育児漫画描く人向けの記事

育児漫画単行本が抱える問題と未来~メルカリでの中古本転売について

投稿日:2017年6月4日 更新日:

この記事は、育児漫画を読みたい方ではなく、編集や出版に関わる方、描き手さんに読んで欲しいと思っています。
「そんなこと知ってるよ」って話だろうとも思うんですが、私が気づいたのが最近で。とりあえず、伝えておきたいし吐き出しておきたい。

内容的に、育児漫画の読み手さんが読むと「ううーん…」て感じのものなので、興味のない方はスルー頂ければ幸いです。
長文です。

4年間育児漫画ブログを運営していて、感覚的な話をつらつらと。

育児漫画について、紙の単行本は、ますます売れなくなると思ってます。

そもそも単行本情報は全く人気がありません(記事が読まれない)。
うちのブログ経由での売上も落ちているし、ちょっと前のものだと中古本を買う人も多い。
2016年はほぼ運営してませんし、うちを経由せず書店等で買ってほしいとも思っているので、うちで売れないのは良いのですが。

育児漫画の単行本

単行本の問題点

紙の単行本

部数が少ないので、1冊あたりの単価が高い。
それでも雑誌連載中心の時代の頃は、版を大きく・カラーを多くする等でお得感を出せてました。

現在はブログ・Twitter・Instagram・WEB連載など、PCやスマホ環境で読んでいた作品が中心。
普段、無料で読めて、カラーも多い作品です。

自分は紙の単行本を新刊で買う派ですが、正直、紙の単行本は割高感があります。
また、版型が大きくて本棚に入らない・並べられないのも不満です。

私みたいに大量購入する人は、ほぼいないと思います(育児漫画というより、コミックエッセイが好きで若い頃から買ってます)。

人生の中で2-3冊買う程度が大半だと思いますが、値段が高いし邪魔だし、版が大きいのはネックにしかならないと考えています。

電子書籍

育児漫画はKADOKAWA、竹書房発の作品が多く、紙と電子書籍、同時発売の作品が多いです。
例外は伊藤理沙さんの『お母さんの扉』くらいかな?紙の1年後という遅さ…。

電子書籍の場合も、価格が高いと感じます。
スマホで読む場合、版の大きさは一定になります。そして、ページ数は少ない。

各社、Kindleや楽天KOBOの他に「Yahoo!コミック」「Renta!」「シーモア」「LINEマンガ」「めちゃコミック」等の電子書籍/配信で長く売っていく方法をとっています。女性ユーザーも多く、育児漫画との相性も良い。

電子書籍は、女性ユーザーが散り過ぎていて、販売が面倒くさくなっている印象があります。

・Kindle(ビジネス書等、普通の本も買う層。でもスマホだけで売買が完結しない)
・楽天Kobo(楽天を愛用している方。読みやすいとも思う)
・Renta!等(TL系漫画も読める。レンタルチケットで割安に読める)
・LINEマンガ(買いやすく読みやすい)
・めちゃコミック(無料部分が多い)

電子書籍の価格

ちょっと前は「紙の単行本も電子書籍も同じ価格」という意見でしたが、最近、Instagramと「メルカリ」を触って印象が変わりました。
紙の単行本より安い価格で電子書籍で配信する必要を感じています。

KADOKAWA

紙の単行本も電子書籍も、基本、同じ価格です。
多くは紙が1000円(税抜)、電子書籍が1000円(税抜)。

竹書房

こちらも紙の単行本も電子書籍も、基本、同じ価格です。
多くは紙が1000円(税抜)、電子書籍が1000円(税抜)。

講談社

『子育てたんたん』『あかちゃんのドレイ。』『王子と赤ちゃん』等、育児系漫画系の電子書籍は、紙の単行本より安く販売しています。
多くが紙が800円(税抜)前後、電子書籍が400円(税抜)前後。
つまり電子書籍が、紙の単行本の半額という価格設定です。

紙の単行本は増刷せず、売り切れたら終了。その後は電子書籍を売るという体制。

集英社

2017年3月に『ヒゲ母ちゃんと娘さん』、6月に『おもち日和』が登場。
紙はA5伴600円(税抜)。電子書籍は500円(税抜)と、他社と比べて安めの価格設定になっています。

講談社や集英社の価格設定が功を奏せばよいとも思っています。

育児漫画と中古本

育児漫画は中古本として出回りやすい

育児漫画は妊娠中~子どもが2歳くらいまでが一番読まれるようです。

読んだ後、子育てがひと段落したあとは、古本として売られることも多く、古本価格が下がりやすいと感じています。
人気作や発達障害児を描いているとか、特別なものは別ですが、だいたい発売2~3年くらいでamazon価格が1円まで下がるので、新刊は買わずに古本を買う人も多い印象です。

中古本販売とメルカリ

メルカリは6500万ダウンロードを達成した、人気フリマアプリ。

最近、「メルカリ」の台頭でブックオフが危機的状態、て話をよく目にします。
「メルカリに食われる」、リユース業界の悲鳴

今までは中古本はブックオフや古本市場等に売っていましたが、今後はメルカリで取引することが増えると思います。

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メルカリの客層や売れ筋アイテム

こちらの記事を参考にしました。
10代女性の3人に1人「メルカリ活用している」(ITメディア)
【出品者必見】メルカリの客層と売れやすいジャンルTOP11を徹底解説!!

客層

10~30代女性が多いようです。
若いほど利用率が上がり、”特に高かったのは10代女性で、3人に1人(32.8%)が購入も出品も行っている”(ITメディア記事)とのこと。

また、

普及が進んでいるのは女性の10~20代。「メルカリを利用したことがある」と答えたのは、10代女性では48.3%、20代女性では40.5%だった。

とも書いてあり、若い世代(10~20代)の半数近くが利用していることがわかります。

人気のジャンル

≪メルカリ販売シェアランキング≫
レディース 26%
エンタメ・ホビー 22%
ベビー/キッズ 13%

メルカリで購入する商品のカテゴリーは、10代女性は「エンタメ・ホビー」が1位。20代以上の女性は「レディース(女性用衣類・小物)」がトップになった。また、30代女性は2位に「ベビー・キッズ」がランクインしており、ライフスタイルの変化に合わせて購入する商品が変わることが分かる。

育児系アイテムが人気で、若年層の利用が多い。
10代、20代の利用が多いなら、今後更に、育児漫画を買う層はメルカリで育児漫画を買い、売る人も増えると思います。

メルカリとInstagram

この記事を参考にしました。ビキニ(服)の話ですが。
インスタは「妄想の検索エンジン」メルカリは「通販の検索エンジン」としてつかう。

まだ一部かも知れませんが、Instagramで見て良いと思ったものをメルカリで買う、という流れが出来ているようです。

私はこの記事に全面同意していて、現在、amazonや楽天BOOKSで本を買っている人も、メルカリに流れる可能性が高いと感じています。便利だもの。

Instagramのユーザー層

この記事を参照しました。
【最新版】2017年5月更新! 11のソーシャルメディア最新動向データまとめ

Instagramのユーザー

20-30代が多い。

最近、育児漫画ブロガーさんが多数参入されているし、ここ数年で20-30代の女性ユーザーは増えると思います。

そうなると、メルカリでの転売も加速度を増す気がしています。

メルカリで転売される育児漫画

すごいというか…。発売直後に中古本が並びます。

傾向として、ユーザー層が被っているInstagram勢の方が転売に出されている感があります。
調べたのは6/1です。

しおりさん

5/25発売。Instagramでフォロワー数2万人。

発売1週間後、2冊出品で完売。
(個人的な感覚ですが)話題になってないしamazonランキングにも入ってません。フォロワー数も2万人と少ないので、そんなに売れてないと思いますが、それでも出品はされている。

ヤマダモモコさん

5/25発売。Instagramで(単行本決定時点で)フォロワー数5万人の人気作家です。描き下ろしも多数収録。

発売1週間後。14冊出品され、すべて完売。
新品の価格は900円だったかと(現在amazonは完売してて閲覧できず)。メルカリでの売買価格は900~980円でした。

(偶然出会わしましたが)出品直後、1分で売れてる。中古本を探している・待っている人がいる状態。

やまもとりえさん

5/25発売。ブログで人気の育児漫画の書籍化。
同日発売の3冊の中では一番話題になっているし、多分1番売れてもいると思う。

同じく発売1週間後、2冊出品。
やまもとりえさんは30代女性、ブログの書籍化なのも影響してか、売上に対しての出品比率は低いと思います。

ただここで問題なのは、メルカリ内で転売され、中古価格が下がっていることです。

つまり、出品されている2冊は同じ本で、新刊売上としては1冊ですが、手にして読んだ人は3人。
中古を更に中古として売るせいか、元より安い値段で出品しています。

ヨシタケシンスケさん

比較のために。4月25日発売。

サイン本も含め、約1カ月で21冊出品。完売。
新品価格は972円。中古価格は750~888円です。

メルカリの中古本販売の流れ

一番わかりやすいので、ヤマダモモコさんを例に。
紙の単行本だけで、電子書籍は出てません。

想像できる流れ

Instagramで人気・話題になった
(投稿始めて1年という短期間で単行本に)
 ↓
買った人は多い
(予約発表直後~amazonの「妊娠・出産・子育て」カテゴリで1位)
(6/2現在、amazon在庫切れで1298円まで高騰)
 ↓
一読したらメルカリで売る(転売)
(価格は新刊とほぼ同じ金額)
 ↓
メルカリで買って、メルカリで売る(再転売)
(価格は100円程度値下げする場合も) 

この状態が多分、発売後1~2カ月は続く

1カ月先まで追わないとなんとも言えないのですが、なんとなく2~3カ月で100-200冊程度は販売ロスを起こす気がしています。
初版部数は知りませんが、5000部だとしてロスが100冊(2%)てのは割合として結構高い気がします。

Instagram発での単行本は把握しているので全作調べましたが、売れている『まめ日記』や『家族ほど笑えるものはない』以外はそこまで酷くないものの、ブログやTwitter発、最近だと一番売れている育児漫画である『お母さんの扉』などと比較すると、Instagram発の単行本は、メルカリに出品されやすい傾向が見て取れます。

調べたい場合の参考にどうぞ。

【目録】Instagram発の育児漫画単行本、全8冊~『まめ日記』『マルサイ家の三兄弟』『#ピヨトト家』など

2016年からInstagram発の育児漫画単行本が増えました。 Twitterをする作家さんも増えたので(こつばんさん、マルサイさん、ヤマダモモコさん、ぴよととなつきさん)、併せて紹介します。

続きを見る

電子書籍は配信されてない

amazonレビューにはこんな声も。

インスタで毎回楽しみに見ています。
が、本になるとなんか違うな…というのが正直な感想です。
内容はすごく共感できるし面白いのですがモモコさんのイラストはスマホの小さな画面だからこそ魅力があるのかなと思います。

これは一理あると思います。
ヤマダモモコさんの本は、紙の単行本のみです。電子書籍を購入しスマホで読んだ場合、また違った感想になったのでは?と思います。

そしてそれは、転売対策にも繋がる。

カウルは対抗策にならない

「メルカリ」の姉妹アプリが5月にリリースされました。
現在はiPhone版のみ。Androidは6月リリース予定。
夏からはトーハンと組んで新刊販売も実施される予定。

メルカリ カウル - 本・CD・DVD専用フリマアプリ

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カウルの構造

ベストセラーになっている『うつヌケ』を例に。
「カウル」にはランキング表示があります。確認したとき『うつヌケ』は9位でした。

表紙画像をクリックすると、商品説明ページに飛びます。
将来的には、多分、この画面で新刊を販売するのではないかと思います。

ただそのすぐ下に、「カウル」内で出品された中古本や最安値が表示されます。
更に、タイトルで検索し、タブを切り替えれば「メルカリ」で販売されている商品も確認できます。

つまり、新刊と並んで、中古本の最安値が分かるんです。
個人的な感覚ですが、200円くらい違えば、中古本に流れるでしょう。だって本だもん。服やグッズじゃない。

「カウル」は中古本が探しやすく買いやすい。しかも最安値で買える素敵なアプリです。
しかしこれで新刊が売れるのか?は疑問です。

例えば『進撃の巨人』『ワンピース』等、価格は450円くらいの娯楽作は売れると思うし、新刊販売が転売対策となり得ると思います。

しかし版が大きく価格が高い育児漫画、コミックエッセイ、4コマ漫画が売れるのかなあ…?と。
正直、1080円が800円(1読しかしてない)なら、中古本に傾くのが自然じゃないかと。

再転売を前提にすれば、200~300円くらいの負担で読める。お得感がある。

個人的な印象のみで語るのも卑怯とは思いますが、「カウル」での新刊販売によって、結果的に中古価格が下がり、更に新刊が売れにくくなるような気がしています。

カウルの問題点

カウル側からメルカリの販売状況は見えるのですが、メルカリ側からは見えない。

多分、普通の人にとって、育児漫画は「本」という扱いではないです。
「ベビーアイテム」として売買されると思うので、「カウル」をダウンロードして利用するの人は限られます。買い手は「メルカリ」に常駐してると思う。

現在のユーザーは「カウル」をダウンロードしてまで、育児漫画は買わない。だって必要ないから。
それだと「メルカリ」ユーザーに新刊が届きません。結局、中古本を買うだけとなります。対策になっていない。

メルカリへの対抗策

結局、育児漫画は「メルカリ」で売買されると思うので、対抗策を打つのであれば、「メルカリ」の中に出店する必要がある。
しかし運営を考えると現実的ではない(全タイトルを15-30分おきに出品、て、その為に人を雇わないと成立しない)。

でも「メルカリ」を放置すると、多分、紙の単行本は死にます。
ここ1週間くらい、頭の中で色々検討したけど、「あああ、終わった」としか思えず。私の中で詰んだ。

余談・新刊への特典

本論からずれますが。
「カウル」が始まると、差別化のために何かおまけをつけるといった動きもでると予測しています。

でも安易に、例えばポストカードやペーパーなど、物をつけたら転売されるだけです。
中古本の価格帯が特典付き新刊、特典付き中古本、中古本、の3種類に分かれ、中古本が値下がりしやすくなるでしょう。

個人的には特典にするなら電子データの一択です(転売できないから)。

可能ならLINEマンガでLINEスタンプつけて紙より安価の電子書籍での販売に誘導する方が、販売効果があるんじゃないか?と思います。
(この辺、データ見れれば読み解くんですけど、外からなので数字は見れず。感覚的な話のみです。)

まとめ

毎度毎度、まとまりませんが。
今後、育児漫画はInstagramで読まれます(むしろ今がそうで、転換期)。
Twitter、ブログが過疎るかまではわかりませんが、近い将来、Instagram一強となります。読み手がInstagramに集まるんですから、それは自然なことです。

遅くとも3年後にはWEB連載、ブログ運営、ツイッタラーもInstagramに集まります。

そして、Instagramと「メルカリ」はユーザー層が被っていることもあり、相性が良い。

対策を打たないと、転売に次ぐ転売で市場が崩壊します。
最初は「Instagramで人気!」と喜んでいられますが、先々、市場がシュリンクします。

Instagramは育児漫画リーダーとして優秀すぎる

それだけで本の売上が落ちそうだし、個人的には、電子書籍のあり方自体も検討する必要を感じています。

***

育児漫画は先端分野なので倒れても仕方ないんですけど、このまま放置するとコミックエッセイ、4コマ漫画も死ぬと思ってます。

私の中では詰みました。(特にネットでは)意識してユーザーを電子書籍に回す、以外の手が見えません。投了。

なので、私のここまでの考えや発見が、出版に携わるどなたかのヒントになればよいし、回避策を講じて頂ければと思っています。

余談・育児漫画の未来

Instagramは1カ月半しかやってないし、メルカリは1週間前にDLしただけなのですが。

元々、育児漫画の単行本は将来的に電子書籍中心になり、紙の単行本は減る、と考えてはいました。

作家が増え、多様になったことで自分好みの作品を読めるようになり、読者層がばらけています。昔のようなヒット作や、損益分岐点以上の売上をたたき出す作品を生むのは、年々難しくなっていく、と考えています。

将来も紙の単行本が出ると思いますが、現在の年50冊超から、年に12-15冊程度に減ると思う。

将来は

1)Instagram、Twitter、ブログで育児漫画を発表
2)Kindleなどで電子書籍にし、配信(セルフパブリッシング)
3)欲しい人はオンデマンド印刷で紙の単行本を発行(同人誌みたいなものです。割高)
4)セルフパブリッシングの売上を受けて紙の単行本に

…といった流れになると思っています。

実際、『最近の赤さん』『ニブンノイクジ』『毎日かあさん』がそんな感じです。
課題はKindle以外の電子配信が使えないことです。出版社が関わる必要がある。

それはそれでよいのですが、Instagramと「メルカリ」のユーザー数増加に伴い、体制が整う前に、紙だけでなく、電子書籍を含めた市場が崩れそうで怖いな、と思っています。

売れなくなるというか、買って読む習慣が消え去りそうで怖い

単なる杞憂なら良いのですが。
それでは~。

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