【発達障害】に関する育児漫画情報

『ぼくの素晴らしい人生』(愛本みずほ)感想~ディスレクシアの青年を描く物語

投稿日:2017年7月18日 更新日:

ディスレクシアの青年を描いた創作漫画です。

1巻単体だとプロローグと人物紹介といった感じなので、「ディスレクシアの青年が主人公である」点に興味が湧いた方だけにお勧めします。
192ページ、463円(税込)です。
出版社サイトで1話を試し読みできます

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【内容紹介】

生まれつき文字の読み書きが苦手な忍。
高校も卒業できず、ようやく見つけたバイトもクビになってしまう。
そんなとき、忍は喫茶店のマスターに、ディスレクシアという障害ではないかと教えられる。
彼は同じ障害でありながら飄々と生きており…?
あきらめかけていた人生に光が射し込む第1巻!
amazon の内容紹介より引用

【感想】

作者のプロフィール

作者の愛本みずほさんは漫画家。代表作は『だいすき!! ゆずの子育て日記』『ひまわり!! それからのだいすき!!』。
『だいすき!!』はドラマ化もされ、創作育児漫画としても読まれているので、知っている方も多いのでは。
『ひまわり!!』は続編で、娘・ひまわりちゃんが成長してからの物語です。


漫画の構成

第1話~4話までを収録。
他に『ひまわり!!』の番外編も収録されています。

この漫画の特徴

成人するまで障害に気付かなかった、ディスレクシアの主人公を描いている点。
主人公・忍の最終学歴は中卒。
アルバイトを転々としながらの生活。唯一の趣味は吹き替え版の映画を見ながら妄想すること。

家族は同居している祖母だけ。母は既に他界しています。

たまたま入った喫茶店で、同じ障害を持つマスター・遥に「ディスレクシア?」と聞かれ、そういう障害があること、自分が「字が読めない」のは障害による症状であると気付かされます。

忍の年齢設定、漫画の中では書いてなかったので17-18歳くらいかな?と思っていましたが、23歳のようです。
「ぼくの素晴らしい人生」第5話と単行本のお知らせ

ディスレクシアの説明について

説明自体は4ページしかないのですが、よくまとまっていて分かりやすかったです。

私はTwitterで「他の発達障害との併存について書かれてなかった」と言っていましたが、読み直したらちゃんと書いてありました…。き、気付かなかった。

好きなところ

うーん。全体として淡々としておりまして。実に勧めにくい…。

盛り上がる場面も少ないです。作品の雰囲気自体は好きなのですが、派手さはありません。

伝わってくるのは、取材を重ねて描かれた作品である、ということ。
ディスレクシアという障害の説明もよくまとまっていたと思いますが、キャラクター同士のちょっとしたやり取りがリアルに感じます。

主人公・忍はアルバイトを転々としているようですが、職場でのトラブルは「ありそう…」と思いました。
「指示されたことをメモする」は雇用する側が当たり前にする要求です(普通は文字が書けないとは思いませんし)。

メモをとらない忍はやる気がないと思われる。「中卒」という学歴と合わせて発生する誤解。
スマホを使って工夫すると「スマホを見てサボっている」と余計に誤解が生じる…。最後にはバイトを辞めることになる。

この辺、なかなか難しいですね。

例えば忍が「読み書き障害があるのでスマホを使わせてください」と面接で伝えた場合は採用されない気がします。
採用後に申告したとしても、仕事中にスマホを使わせることはできないと思います(機密保持の観点から、カメラ・録音機能が問題になると思う)。

***

祖母に「自分はディスレクシアという障害だった」と伝える場面では、祖母が「障害者なんて…!」と怒ったり、「検査して治療すれば治るのでは…」と提案したりするのですが、この辺のエピソードも自然だなあ、ありそうだなあ、と思いながら読みました。

忍は進学を諦めたものの、悲壮感はあまりない。母が亡くなった時期は描かれていませんが、祖母の育て方・関わり方が良かったのかなあ。

夢を思い描けない、て場面もそうだろうなあ、と思いました。
こういった想いが深刻化したら、うつや不登校、自傷といった二次障害へと繋がるのかも知れません。

遥は劇団員でもあり、忍も「演劇」にも関わっていくようです。
ディスレクシアを公表した人には俳優が多いので(トム・クルーズ、キアヌ・リーヴス、オーランドブルームなど)演劇を絡めていくのかなあ?

1巻では「ディスレクシアとして生きる上での知恵」のような話が中心でしたが、雑誌では小学生の頃を描いています。
忍が何度も「変わりたい」という言葉を口にしているので、これからきっと変わっていくのでしょう。

まとめ

先々面白くなりそうではあるのですが、3~5巻くらいまでいかないと評価できない作品な気がしております。

「ディスレクシア」に興味がある人や障害当事者が読むには良いと思う反面、単純に面白い作品が読みたい方にはお勧めはできないかなあ。
作者がキャラクターを掴めるまでは物語は動きにくいかも知れませんね。

興味があれば1話を試し読みして頂ければ、と思います。
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この感想は「発達障害特集」の一環です。
今まで書いた「発達障害特集」の記事はこちら。
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