作者の初単行本です。
個人ブログで連載していた漫画も収録されているのに、初の単行本とは思えないくらい安定した絵と内容。
おおらかでゆったりした雰囲気で、のんびりした気分で読めました。
マレーシアで描いているからかな?と思いましたが、日本で描かれたブログ漫画にもある柔らかな雰囲気なので、作者の人柄が現れているのかもしれません。
興味を持たれた方は、作者のブログで4コマ漫画を試しに読むといいかも。
全129P、価格は1000円+税です。
※amazon、楽天ともにレビューなし
【内容紹介】
知人ナシ!言葉も文化もわからない!
常夏の国・マレーシアからお届けするトロピカル育児日記!?
夫の転勤で1歳の子供を連れてマレーシアに行くことになった著者が、右も左もわからないままに子育てに励むコミックエッセイ。
日本での妊娠&出産記もスペシャル収録!
【感想】
マレーシアに住んでいるだけあって、異国文化ネタは濃かったです。
妊娠中、子育て中の方だけでなく、独身の方でも楽しめる内容だと思います。
特におススメなのは
・異国での子育てに興味がある人
・出産が大変だった経験を読みたい人
・妊娠中で足のむくみに悩んでいる人
・子供の言葉の発達に悩んでいる人
…かなあ。
『ぴのにっき』は、「異国文化レポート漫画」の側面を持っています。おかあさん目線なので、子供に関係する部分での文化の違いが描かれているのが珍しい。
他の作品を例に出すのはどうかと思うのですが『トルコで私も考えた~トルコ嫁入り編』(高橋由佳里)と雰囲気が似ている気がしました。作風も絵柄も旦那様のタイプも子供の性別も違うんですけど、なんとなく似ている。
収録されている妊娠・出産漫画については私が読んできた数々の漫画の中でも「出産が大変だった」漫画です。作風が明るくのんびりしているので深刻さは薄いのですが、本当に大変だったろうな…と思います。
妊娠中の足のむくみについては、現時点で最も描写が多い漫画だと思いますです。はい。
気になってる方は、ブログで4コマ漫画を読むと、雰囲気が分かるかと思います。
(私は公開されているブログ記事を全て読んで購入を決めました。)
作者のプロフィール
作者・猫田ぴの字さんは2010年7月、ご自身の妊娠をきっかけに「ぴのにっき(・|・)」(漫画絵日記ブログ)を開始。
2010年10月、女の子(ぷの字ちゃん)を出産。
夫・ぱの字さん、娘・ぷの字ちゃん(現在3歳)の3人家族。
日本で妊娠・出産し、ぷの字ちゃんが1歳を過ぎた頃に夫がマレーシアに転勤に。
当初は単身赴任でしたが長期化が見込まれるため、マレーシアに引っ越すことになり、現在もマレーシアにて生活されています。
雑誌「別冊本当にあった笑える話」にて続編の連載が開始予定。
作品内容と特徴
単行本は3章で構成されています。
1)マレーシアでの子育て編 64P(雑誌掲載4コマ漫画8話、描き下ろしコラム10本)
2)日本での妊娠・出産編 36P(ブログの4コマ漫画)
3)日本での子育て編 28P(ブログの4コマ漫画)
1)マレーシアでの子育て編 64P
ぷの字ちゃん・2歳~3歳。
マレーシアと日本の文化の違いが「おかあさん目線」で描かれているのが新鮮で面白かったです。
例えば「ままごとセット」。2~3歳くらいの娘がいる家庭では定番のおもちゃかと思います(うちにもある)。
2~3のパーツがマジックテープで留まるようになっており、おもちゃの包丁で切る真似が出来るやつ。
日本だとにんじん、だいこん、かぼちゃ、りんご、みかん、さかな…といったものが定番。
同じままごとセットもマレーシアでは、ちょっと違う。
スイカ、白菜、みかん、パイナップル、スターフルーツ、トウガラシ…。
日本とは気候も食文化も違うから、ままごとセットの野菜や果物も違うんですね。
でも白菜は入ってるのか!と変なところで驚いたり(中華系が多いからかな?)
マレーシアのトイレ事情。
おかあさんが用を足す間子供を乗せておくシートも無ければ、オムツ替えシートもない。
子連れでトイレに行っている人はほとんどいないという…。…まあ、日本も昔はそうだったし。子連れで外出の時はどうするんだろ?
マレーシアでは「用を足した後、水で股間を清める」らしく、トイレの床が水浸しだったりする空間のようで…。こ、こわい。
日本ほどトイレが綺麗な国も無いらしいしなあ。
個人的に、マレーシアで歯医者に通う話が面白かったです。子供は関係ない話。
言葉が通じなかったのもあるでしょうが、一筋縄ではいかない様子がなんとも笑える…。
食は鉄板ネタで、楽しく読みました。美味しそうでした!
コラムに描かれた現地で売られている謎の?「ジャパニーズ○○」や「北海道○○」の話が面白かった。
試しに検索してみた「北海道シフォンケーキ(北海道牛奶蛋糕)」。
日本では作られていないのに、アジアの国(マレーシア、シンガポール、台湾)では人気のお菓子だとか。
現地の人は「北海道」ってついているとおいしそう(高級そう)に感じるのかしら?
●北海道シフォンカップケーキ(COOKLABO)
2)日本での妊娠・出産編 36P
ブログ連載のもの4コマ漫画から、文章部分を抜いて掲載。
私はブログで全部読んでいましたが、文章がないバージョンもサクサク読めて良いですね。
面白かったのは胎動の描写。5か月でこれだけ動くのはすごいなあ…。
「お腹の中から赤ちゃんがキックすると、腹の皮が足の形に伸びるのよ~!」と笑いながら話してくれた人がいましたが、ぴの字ちゃんもそのくらいやってそうですね…。
むくみの描写は4コマ漫画6~7本しかありませんが、「妊娠中のむくみってここまで酷くなるのか…!」と驚きました。
私も妊娠後期はむくみが酷くて漢方薬を処方してもらってましたが、全然マシでしたね。ここまでくると大変そうだなあ…。
出産は自然分娩。…なのですが、一筋縄ではいかなかったようで。
助産師さんが感心するくらいだから、相当なものだと思います。
なんというか、今まで読んだ中で一番痛みが伝わる出産でした。
ハラハラしながら読む出産漫画って珍しいかも知れない。
※正確には出産後、出来た血腫を取り除く手術をするまでが描かれており、産前から産後まで痛い痛い痛い…と思いながら読みました。
たまにコミカルな風景が挟まれるので深刻にならず読み終える事が出来ますが、母子ともに無事で本当によかった…と思いました。
私も立会出産の時、ボクサーとセコンドみたいだとか妄想したなあ…。
3)日本での子育て編 28P
ぷの字ちゃん・新生児~1歳半くらいまでの、日本での子育ての様子が描かれます。外に出てからもキック力の強いお子様だったようで…。
父と娘の寝相シンクロ。
これって他の家でも起こっているのか。うちだけかと思ってた。
自分だけ眠れない時にも、2人の姿が笑えて癒されてました。写真もいっぱい撮りました。
途中で(娘さんが1歳になる前)旦那様の単身赴任開始。
仕事とはいえ、小さい娘を置いてマレーシアに行くのはつらかっただろうなあ…。
この漫画の好きなところ
作中で何度か、娘さんの言葉の発達が遅れているのでは?と悩む作者の姿が描かれています。
育児漫画の中で「子供の迷言」がネタにされることは多いですが、言葉の遅れが描かれている作品は少ないのですよね(思い浮かばなかった)。
日本の保育所に通っていた頃は、他の子と比べると遅い?くらいで大らかに構えていたようですが…。
1歳半でマレーシアに移住した弊害か、2歳半になっても話せない。
現地には友達もおらず、入る予定だった近所の幼稚園は移住直後に閉園となり、母子2人切りの生活。
ネットで調べてみても、女の子は言葉の発達は早いと書かれている。これってピンチ?
お正月に現地の子供たちと遊ぶ機会があったけれど、日本語の能力は後退(マレーシアは英語+3つの言葉らしいから大変そうですね…)。
日本に帰国した時に健診を受け、医師からは「問題ない」「3歳を過ぎた頃から急に話し出す子もいる」とアドバイスを受けたけれど、悩みは尽きません…。
言葉の通じない異国の地で子供を育てるぴの字さんの心労も半端ないと思うんだ…。
言葉の発達について悩んでいる人は少なくないと思うので、育児漫画でその体験が読めるのはありがたいです。
悩んでばかりのようですが、娘さんのちょっとした言葉で浮上する姿も描いてあり、希望が持てます。
成長を待てばいいって頭では分かっているけれど、本当に「ただ待つだけ」でいいのか、何かした方がいいのか。悩むよね…。
個人的な気付きですが、作中で「マレーシアの人が手で食べているものをスプーンで食べるように言ったら娘さんが混乱した様子」が描かれます。
うちの娘も言葉に関して、同じように混乱するかもな…と思いました。周りの子は親を「ママ」「パパ」と呼んでいるのに、私たちは「おかあさん」「おとうさん」と呼ばせようとしていますので。「なんでママじゃいかんの?」と思っているのかもしれない。
※うちの娘の言葉の発達については「最近のつれづれ」参照。
他に好きなところは「小ネタ」。
作中、こんな感じでゲーム・アニメ・テレビ番組の演出を効果的に差し挟んでいるところが好きです。
例えばジブリ映画「火垂るの墓」。
「ドラゴンクエスト」。子供が成長するとレベルが上がる音が聞こえますよね(何故かドラクエなんだよなー。FFではないんだよなー)。
子供が追っかけっこしている場面でのドット絵もかわいかったなあ。
「世界ウルルン滞在記」。
そのうち「ぶらり途中下車の旅」あたりも出そうだな…。
コマの端にあるような小さい絵でも、ぷの字ちゃんの表情がいいですね。
お医者さんに言葉のことを相談しているコマでは背景と化すくらい小さいのですが、かわいい。細かいところまで丁寧な仕事ぶりだなあ…と感心します。
気になるところ
描写などで気になるところはありませんでした。
「マレーシアでの子育て」を目的に買った場合、単行本の半分だけなので物足りなさを感じるかも知れません。
私も、妊娠・出産漫画も日本での子育て漫画も面白いと思いつつ、マレーシア話をもっと読みたいなあ…と思いました。
構成が時系列ではなく、マレーシアでの子育て→妊娠出産→日本での育児、となっているのも物足りなさを助長している気がします。
でも、時系列に合わせたら表紙と中身が違うって話になるし。難しいですね。
『ぴのにっき』はこれで終わりでなく、新連載が始まるみたいなので、続編を読めばいいか!と思います。
まとめ
最初にも書いたことですが、初の単行本とは思えないクオリティでした。
育児漫画全体のレベルが上がっていて、子育て以外の切り口がないと単行本化(雑誌掲載)は難しいのかもな…とも感じました。
続編を楽しみにしています。