントを開催してたりします。
500円から友だちや知り合いと送迎・託児を頼りあう、ネットを使った仕組みです。
●AsMama
AsMama内で募集されているイベントはこちらから見つけられます。ワンコインや無料で参加できたり、特典付きのイベントなど盛りだくさん!興味のあるイベントを見つけたら、早速申し込んでみてね☆⇒https://t.co/blEdRetnwu
— AsMama_tweet (@AsMama_tweet) 2017年10月31日
まとめ
黄昏泣きで悩んでカテーテル使いたいと思うくらい、追い詰められた状態なら、ベビーシッター頼んで一晩ぐっすり寝るだけでも違うと思います。
赤ちゃんて、親が簡単に手を加えることができる、小さく弱い存在です。
タビトラさんもツイートしてますが、「大人相手にやらないことは赤ちゃんにもやらない」。そう決断することも大切だと思います。
今回の件は、イタリア在住の一般の方が発信した情報ですが、助産師や医師による情報発信でも、間違った情報もありますし、時代が変わって常識が変わることもあります。
最近、気になっているのはこの件です。
ちょっと古い記事ですが。「子どもへの口移しは虫歯菌移るのでNG」と言われてましたが、EBウイルスの免疫を作るという意味では口移しやキスも有りかなと思います。後で調べよう。 / “EBウイルスと子供への口移しのこと|きゃねこのところ” https://t.co/uyKvQpjrNq
— 末尾 (@matu_bi_) 2017年11月5日
ざっくり調べた感じだと
・唾液で感染する
・一度感染してしまえば免疫がつき、二度と感染することはない
・小さい子ども(乳幼児)の方がかかりやすい
・小さい子ども(乳幼児)は症状が軽い
・大人になって感染すると重篤化する病院で免疫のチェックは出来るのかな…?
— 末尾 (@matu_bi_) 2017年11月5日
受け取った情報を鵜呑みにせず、半分疑って調べたり検証することも、大事だと思います。
それでは~