【発達障害】に関する育児漫画情報

【WEB漫画】『アスペ息子とソフトアスぺ母ちゃん』(イサヤマ)感想~読む人の心を動かす、フラットな体験談~

投稿日:2018年11月9日 更新日:

こんにちは。末尾です。

この記事を読んでくださってる皆さんは、忘れているかと思いますが、2017年7月頃に「発達障害特集」と題して、発達障害を持つお子さんを育てた体験談を綴ったコミックエッセイを紹介していました。

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その最中、私の母が死亡宣告をされたので急遽、実家に戻って母を看取り、その疲れで私は統合失調症が再発し…父が他界し…。

結論を言えば、「発達障害特集」、きちんとした形で終わってなくて。
私が「発達障害」を知ろうと決め、特集を組むきっかけとなった「イサヤマさん」の漫画『アスペ息子とソフトアスぺ母ちゃん』の紹介+感想記事で締める予定が、私の都合で伸び伸びとなっていました。

そんなこんなで今日は、イサヤマさんの『アスペ息子とソフトアスぺ母ちゃん』の感想+紹介記事です。

【内容紹介】

3歳半の頃、発達障害の検査を受け、「アスペルガー症候群」と診断された息子と、同じく検査でアスペルガー症候群の傾向があると診断されたお母さん(=作者)の日常を描いたコミックエッセイです。

息子さんが3歳半のとき、保育士から「他の児童への他害がある」との報告を受け、発達障害について相談するよう勧められます。

Pixivとアメブロ(現在は閉鎖済)で発表された、個人的に描かれた漫画です。全15話。

●「Pixiv」ですべて読めます 
※スマホなら非会員でも閲覧可能(パソコンは要会員登録)

【感想と解説】

作者のプロフィール

作者のイサヤマさんは、軽いアスペルガー症候群(高機能広汎性発達障害)と診断された、女性。
ご家族は、アスペルガー症候群の息子さん、イサヤマさん、旦那様の3人です。

息子さんの発達障害の症状

早生まれで、同級生と比べて身体は小さかったようです。

「発達障害について相談しては?」と保育士から提案された3歳半当時、息子さんに表れていた行動としては

・偏食が多い
・こだわりが強い
・言語の遅れ
・おうむ返し
・他害
 など

具体的には、こんな行動が書かれています。

イサヤマさんの発達障害の症状

息子さんがアスペルガー症候群と診断されたことをきっかけに、イサヤマさんは自身からの遺伝ではないか、と考えるようになります。
鉛筆の持ち方がおかしい。歩き方が独特と言われる。幼い頃の偏食。出来ること、出来ないことの差が大きい。

「息子の発達障害は、自分の遺伝かも知れない」。そう考えることは自然ですが、その苦しみ、申し訳なさ。自分を責める気持ちも相当なものだと思います。

また、「親と子の間にある、虐待の連鎖」にも触れています。
暴力を振るわれた経験があると、自分が暴力を振るう時の心理的なハードルが下がりますよね…。うちも(虐待ではありませんが)両親が喧嘩になり、父が母を殴る…といった光景を子供の頃に目にしている為、子どもを簡単に叩いたりしないよう、ブレーキをかける余裕を持つよう、気を付けています。

発達障害という障害の複雑さ、難しさを感じました。

発達障害と虐待の関連性については、イサヤマさんが作中で読んだこちらの本にも書いてありました。

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この漫画の特徴


・息子が「発達障害では?」と言われた母親の戸惑いが丁寧に綴られている
・発達障害をよく知らない人も共感し、もっと知ろう、協力しようと考えさせられる
・母親自身も”ソフトアスペ≒軽い高機能広汎性発達障害”との診断を受けた

※父親は検査を受けていないが自覚症状?はあり

バランスが良いといいますか。私はイサヤマさんの漫画を読んで「息子くんと同じ年頃の子どもがいるのに、発達障害のことを知らないのはまずい」と思いました。

例えば娘の同級生や、同じ幼稚園に通う児童が、目の前で暴力を振るったら。パニックになり、大きな声で叫んだら。

ただ、戸惑うだけで、白い目で見てしまうのではないか。
仮に助けたいと思ったとしても、フォローすることも出来ないのではないか。
「おかしな子」とレッテルを貼って、避けたりしないだろうか。

テレビやインターネットを通じて最近、目や耳にするというのに、「発達障害について、何も知らない」こと、「自分は関係ない」と思っていたことに気付かされ、危機感を覚えました。

説明が難しいのですが、人の気持ちを動かす作品だと思います。

漫画の構成

発達の相談を勧められるところから始まり、同じ発達障害の子を持つ母親に感じた率直な気持ち、少しづつ障害や特性に対する理解が深まっていく様子、作者自身の心境の変化。
中々夫に相談出来ない日々。話を聞いてくれない息子。それに対する苛立ち。

ひとつひとつ、細かく、でも冷静に、ご自身の体験を描いていると思います。

漫画を読みながら、イサヤマさんが少しでも楽になるよう、助けてあげられないか?何かサポート出来ないか、と思いました。

素敵だと思ったのは、旦那様の対応です。
下に引用したのは、イサヤマさんから「息子はアスペルガー症候群だと思う」と告白された時の反応ですが、その言葉をきちんと受け止め、一緒に息子さんを育てようと言う。「僕たち二人の子どもだろう?」と。

そして実際に、一緒に子育てをしていく様子も描かれるのですが、あまり細かく解説するとネタバレになってしまうので、気になる方には是非、読んで頂きたいと思います。

●「Pixiv」ですべて読めます 

私の病気と「障害」という言葉

私は統合失調症

私は2015年1月に統合失調症を発症し、一旦、完解(ほぼ治った状態)になりましたが、2018年3月に再発。
現在は、てんかん発作やパニック障害などの精神性疾患を持つ方が通う「就労継続支援B型(障害者のための作業所)」に通っています。

障害者手帳を申請するほど病状が酷いわけではありませんが、私も「障害者」と言えば、「障害者」です。

「障害」という言葉の重み

自分が、病気のリハビリの為に「障害者のための作業所」に通うという事実は、想像以上に、重たいものでした。

自分が「障害者」とカテゴライズされた時、「私は障害者ではなくて病人だ。統合失調症と言われるのは良いけど障害者と呼ばれるのは大仰過ぎるし、出来れば呼ばれたくない…」と思いました。病気なら治るけれど、障害は特性。治らないものです。

統合失調症を発症したら、薬を飲み続けないと高い確率で再発してしまいます。そして実際、私は勝手に薬を辞めて、再発しました。統合失調症という病や、症状を抑える薬とは一生付き合うことになります。

「統合失調症」は病気ですが、「一生付き合う障害(ハンディキャップ)」とも言えます。

近い立場に立って初めて、「発達障害」と呼ばれることに対する違和感、不快感を想像できるようになりました。

イサヤマさんの心遣い

イサヤマさんは、Pixivの作品紹介欄に、こんな言葉を書いています。

去年、この文章を読んだときは「ちょっと過敏になりすぎでは?そこまで気にしないでしょうに…」と思いました。
たまに目にする「発達凸凹」という言葉もそうで、「情報を検索しにくくなるのでは…?」などと「効率」に偏った考えを持っていました。

でも、今は、同じ立場だからこそできる気遣い、優しさだと思います。

「発達障害」と呼ばれることに違和感や抵抗感がある人は勿論いるでしょうし、そういった方は、文字列を目にするだけでうんざりするでしょうし…。

2018年現在は、「発達障害」という言葉が一般化したと思います。その為、新しい言葉で呼ぶのは難しいし、逆に理解を阻害したり、混乱を生じさせるとも思いますが、言葉の柔らかさ、優しさも必要だと感じます。

「高機能広汎性発達障害」よりも「アスペルガー症候群」や「ADHD」、「自閉症スペクトラム症」と呼ばれた方がまだ、受け入れられる気がします。「発達凸凹」という呼び方も、症状の本質を捉えているし、フラット(差別意識や誤解を生じにくい言葉)だと感じます。

あまり気にせず、「発達障害」という言葉を連呼していた自分が少し、恥ずかしくもあります。反省。
でも、検索効率や伝わりやすさを考慮して、ネットで発言するときは「発達障害」を採用します。私の文章で気分を悪くする方がいたらすみません。

まとめ

私の解説で、作品の良さがどれだけ伝わるか分かりませんが、多くの人、特にまだお子さんが小さい方に読んで欲しいと思える作品でした。

1クラスに発達障害を持つ生徒が2~3人はいると言われる時代。
保育所や幼稚園、小学校など、集団生活に加わる前に「発達凸凹」について、自閉スペクトラム症について、学んでおくことは、必須事項なのかも知れません。

私に学ぶきっかけを下さった、イサヤマさんや、自身と子どもたちとの体験を書いて下さった沢山の作家さんに感謝しています。

余裕があるときにでも、読んでみてください
●『アスペ息子とソフトアスペ母ちゃん』(イサヤマ)

それでは~

***

この感想は「発達障害特集」の一環です。今まで書いた「発達障害特集」の記事はこちら。
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