育児漫画ではないのですが、妊活中の女性の気持ちをうまく描いているなあ、と感心したのでご紹介。
それにしても、これだけ面白い漫画がさらっと掲載されているWEBってすごい。ここ数年、漫画雑誌を買う必要を感じなくなっているのは確かなのですが。
幻冬舎plus「わたしのはなし」渡辺ペコ
現在2~7話までを公開中。
物語は3人の女性、それぞれの日常を描きながら進みます。
保育士の赤木まゆ(2,5話)、編集者の佐久間めい(3,6話)、主婦の佐藤(山田)ともこ(4,7話)。
作者が渡辺ペコさんと聞いて、最初に思い浮かべた絵柄は『にこたま』の表紙。
↑こういう絵のイメージだったので、シンプルな絵柄で描いていることに驚きました。
今日マチ子さんを思い浮かべたのですが、かわいい絵柄で描いていることはエッジが効いているね…。
他の2人の話も好きですが、今回紹介したいのは4話、7話に登場する佐藤(山田)ともこ。
第4話
佐藤ともこ26歳。結婚して山田ともこになる。
旦那様の転勤先に引っ越すため、今まで勤務していた仕事(事務職)を辞め、いざ新天地へ。
8Pに詰め込まれた様々な情報の密度がすごい。でも読みやすい。
25歳くらいの女性って、熱病にかかったかのように結婚したいという発言をする人が増えた気がしますが、あれは何でしょうかね。一種、本能のようにも感じるなにか。
自分の経験として、27歳くらいのとき「犬くらいの大きさの温かい何か」を抱っこしたいという衝動に駆られた時期があります。
不思議だったので旦那さんにも相談していました。そういう何かが欲しくて欲しくて仕方ないんですね。夢にまでみてました。
当時は1人暮らしだったし旦那さんの家からも遠かったので、寂しくてペットを飼いたいのかな??…と思っていたのですが、あるとき「それって自分の産んだ赤ちゃんを抱きたいってことか!」…と思い当たった時、人間の本能って怖いなあと思いました。なんというか、自分で自分が気持ち悪かった。
(同じような体験は聞かないので、珍しい例かもしれないのですけれど…)
第7話
4話と7話、設定だけで背景まで想像させるのがすごいなあ。
ともこの行動は理不尽な気もするけれど、彼女が選んだ結果ではなく、流れ着いた結果。でも、流された彼女が悪いわけでもない。
旦那さんが転勤族で、子供が欲しいと考えているならば、正社員を目指して就職活動をしないのは自然。
その一方で、4話で思い入れが無いように描いていた事務職につけなかった悔しさも感じさせる。
スーパーのパートも悪くないと思うんですけれど、ともこの感覚的には事務職以上に「替りがきく」仕事なのかもしれません。
(そもそも、田舎だと販売職や介護職が主体で、事務職の求人なんてほとんどない。)
仕事で得ていた自己肯定感のようなものを失って、友達の少ない知らない土地で、旦那様の帰りを待って、赤ちゃんがやってくるのを待って生きる日々。
月に1回の排卵日。けれど旦那は帰ってこない。
10P目でともこは「死活問題」と叫ぶ。
旦那さんに、彼女の気持ちはわからない。
旦那さんの言う正論も分かるのですが、彼女にとっては死活問題なのですよ…。
結婚4年目。今年30歳。友達が妊娠した。自分には何もない(ような気持ちになる)。
自分の経験と重ね合わせると、結婚3年しても子供が出来ないと、実家からの質問もそれなりでしょう。子供が出来ない場合、女性の責任と言われるしね…(遠い目)。
山田とも子の話は彼女の気持ちが分かる反面、そのまま突き進んだら夫婦関係はどうなるんだろうと心配にもなる。
続きが描かれたとき、3年後のともこが子供を持って幸せだったらいいけれど、子供ができなくて不妊治療にお金がかかって夫婦間がギスギス…という展開も考えられるし、妊活がきっかけですれ違いの生活になって別居とか、子供は出来たけれど知り合いがいない土地で旦那さんは育児に協力的ではなくて産後鬱とか。あまりよくない未来が思い浮かんでしまって困る。
続きが気になるけれど、この時点で止まっていた方がいいような気も。
赤木まゆの続きも気になるなあ…(彼女の未来はあまり心配ではない。本人が安定しているように見えるので)。