トマコさんの本の2巻です。
息子・なぁ太くんが小学3年生になって壁にぶつかり、通常学級から支援学級への異動が決まる様子が描かれます。
成長して「発達障害」と診断されなくなる。グレーゾーンの子が支援学級に異動する難しさを感じました。
●作者さんのブログで冒頭が試読できます
(レビュー)
amazon ★★★★(4.4)
【内容紹介】
発達障害の息子をもつ母が描くコミックエッセイの第2弾。
前作で、小学校で通級指導を受けることとなった長男なぁ太。しかし、その後も様々なトラブルが!
周囲の子どもとの違いが目立ってくるにつれ、息子自身も苦しくなり、自傷行為が始まるなど症状が悪化していく。
通常の学級、通級指導での限界を感じ始めた母は、特別支援学級へ移ることを考え、葛藤する。祖父母の反対、学校や教育委員会との話し合い、病院への相談、学級の見学を経て、息子は特別支援学級へ通い始める。
子どもの居場所はつくれるのだろうか?
●amazonの内容紹介より引用
【感想と解説】
1巻の感想はこちらです。
-
『うちの子って発達障害! ?ただいま子育て迷走中』(トマコ)感想~親の考え方や心構えを学べる1冊
人気の育児漫画ブログを運営しているトマコさんが描いた作品です。 自身や子どもの行動を冷静に分析しており、夫との体制作り、周囲との付き合い方、相談先と話した内容等も具体的。就学前~小学校に上がるまでの1 ...
作者のプロフィール
トマコさんは育児漫画ブログをきっかけに活動する漫画家・イラストレーター。岡山県在住。
夫・マサオさんと息子3人の5人家族。
中心的に描かれるのは長男・なぁ太くん(高機能広汎性発達障害/自閉症スペクトラム)。
2巻では次男・コン吉くんもADHDと診断されます。
●作者ブログ「あぁ、トマコの生きる道」
●Twitter:@tomakodo
※家族そろっての絵が見つからなかったので、家族のイラストは1巻のものです。
漫画の構成
まえがき漫画、1話8ページの漫画と2-3ページの文章コラム×13本、おまけ4コマ4本、おまけ漫画6ページ、あとがき2ページ。
監修の佐藤暁先生の解説(文章)4ページ。
目次はこんな感じです。
追加された4コマでなぁ太くんの日常の様子が伺えます。箸休め的なちょっと笑える漫画です。
この漫画の特徴
なぁ太くんが小学3年生になってから支援級に移ることが決まるまでのドタバタと、4年生になり支援級に移ってからの様子が描かれます。
あらすじはトマコさんのこの漫画を読めばわかります。
●3,4年生の男児の崩れの中で(あぁ、トマコの生きる道)
前巻はトマコさん(母親)の話が中心でしたが今巻は「なぁ太くんの変化」が軸になっているように感じます。
・相談先や病院による対応の違い
・母(作者)の心の問題
・父親との関係の変化
・兄弟との関り方
…等が描かれます。
なぁ太くんの発達障害
小1の時に「高機能広汎性発達障害」との診断を受けています。知的な遅れがない自閉症スペクトラムです。
小学校では通常学級に通っています。
2巻ではなぁ太くんがいわゆる「10歳の壁」にぶつかり、うつ状態になり、学校に通えなくなります。
なぁ太くんの小学校生活
1巻の感想では触れていませんが、2年生の時、通級指導教室の先生に相談し、「通常学級に通い続けること」を勧められています。
しかし3年生になって、授業中に固まる、移動教室に移動しない等の問題が起き始めます。
通級指導教室でも固まるようになり、歩いて学校に通えなくなり、学校を休むようになり…。
トマコさんは自分の目で確かめると、学校に様子を見に行っています。一度だけでなく、毎日見に行って。
聞いた話で終わらせないで確認するのは偉いと思いました。三男が小さい時期だから余計に。
他の発達障害に関する本でも「10歳の壁」「小4の壁」については指摘されています。
「10歳の壁」に直面することは、発達障害がある・なし関係なく、誰にでも起こり得ることです。
子どもの情緒的な発達のタイミング(いわゆる思春期を迎え、友達のグループが分かれていく。いじめなどの問題も生じ始める)と、小学校の教育カリキュラムの問題(分数や文章問題が登場し、概念が具体的思考から抽象的思考に変化する)が重なって、精神面・学習面でのつまずきが多い時期のようです。
必要なのに、支援学級に異動できない
学校には、期の途中からの支援級への異動を相談しますが、病院での診断は「異常なし」に。
病院での診断が「異常なし」なので支援級には移れないという新たな問題が発生します。
これは『はざまのコドモ』でも描かれていた問題で。
『はざまのコドモ』では親の嘆願書を提出することで、なんとか支援学級に入ることが認められます。
なぁ太くんの場合は「なぁ太くんには社会性の問題があるので個別指導が必要だ」との医師が作成した診断書を提出することで支援学級に異動することが認められます。
この辺、漫画を読むことで知恵がつくのはありがたい反面、支援が必要な人がすんなり支援してもらえる仕組みにはならないものか…。
様々な相談先
困ったトマコさんは色々な機関に相談しに行きます。
この辺は「半分取材」「いつかネタにしてやる…」と割り切っていた部分もあるんじゃないかなあ…。
しかしこの「相談先が役に立たない問題」は根深いですね…。多くの方がこういった体験を描いていて。
勉強したばかりの私でさえ「発達障害のことわかってるんだろうか…?」と思うような発言をする人は多いのが現状のようです。
病院によって特色が異なる問題
これも仕方ないというかなんというか…。
正直、最初に診断を受けるときに、先の療育や相談を見据えた広い視野で考えることは難しいと思います。
私も精神科の病院をいくつか転々としましたが、病院によって全然違うとは思います。対応も診断も薬の処方も。
悪化したら薬を増やすだけ、という対応を取る医師は多いと感じます。病院が混んでて診察が1分で終わり、というパターンも多いです。
そういう病院は切り捨てて他をあたるしかないと思います…。
トマコさんはセカンドオピニオンを受ける道を選び、結果、病院を変えます。
しかし発達障害を描いた漫画に出てくる病院は、どこも混んでいますね…。
ブログでは「療育先によって療育も違う」てことを描いていて。
3人目だから的確に対処できるということはありますが、調べることは重要だとも思います。
●療育と後悔(あぁ、トマコの生きる道)
心の疲れと揺れる想い
1巻を読んだ時点だと「トマコさん冷静に対応してるなあ…すごいなあ…」と感じていたのですが、2巻では揺れる思いや自身の心の疲れについても描いています。
コラムに「発達障害といっても、成長したら落ち着く程度のものと捉えていた」(意訳)と書いていて。これは意外でした。
他にもコラムでは揺れ動く気持ちや悩みについて書いていて。親に課せられた負担の大きさに気付かされました。
「支援学級に異動するかどうか」についても、授業を受けることが出来ないなぁ太くんを見ているのに、通常学級に通い続けることが出来るのでは?と揺れていた様子が描かれます。
診断では「発達障害ではない」とされ、子どもにとってどちらが良い選択なのか。全部自分で調べて相談して、決めていく必要がある。
これは難しいと感じました。それは揺れますよねえ…。
なぁ太くんが支援学級に移ることが決まった時点で燃え尽き症候群のような状態になり、何もやる気が起きなくなる。
学校や病院、相談先を巡りながら大きな決断をした半年。
症状を見るに、病院に行っていたら「うつ」と診断される状態だったんじゃないかなあ…。
アスペルガー症候群の人の周りにいる人が「カサンドラ症候群」になる、と言われますが。
トマコさんの場合は「学校や病院に振り回されたこと」に加え、親やママ友など、理解ない周囲の反応が響いたようです。
この時、夫・マサオさんが機転を利かせてトマコさんを支える様子が描かれます。
パートナーがいるのって大事ですね…。
父親の変化と成長
2巻では夫・マサオさんの変化を感じました。
父子関係については結構大変だったようですが、トマコさんの話に耳を傾けて接し方を変えたようで。
最後の方でなぁ太くんから見た親との関係が語られるのですが、関係が修復したことがよく分かりました。
2巻ではなぁ太くんだけでなく、次男・コン吉くんもADHDと診断されたりもしますが、落ち着いた対応。
他にも学校との面談に同行したり、トマコさんの親との間に入ったり(この場面はすごく好きです)。
コラムではマサオさんに対する率直な気持ちも書かれていますが、父親が一緒に育児をしてくれることの大切さを感じました。
まとめ
4年生から支援学級に通うことでなぁ太くんは学校に通えるようになって。
コラムを読むと出来ないこともあるようでしたが(集団は苦手みたいです)、現在は中学生になって支援学級に通っているようです。
続編があるかは分かりませんが、兄弟ごとの療育の話や、発達障害の特性(違い)にスポットを当てた漫画も読んでみたいような。
監修の佐藤暁さんの解説にもありましたが、現在の学校のあり方はおかしいと感じます。
「世の中の動きや多様性に現在の教育制度が合ってない」という問題が先にあって、発達障害を持つ子たちが巻き込まれているだけな気が…。
ADHDでディスレクシアの中学生によるスピーチを元にした記事がありました。
●なぜできないの?と言わないで…学習障害の少年が感じる日本の教育の欠点とは(Spotlight)
合理的配慮を求める場合でも、集団におけるトラブル(壊されるとか)が優先される。
横並びでいる必要ってあるのかなあ?
ディスレクシアの子が使うiPadって、眼鏡と何が違うのか?が分からない。
スピーチをした子も一時不登校になったようですが、小学校では、不登校児童の割合も上がっているようです。
平成27年で全国平均4.3%。人数は10年前より減っていますが、割合は右肩上がりです。
●埼玉県サイト知事の部屋「児童生徒の不登校を防止」より
教育制度は簡単に変わらないのですが、発達障害を持つ・持たないに関わらず、子どもが通うのが楽しいと思える学校にならないものかなあ、と思います。
余談・病院の探し方
トマコさんが「子どものタイプに合わせた病院のまとめサイトがあれば…」と書いていましたが、流石にそれはないようで。
ざっと検索して、選ぶ時の参考になるかな?と思ったサイトはこれらです。
どちらも、病院のサイトを見たり電話で問い合わせて、最新情報を確認してから利用するのが良いと思います。
リタリコ発達ナビの「地域情報」
このサイトの情報が一番使いやすく、役に立つと思います。
地病院だけでなく学校や放課後等デイサービスなども調べられて便利です。市区町村で絞り込めたり、人気順で並び替えることが出来たりするのも良いですね。
施設へのコメント(口コミ情報)を読むには無料会員登録が必要です。
(私は会員でないので読んでませんが、口コミ情報は豊富だと感じました。)
日本小児神経科学会の医師名簿から調べる
病院については「日本小児神経科学会」のサイトに「発達障害診療医師名簿」があるので参考になるかも知れません。
BOXの医療機関情報
軽度知的障害の息子を持つ「まぁ@ダメオヤジ」さんのサイト「BOX」。
こちらには障害児向けの医療機関がまとめてあります。
●障害児向け医療機関
トマコさんが漫画に描いていた時期に比べたら、ネットを活用して病院や療育先などが探しやすくなっていると感じます。
***
この感想は「発達障害特集」の一環です。今まで書いた「発達障害特集」の記事はこちら。
●発達障害に関する育児漫画