昨年秋に発売された『オレなんかが親になって大丈夫か?』を読んで「カラスヤさんの育児漫画…良いな!」と感心し、発売を楽しみにしていました。
読んでみたら、同じように自分の家族のこと、娘の成長を描いているのに、『オレなんかが親になって大丈夫か?』とは別物でした。
ネタが被っていないのもありますが、切り口が違っているように感じます。
『エレガンスパパ』は基本的には笑える育児漫画ですが、カラスヤさんの「パパ」=父親としての悩みや葛藤も描かれているように感じました。
単行本はB6版で190ページ、607円です。
試読ページはないのですが、カラスヤさんの漫画を読んでみたい方はすくパラぷらす連載中の『オレなんかが親になって大丈夫か?』をご覧ください。
amazon ★★★★★(5.0) ※レビュー1件
【内容紹介】
我が娘の息吹に感動し、日々の成長に目を細める。
カラスヤサトシ独自の視点で娘との暮らしを綴る、笑いあり、涙ありの子育てダイアリー。
【感想】
今気付きましたが、帯の文章が容赦ないですね…。
女性誌である「エレガンスイブ」に連載していたけれど、単行本は男性向けの「チャンピオンRED」。
本屋だと男性誌の新刊コーナーに置いてあるのかな?
作者のプロフィール
作者のカラスヤサトシさんは1973年生まれ。
2011年、カラスヤさん37歳の時に娘・リーちゃんが誕生。現在3歳。
奥様は10歳年下で音楽系のライターをされており、夫婦揃って自宅でフリーランスの仕事をしている家庭です。
『結婚しないと思ってた』という漫画で奥様との馴れ初め~結婚までのエピソードが描かれています。
これもおもしろいです。
漫画の構成
1話6ページ(11本)の4コマ漫画×30本と、描き下ろし4コマが4本収録されています。
娘・りーちゃんが家に来て2週間めから2歳を過ぎたあたりまでが描かれています。
この漫画の特徴
基本的にはいつものカラスヤ漫画といいますか、のんびりしていて笑える育児漫画です。
エピソードとして家族でのイベントについて描かれていることが多いと感じました。
例えば、大阪の実家への帰省、引っ越し、友人の結婚式への参列、嫁姑の諍いへの仲裁等が描かれています。
家族3人を中心に描かれた『オレなんかが親になって大丈夫か?』とは違ったカラスヤさんの一面が見えました。
たまに一個人として、夫として、父親として、自分の行動や言動に悩んだり迷ったりするカラスヤさんの姿も描かれています。
怒るし、悩むし、落ち込んで暗くなる。
『オレなんかが親になって大丈夫か?』で描かれる疑問や悩み、例えば病院の対応がバラバラだということやベビーカーに対する世間の目などは、どちらかといえば外向きの話題でした。
『エレガンスパパ』で描かれる悩みは内面に根差したもので、これもまた親としては思い悩む部分です。
子どもと接することで自分の未熟さに気付いたり、子どもを育てる為にかかるお金を計算しては不安になったり。
仕事場を探しに行って、そのまま出奔する人の気持ちが分かるような気がしたり…(このエピソードは好きです)。
誕生祝の一升餅を背負って願いを述べる…というオチは、笑えるけれど、父親としての切実さも感じます。
サラリーマンであっても将来が不安ですが、フリーの漫画家として収入を得ていると、色々と不安だろうなあ…とも思います。
こういう葛藤については、カラスヤさんの描き方、読ませ方が上手くて、読み飛ばすことも出来るくらい、サラッとしています。
私は男性漫画家さんが描いた育児漫画も色々読んできましたが、自分の内面の葛藤や、親として感じるプレッシャーについて描いている作品は少ないです。
親と自分との関係について描いたのは村上たかしさんの『くう・ねる・そだつ』、子育てのダークサイドを描いたのは吉田戦車さんの『まんが親』くらいかな?
読んで楽しい、娯楽に徹した作品を描く男性が多いのです。
それはそれで気楽に読めるし、良い部分でもあるのですが、男性作家が描いた作品で、おもしろいだけではない作品が出てくるのはありがたいです。
(参考)
●「男性漫画家が描いた育児マンガ」一覧
好きなところ
子育て話として驚いたのは、「立ったまま寝たふりしたらもう一度寝る!」…という話。
なるほど。そういう発想はなかったなあ。
試してみたい!…が、生後3か月の赤子は基本、よく寝ていて起きないし愚図らない…(助かってます)。
2歳半の娘は起きやすいけれど、ここまで大きくなると騙せない気がする…。
…誰か試してみてください…。
あるある話として描かれていた「子どもが死んだじーちゃんを呼ぶ」話。
これ、うちでもあるんですよね。
誰もいない空間に向かって娘が「じーちゃん!」て呼ぶのです。
存命しているじーちゃん(私の父)のことを言っているのかな?とも思ったのですが、娘の様子をみていると、なんか違うみたいで。
親の解釈次第ではありますが、亡くなった義父が見守ってくれているなら嬉しいです。
しかし他の家でもあるんだなあ…とびっくりしました。
小ネタとして。
『オレなんかが親になって大丈夫か?』の中で「1歳を機に髪を伸ばそうとしてやめた」と描かれています。
※↓の画像は『オレなんか~』の描き下ろし漫画です。
『エレガンスパパ』でも、リーちゃんが1歳になった11話で、お風呂に入っている時だけりーちゃんの髪が長かったりします。
【入浴前】
【入浴中】
【入浴後】
…しかし冷静に考えると作品を描いている時期は違う筈なので、何故こうなったのか不思議ですね…。
さて今回、泣かされたのは7話のこの場面です。
正確には4コマ目の文章読んで、涙がぶわっ…と来ました。
なんというか、うまいなあ。本当に。
毎度毎度、不意打ちみたいに共感出来る場面が現れて、泣けてきて、驚かされます。
他にも、スズメを保護した話、知らない子と遊ぶ娘を見ていて自分が子どもの頃いじめられた経験を思い出した話、正月の痛風疑惑、父娘2人だけでの取材小旅行など、30話全てに感想を書きたいくらい面白かったです。
父親であるカラスヤさんに絞って感想を書きましたが、娘・リーちゃんは可愛いし、お嫁さんはかっこいいです。
嫁さん、ほんとかっこいい。若いのによくできた人だと感心します。
実際にかっこいい人なのかも知れませんが、嫁さんをかっこよく描けるカラスヤさんも素敵だと思う。
固めの感想ばかり書きましたが、今回、自分的に一番ツボだったのは1話「ダミーチチー」です。
題名でなんとなく想像がつく内容だと思いますが、いやー、色々勉強になりました。
思いついてもなかなか実践しないと思うんだわ…!(笑)面白かったけどうちの旦那にはやられたくないわ…!複雑!(苦笑)
まとめ
まだ発売して2日なので、この程度なら問題ないかな?…というくらいの感想にしました。
買うのを迷ってる方がいるなら、是非買ってください。面白いです。
これだけ熱く語り、購入を勧めておいて何ですが。
大学時代~25歳くらいまで雑誌「アフタヌーン」を買っていたけど『カラスヤサトシ』は読み飛ばしていた自分が、カラスヤさんの育児漫画のファンになるとは思いませんでした…。
元々、4コマ漫画やギャグ漫画は苦手だし、(失礼を承知で言うと)絵が下手な漫画は読む気がしないわ~…とか思っていました。
WEB漫画が読みやすい環境でなかったら、きっと読んではいないでしょう。
もし私の感想を読んで、カラスヤさんの育児漫画に興味がわいたら、『オレなんかが親になって大丈夫か?』をお試しください。
これを読んで「うーん…?」と思う場合は、『エレガンスパパ』も合わないと思います。
育児漫画は読み手の年齢や子どもの性別で好みが分かれますから。
最後に。カバー裏の言葉もステキでした。
続編『エレガンスパパHyper!』も単行本になるといいな!