私が読み終え、旦那さんも読み終えたので感想を書きます。
奥様が妊娠中のプレパパから、子供が0~3歳くらいまでの父親を対象にした育児書です。
旦那さんの感想は「パパはママをねぎらってと書いてあるけれど、この本はパパをねぎらってはくれないんだよね…」でした。
私の感想は「自分がどこに不満を持っているのか?を分析するのに便利だったけど、育児書の悪い面が出ている気がする…。」です。
amazon ★★★★★(5.0) ※レビュー3件
楽天 レビューなし
【内容紹介】
日本最大のパパ団体が送る「パパ育児の決定版」。子育てを頑張りたいパパやプレパパに、知識・スキル・マインドを伝授します。
育児のテクニックだけでなく、「ママとのパートナーシップ」や「仕事と育児の両立」、「地域との関わり方」など幅広く解説。
【夫の感想】
ある程度読んだ旦那さんに、感想を聞いてみました。
要約するか迷ったのですが、そのときの会話をそのまま書き連ねてみました。
私「どうでした?」
旦那「うーん…。いいことが書いてあると思うんだよ、でもなんというか…。一気にハードルが上がるというか。例えば、オムツ替えから育児に参加してみよう、というのは分かる」
私「うん」
旦那「でも、なんだろう…。この本は、心構えについて語り、知識・情報、技術、友達作り…て感じに流れていくでしょう」
私「はい」
旦那「1番最初で『今のお前じゃダメだから変われ!』と言われる。これでやる気がなくなるというか落ち込むというか」
私「ふむ」
旦那「こないだの『すくすく子育て』の方が良かったなあ。一応、パパの努力を認めてくれたでしょう。でも足りないから頑張ってほしいと」
※NHK教育の番組。2013年11月2日放送の「パパのホンネ 全部聞きます!」
私「あの回は大日向先生が素晴らしかったね。夜中に帰ってきて家事を手伝うお父さんを褒めた後のダメだしが秀逸だった」
※番組内で大日向先生が「世の中の大多数のパパに比べて本当によくやっていると思います。評価としては80点!ただし、このマイナス20点がかなり重要で、ママにとって許しがたい部分ではないでしょうか。」とぶった切ってました。
旦那「うん。著者であるファザーリングジャパンの人たちは父親としてはベテランでしょ。それはいいんだけれど、経験者が上からモノを言っている感じが気になって。読んでいると「オレそんなにダメか~?」と思ってしまって」
私「ああ、お母さん向けの育児書でもあるなあ、そういうの」
旦那「最初、ダメだしから入ると萎えるというか。この本はパパはママをねぎらってと書いているけれど、パパをねぎらってはくれないんだよね…」
私「んー…。じゃあ、ここが良かった、役立ちそうだ!…と感じた部分はない?」
旦那「うーん。今の自分ではダメで、行動をしないのも自分勝手な思いだけで行動してもダメだということはわかった。でも次の一歩をどう踏み出すのか。とりあえずやってみろというのは分かるんだけど…。本を書いている人たちは今の生活が上手くいっているから、最初に失敗したことや挫折したことを忘れているのかなあ。だから経験者が上から目線で言っているように見える。読んだ後の素直な感想としてはやる気を削がれる、だねえ。」
旦那さんと話をしていて、育児書の負の面がでている気がするなあ…と感じました。
旦那さんの性格にもよるのでしょうが、妻が「読んでみて!」と渡すとプレッシャーに感じるかもしれません。自発的に買ったら違うかもしれませんが…。
【妻の感想】
この本を先に手にしたのは妻であり母である私です。
最初に読んだ時の私の感想は「妻がやってほしいことは全て網羅してあると思うけれど、要求水準が高すぎないか…これ…」でした。
(旦那さんに渡すときに、そのことは伝えてあります。)
作り手であるファザーリング・ジャパンのみなさんは『理想のパパ像を教えたいわけではありません』『いい父親ではなく、笑っている父親になろう!』と書いています。
でも、この本を読んだ旦那さんが笑っている父親になれる気がしませんでした。いい本なんだけど…。
全体の構成
1)MIND…子育てに対する意欲を高める
父親が育児に参加する必要性について
社会の変化、夫婦の関係について知りながら「新しい父親」になるべく意識を変えよう
2)Knowredge…子育てに関わる知識・情報を学習する
妊娠・出産・産後の奥さんの状態や、それを知った上での父親としての対応。
お金、法律、子供の保育や教育について。
3)Skill…子育てに役立つ技術を習得する
おむつがえ、入浴、食事作り、本を読む、体を使った遊び…等々
4)Network…パパ友ネットワーク作りのコツを知る
自分のワーク・ライフ・バランスを見直そう
タイムマネジメント
サークルや地域活動に参加して仲間を作ろう
この本の良いところ
私が良いな、と思った部分は3点。
1)育児と家事について、幅広くカバーしている
2)パパの役割を父親・夫の2つに分けて書いてある
3)1項目3~4Pと短く、さらっと読める(読みやすい)
1)育児と家事について、幅広くカバーしている
育児はオムツ替えから入浴、食事、絵本や外遊び、旅行まで書いてあります。
家事は方法論ではなく、分担を考えることを薦めています。
グラフなどで数値を示し、家事の負担が妻に偏っていることを指摘。
家事分担についてのところでは、3つの要素を指摘。要素を分解して解説しているのは分かりやすくていいと思いました。女性は全体をざっくりつかめるけれど分析・分解して説明しようとは思わない。逆に男性は分解しないと分からないことも多いので。
『家事は「手伝ってあげる」のではなく、フェア(公平性)を求めるものでもなく、シェアする意識で』の文言は素晴らしい。
2)パパの役割を父親・夫の2つに分けて書いてある
パパ(父親)としての役割だけでなく、夫=妻のパートナーとしての役割について書かれているのはよかった。
そして、これは妻自身が問題の棚卸をする上で重要に感じました。
特に、ロジカル・ペアレンティングLLP代表の林田香織さんのメッセージは良かった。
2Pと短い文章ですが、腑に落ちましたし、憑物も落ちた気分です。
要望を言語化できるってすごく大事なことですね…。
セックスレスの話のときにちょろっと書きましたが、夫婦のセックスについてはほとんど触れていません。ページの都合もあるでしょうし、これは仕方ないかな。
セックスやセックスレス、家族計画については、次回作での情報強化に期待したいです。
3)1項目3~4Pと短く、さらっと読める(読みやすい)
読み手が男性であることを意識してか、ビジネス書のような造り。読みやすいと思います。
最初にテーマが示してあり、最後には「まとめ」もあります。
旦那さんは1日の通勤時間(往復で1.5時間くらい)で3分の2程度、読み終えたそうです(普段、本を読むのは遅い人です)。
この本の気になるところ
気になったのは主に2点。総じて「ハードルが高い」と感じることです。
1)幅広くカバーしてある→やることが多くて不安になる
2)1つ目のステップが見えない。難易度が高すぎる?
1)幅広くカバーしてある→やることが多くて不安になる
書いてあることは正しくて、確かに妻/母である自分はこのくらい考えているなーと思うことです。
もし、旦那さんに妻の負担感を知ってもらいたいならば、読んでもらうと良いでしょう。
反面、網羅しすぎている故に「いきなりこんなに考えるの?」と思ってしまう。
例えば育児について「まずはオムツ替えから」と書かれていますが、読むうちに「(世のお父さんは色々やっているのに)自分は大したことやってない…」と落ち込むようです。
また、楽にする方法が書かれていないのも気になりました。
私は家事は楽をする方向で動いた方がいいと思っているので、分担を考える前に便利家電の導入を検討した方がいいと思うんだけどなあ。男の人が好き・得意な分野な気がしますし。夫婦の考え方にもよるのでしょうけれど。
まあ、旦那さんが(大した家事もしないで)突然「食洗機を買おうと思う!」と言ったら「先に出来ることをやれ!」怒る人もいるだろうしなあ…。
旦那さんの行動だけでなく奥さんの想いを考えねばならず、それが選択肢を狭くしている気もします。父親って大変だな…怒られてばっかりだな…と思いました。反省。
2)1つ目のステップが見えない。難易度が高すぎる?
例えば、料理について。
この本では「(パパ自身の)自分の好きなものから作ってみよう」とありますが、一方で「2~3歳の子どもにも手伝いはできる」ともある。
料理が出来ない人は子どものことまで面倒見きれないのですが、「すごい人の普通の基準」で書かれているので、料理が苦手な旦那さんには「えー…」となる。
例として掲載されていた献立の例はひじきの炊き込みごはんと厚揚げの煮物でした。
産後の妻を気遣ったレシピかもしれませんが、この2品だけ食卓に並べても「えー?ごはんとおかずだけ??」ってことになるのでは。汁物は?野菜が少ない…という反応が自然だと思う。
奥さんに褒めてもらえる鉄板メニューではない。これだと「せっかく作ったのに…」てことにならないかなあ?
作る側は、喜んでもらって、褒めてもらった方が嬉しい。奥さんとしては、褒めやすいメニューの方が失言しなくてありがたい。
でも、献立を一汁三菜にすると、料理の難易度は一気に上がります。用意するのも大変。
私は、旦那さんがごはんを作ってくれるのであれば、カレーとごはんだけでも充分ありがたい。
トッピングに納豆、トンカツ、ホウレンソウなどを加えてのアレンジもきくし、甘口で作れば子供も食べれるし。
私は世の父親が家事・育児に参加するには2つハードルがあると思っています。1つは父親自身の気持ち。2つ目は奥さんの目。
ファザーリング・ジャパンの方たちは、本人の能力がそこそこ高かったからやったらできたのかもしれないし、奥様は心が広くて見守ってくれたのかも知れない。
自分自身の気持ちを高めて失敗しにくいステップを示して欲しいし、奥さん対策?もあるといいのかな、と思いました。
本人の気持ちを高めることが奥さん対策にもなるのですが…。
この辺はなんとも、個人差もあるし難しいなあ。
私の使い方
本来の使用方法とはずれる気がしますが、この本を自分で読んで、旦那さんに読んでもらって、結果として夫婦の間にある問題の棚卸ができたような気がしました。
旦那さんにしてほしいことは何だろう?
項目が細かいから「私はここをこうして欲しかったな~」という自分のニーズを掴みやすいのです。
この本を手にしたときに浮かんだ疑問。
旦那さんにこの本を読んでほしいと思うのは何故だろう?何を知ってほしいのか。何を考えてほしいのか。
私が旦那さんにイライラしていたとき、何が不満だったのか?
私の場合、家事は自分がやる、で問題なし。私は仕事をしていない(専業主婦)し、家事を効率よくこなすのは楽しいので、旦那さんにやってもらわなくても対応できますし不満には思いません。
育児については、入浴・遊びは自発的にやってくれているので問題は感じない。
ただ、私が熱を出したときなど普段と違うときには早く帰って育児をしてほしいし、こちらが言わなくても判断して欲しい。
私が指示を出す上司のように扱われたり、判断を求められるのは嫌だなあ
項目ごとに自分の気持ちをチェックし、想像を巡らせてみた結論。
私が旦那さんにしてほしかったこと。それは、自分の頭で考えて動くこと。
私が欲しかったのは、私の指示に従う部下やフォロワーではなく、同志・パートナー・相棒・バディ・共同経営者である夫…。
私と近い位置に立って、自分の頭で考えて、自分で判断して動いてほしかった。
ここ半年くらい本当に孤独感が強くて。自分は1人だ、寂しい、つらい、悲しい、と思っていました。
何故か。娘の将来を背負った感もありますが、私の場合、これは気になりません。当然だと思えるし。
旦那さんが私の顔色を窺って、上の人のように扱う。
お前は私の子供ではないだろう?私の子供になるんだったら、必要ない。娘と2人で生きる方が楽だ。
そんなことを思っていました。
この本を元に自分の不満の原点を突き詰めることができ、してほしかったことが言語化できて、気持ちが楽になりました。
「自分の要望」と「旦那にお願いしていること」が違う!
自分の要望が分かった後、はたと気付きました。
私は「父親としての自覚を持って」とか「家事もやって」と、旦那さんに言っていました。
自分の不満を解消する為にお願いしていることが、問題解決につながっていないのです。
結果、旦那さんは私の要望を聞いてそれに沿うように動いても、私は満たされないので怒る…といったことを繰り返していたような。
そのせいで旦那さんが私の指示を待ったり顔色をうかがい始め、その態度に更にイラつく…ということを繰り返していたような気がします。
負の連鎖です。
……私が問題を大きくしていたのね…orz
ホルモンバランスもあるし寝てないから頭が働いていないのもありますが、えらい酷いことを起こしていたなあ…。
※この件については謝罪した上で、自分の考えを伝えました。
結論として
家事や育児について広い範囲でカバーしてあるので、まずは妻/母の立場で読んで、自分の夫や旦那さんにも読んでもらい、感想を言い合うのがいいかなあ、と思いました。
男性の為の教科書だ、といって渡すより、夫婦で話し合う為のベースに使うのが良いかと思います。
育児書としては理想が高いと感じますが、こういう本が話題になって別のバージョンも生まれてくる、というのは女性向けの育児書でもあったことですし。
市場が広がって、へっぽこなお父さんでもマネできる範囲の育児書が出るといいですね。
2018/1/21 補足
この本を読んだ2013年から、はや、4年以上が経った2018年1月21日です。
2011年の吉田戦車さんの『まんが親』1巻発売をきっかけにした「父親が共感できる育児漫画無理矢理出そう!」も落ち着いて、良作しか出なくなってきた感じでしょうか。
じわじわと、お父さんが共感できるかも…?という育児漫画も発売されたりしておりますので、興味がある方は、手に取ってください。
最近の赤さん(とよ田みのる)
●とよ田みのるさんの育児漫画『最近の赤さん』ハイハイ編(その1~52まで)(Togetterまとめ)
父の悩み?的な描写はほぼありません。娘さんかわいい!!全開の話。でも人気漫画家が趣味でTwitterでUPした漫画が本になって。本当にびっくりしました…。
打ち切り漫画家(28才)、パパになる。(富士谷カツヒト)
働くお父さんにお勧めしたい。連載の打ち切りと、妻の妊娠が同時に始まった漫画家による父親としての物語です。漫画としての出来も素晴らしい。隠れた名作です。
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