【発達障害】に関する育児漫画情報

『デキバカ』(ひろせみほ)感想~アスペルガー症候群の息子と眠れない娘がかわいい育児漫画

投稿日:2017年7月26日 更新日:

発達障害児を描いた育児漫画を色々紹介していますが、2017年以前に自分から買って読んでいたのは今作だけでした。
2014年時点で紹介記事を書いていますが、現在の視点で新しい感想を書いてみたいと思います。
単行本はKindleのみ(セルフパブリッシング)。フルカラー64ページで300円。Kindle Unlimited対象。

(レビュー)
amazon ★★★★★(4.6) 

【内容紹介】

「デキバカ」とは”デキるのにバカなやつ”のこと。「あいつデキバカじゃけん、しょうがねえなあ~」 のように使う。たぶん方言。
あまり品の良い言い方ではないけれど、アスペという名前が知られる前から、”できるところとできないところの差が大きい人”がコミュニティの中にいて、それなりにやっていて、愛着をもって呼ばれていたんだなぁ、ってことを感じさせてくれる言葉。
そんな愛すべき「デキバカ」の日常を描ければと思っています。
amazonの内容紹介ページより引用 

【感想と解説】

以前書いた感想はこちら。WEBで読める漫画として紹介していました。

【WEB漫画】『デキバカ』(ひろせみほ)感想~アスペルガー症候群の母と子の日常~

Kindleで発売されている育児漫画を調べていて見つけたWEB漫画をご紹介。アスペルガー症候群の息子さん、ボーダーの娘さんとの日常を描いた漫画です。 WEBで14話が無料公開されています。 詳しくは後 ...

続きを見る

現在も「でこぼこ生活研究所」にて14話を無料公開中なのですが、パソコン向け表示な上に広告表示が酷いのでお勧めできません…(特にスマホからは読めないと思う)。

作者のプロフィール

漫画家・ひろせみほさんは漫画を描く廣瀬美帆さんと、原作担当の寺嶋克紀さんのPNです。
成人向け漫画を中心に活動中。

家族は母・廣瀬さん(アスペルガー症候群)、父・寺嶋さん。
アスペルガー症候群の息子・タケルくん(小学6年生)、娘・いっちゃん(6歳下、年長)の4人家族。

現在は「寺島ヒロ」名義で活動中。
ブログでは2人の子どもを描いた育児漫画を更新しています。
●作者ブログ「でこぼこ兄妹日記
●Twitter:@terashimahiro

育児漫画とは別にnoteで「くらげ×寺島ヒロ 発達障害あるある対談」を連載中(有料、1話200円/1カ月4話まとめて500円)。
くらげさん原作の『ボクの彼女は発達障害』の作画を担当しています。

漫画の構成

サイトで連載していた漫画1話4ページ×全14に、描き下ろし2話を加え、全16話を収録。
タケル君やいっちゃんの日常の様子を中心に描いています。

この漫画の特徴

・絵がかわいい
・明るい
・母子で発達障害

私は「発達障害を持つ子は感覚に敏感だったり温度に鈍感だったりする」といった話をこの作品で知りました。

初めて読んだ2014年当時は、かわいい絵柄を楽しみつつ「発達障害ってこんなこともあるんだ…」と思いながら読みました。
絵柄はかわいいし子どもたちもかわいい。親としての悩みに触れる場面もありますが、全く暗さはありません。

息子・タケルくんの発達障害

8歳の時(2007年)にアスペルガー症候群と診断されました。
ブログを読むと小3の頃から通級に移り、中学は少人数の私立中学に通っているようです。
息子について(でこぼこ兄妹日記)

漫画に描かれている特性は

・聴覚過敏
・睡眠障害(寝ない、寝ても起きる)
・ADHDもある?(手足をぶつける、多動)
・肌が触覚過敏で服が限られる
・気温に鈍感(25度以下は寒い)
・朝起きるのが苦手
・数学への興味が強い
・学習障害?(枠の中に書くのが苦手)

3歳の頃に、3種類のパズルが混ざった状態でパズルを完成させていた、といったエピソードが描かれているのですが。
2014年当時、うちの娘は2歳。「へーそうなんだ」程度の感覚でした。

娘も3歳頃からパズルを出来るようになりましたがゆっくりと確認しながらで、3種類を混ぜてなんて出来ない。今ならそのすごさが分かります…。

上述しましたが、肌の感覚過敏についてはこの漫画で知りました。
服の襟元や脇についたタグがチクチクする、程度ではないんだなあ…と驚いた覚えがあります。

気温に鈍感

タケル君は皮膚感覚は敏感なのに、温度には鈍感で。
気温25度以下は寒い、夏でも長袖で登校。学校の先生に理解してもらえず「指導」を受ける。タケル君は素直に半袖を着るようになる。

このエピソード、深く掘り下げると悩ましい。いや、タケル君のように「半袖を着ても問題ない」なら別に良いのです。
こだわりや、感覚的な不快感から長袖を選んでいる場合は「半袖を着る」という対応も難しいような気がして。

「指導」についても、「みんな半袖だからお前も半袖」だと「う、うーん…」と思ってしまう。
制服の学校だと「全員で揃える」のも分からなくないのですが、私服なのに長袖はダメなのだろうかとか。

大人は(日焼け対策で)夏でも長袖を着るけれど子どもだとどうなのだろう…?

朝、起きれない

ひろせさんは「起動失敗」と描いていますが。
朝、目が覚めているのに体を起こすことが出来ず、遅刻したりするといったエピソード。

調べてみたら「起立性調節障害」という状態のようです。現在は治療を受け改善を図ることもできるよう。
※「起立性調節障害」は発達障害ではありません。
起立性調節障害 ( OD : Orthostatic Dysregulation ) とは?

私の夫は以前、自律神経失調症だったので、同じように朝、めまいや立ち眩みを起こして身体を起こすことが出来なくて。
勤務先であるゲーム会社は緩いので連絡を入れれば遅刻しても問題なかったのですが(仕事の遅れは残業でカバー出来るし)、学校だと色々と難しいような…。
現在でも親がきちんと寝させてない・起こしてない、本人の怠け心だと誤解されるような気がします。

娘・いっちゃん

今作の時点(5-6歳頃)は「発達障害ボーダー」と説明されています。
ブログでの紹介は「傾向はあるが日常で困ってないので診断は受けてない」「空間と音楽の分野にサヴァン的能力を持っているみたい」と書かれています。
娘について(でこぼこ兄妹日記)

漫画の中で描かれたエピソードとしては

・睡眠障害(寝ない)
・肌が触覚過敏で服が限られる
・ケガには鈍感、かゆみには敏感…?
・音楽的才能が高い

いっちゃんのエピソードでは「子どもが寝ない」が具体的に描かれています。

9時に布団に入って、眠るのは24時…。これは付き合う大人も大変そう…。
「子どもの寝ない状態」と「親としてとっている対策」を具体的に描いているのは今作だけです。いっちゃんのは感覚過敏なども影響しているような…。

その後、いっちゃんは薬を処方してもらったようです。
眠れるクスリ(でこぼこ兄妹日記)

はざまのコドモ』では息子・ヨシ君の睡眠障害について、病院で診断を受け指導を元に対応していく姿が描かれており、睡眠のリズムが25時間だったこと、朝、強い光を当てることで起こしていました。

検索して子どもの睡眠障害についての体験談も調べて読んだのですが、これまた十人十色な感じですね…。
「寝入るのが苦手」「眠りが浅くてすぐ起きてしまう」等、ケースも様々で対応も様々。
もしかして、わが子は睡眠障害?そう気づく前の子育ては壮絶で…
ベッドに入ってもなかなか寝付けない息子
どうしても眠れない…睡眠障害と向き合う息子とわたしの工夫

母・廣瀬さんの発達障害

検査は受けてないようですが、アスペルガー症候群の傾向があるようです。
特にブログの漫画を読むと感じるのですが、子どもの様子をよく見て漫画を描いているなあ、と思えるエピソードが多いです。

2007年(特別支援教育制度の施行)以前に、発達相談に行った時のことが描かれています。
2014年当時、「これは酷いなあ。法律が施行されて改善されて良かった…」と思いました。

2017年現在。色々な漫画を読むと、現在もこれに似た的外れな反応をするところもあるようで…。
相談先とか学校が変わるのはいつなのか…(指導は入らないのだろうか…)。

まとめ

父・寺嶋さんも心が広いというか、ゆったりと構えた感じのお父さんで良いご家族だなあ、と思いながら読みました。

1点だけ気になることを書きますと。打ち切りっぽい尻切れトンボな終わり方をしているのが残念です。
連載していたサイトがクローズしているので、多分打ち切りだったのだとも思うのですが(笑)、タケル君の中学受験の話は途中で終わっています。

しかし何も知らなかった2014年の頃と比べると、発達障害について本で学んだ今の方が色々読み解けるものですね。

今作の良いところは「ちょっと変わった子どもを描いた育児漫画として読める」ことで。
ブログ漫画は開設された頃から読んでますが、こちらも面白いしかわいい。独特な育児漫画です。

●作者ブログ「でこぼこ兄妹日記

次は、同じひろせみほ(寺島ヒロ)さんのブログを電子書籍化した『でこぼこ兄妹日記』の感想を書く予定です。

※書きました

『でこぼこ兄妹日記』(寺島ヒロ)感想~ちょっと変わった兄妹を描いた育児漫画

アスペルガー症候群のタケル君、音楽的才能が高くボーダーのいっちゃん。 ちょっと変わった兄妹が登場する、かわいい育児漫画です。 白黒で全101ページ、324円です。 リンク貼りませんが楽天KOBO、Bo ...

続きを見る

***
この感想は「発達障害特集」の一環です。今まで書いた「発達障害特集」の記事はこちら。
発達障害に関する育児漫画

おすすめ記事

1

最近、この本を読みました。 江戸しぐさという偽史を検証した本です。大変おもしろかった。 ※「江戸しぐさ」についてはこの辺の記事を参照ください。 ●“偽物の歴史”を教育に用いるのは、倫理の根幹を破壊する ...

2

さて突然ですが、ここでクイズです。 ご夫婦で一緒に考えてもらえると嬉しいです。

3

おはようございます。末尾です。 今日はゆむいさんがサイト「ママの求人」で連載中の『ふよぬけ』の紹介と感想です。

4

おはようございます。末尾です。 昨日予告した通りですが、今回の特集は「新波【ニューウェーブ】」と題して、育児漫画作家さんの新たな活動について紹介していきます。 第一回の今日は、ハラユキ(旧PN:カワハ ...

5

自分が義理の父を亡くした時に参考にした情報や本のまとめです。 人の死に際して、やることは大きく3つあると思います。 1)葬式の準備(日程、開催規模、通夜後の清めの席での参列者、通夜や葬儀の供物、葬儀後 ...

-【発達障害】に関する育児漫画情報
-, , , , , ,

Copyright© 育児漫画目録 , 2024 All Rights Reserved Powered by AFFINGER4.