今回、妊娠中や産後のセックスについて描かれた漫画をまとめようと思ったのは、数日前に読んだブログの記事が興味深かったからです。
・「妊娠中だからセックスしない方がいいんだよね」という誤解(斗比主閲子の姑日記)
・妊娠中のセックス(実録編)(仕事は母ちゃん )
上(斗比主さん)は妊娠中はセックスしちゃダメだと誤解している人が多いようだけど、妊娠中でもセックスしていいんだよ、という話。説明も分かりやすいです。
私は夫婦一緒に妊婦健診に通っていたせいか産婦人科で説明を受けました。そんなことを知るきっかけは少ないだろうし、知らない人も少なくないんだなあ。
下(仕事は母ちゃん)は4人の息子を持つお母さんのブログです。妊娠中は粘膜がはがれやすく出血しやすいから気を付けようね、という話。
4人産んだ後でも旦那さんと仲が良いのはうらやましい。
これらの先輩お母さんの話は、勉強になっただけではなく、ありがたかった。
自分より年上の夫婦のセックスの話なんて、なかなか聞けませんから。
妊娠中のセックスについて
自分には「女友達」が少ないのもありますが、セックスの話を出来るのは1人だけです。その友達には生後5か月の息子がいます。
この間、久々に会ってランチをしたとき「私は2人目を作ろうと産婦人科に行って排卵タイミングを確認してる」と話したら、「…いやもう、子どもの面倒をみるのに精いっぱいで、全くそういう気にならないよ~!」…という話になりました。
「ですよねー。」
私も出産直後は疲れていたこともあり、全くその気になりませんでした。
ホルモンバランスもあるのでしょうが、なんだかよくわからないけれど旦那さんに身体を触られるのが嫌でした(肩とかでも鳥肌がたってました)。
上で紹介したブログ記事にもありましたが、会陰切開の傷も気になりましたし。
ちょっと前に『私たちは繁殖している』(内田春菊)文庫版を(2巻にあたるブルーまで)読み直したら、作者は妊娠中や産後も性欲が衰えていない様子で驚きました。
妊娠・出産・育児は個人差が大きいと感じますが、セックスも個人差が大きいテーマのようです。
※専門家の意見が読みたい場合は、この記事が参考になります。
●妊娠中のセックスにまつわる女性の7つの疑問・不安に、産科医がズバリ回答!
2つのコミックエッセイに描かれた「産後、夫婦に出来る溝」
コミックエッセイを読むのが好きで、妊娠・出産・育児に関するものもいくつか読んでますが、この2作は特に面白かったし興味深く感じました。
とにかく夫がイヤになる?
妊娠・出産を通じた女性の変化を描いた『ママだって、人間』(田房永子)。
癖は強いですが、女性の心理的・身体的な変化をうまくとらえた作品です。
●末尾の感想文:『ママだって、人間』感想~ママと私とオンナの関係~
●出版社サイトで1話だけ試読できます
妊娠中は性欲が高まり、夫を積極的に誘ったりもしていた主人公・エイコ。
産後に状況は一変。とにかく夫がイヤになる。
色々な不満がきっかけとなり、夫と話すことができなくなる。
性欲はあるけれど、夫とセックスをする気にならない。
旦那はどんな人だったっけ?胸にぽっかり穴が開いたような気分。
性欲解消の為に、いっそ元彼と浮気でもしてやろうか…??
そんな主人公の、ある種やけっぱちとも思える感情が描かれます。
この漫画の良いところは2つあって、
・妊娠中のセックス肯定(妊娠前~妊娠中はセックスに積極的だった自分の姿を素直に描く)
・女性が、産後セックスをしたくなくなる気持ちの背景が描かれている
妊娠中は個人差が大きく、私は妊娠中に性欲が無くなりましたが、普段以上に性欲が高まる女性もいます。
上で紹介したブログでも「妊娠中のセックスはよくないという誤解」について言及していますが、妊娠中にセックスするのは非常識、女性が誘うなんて信じられない…等々、間違った認識を当然とする現状に一石を投じた作品だと思います。
また、産後のセックスレスの構造を紐解いていく作者の筆力には舌を巻きました。
「夫がイヤだ」の裏側に隠された自分の本心。エピソードを丁寧に積み上げて、最後に気付くエイコの本心には、自分に憑りついた憑物が落とされる気分でした。
育児中の妻は色気がない?
デジキスで連載していた『王子と赤ちゃん』(カワハラユキコ)。妻の立場から、出産後に起きた産後クライシスを描いた漫画です。
11話くらいから作者が「自分1人では育児はできない」と気付き、夫に協力を求めた始めたけれど、全く協力する様子がない。
夫に期待する自分が悪いのか…?でも、結婚した相手に期待しないのってどうなの…?様々な思いが頭を巡る。
●末尾の感想文:『王子と赤ちゃん』感想~妻が体験した産後クライシス~
●出版社サイトで「1話を試し読み」をクリックすると4話まで試読できます
この漫画の夫=王子は、自分なりの美学を持ち、服や体型にもこだわりがあるタイプ。
妊娠中から「今の奥さんは、ただのデブ」「ちょっと食べ過ぎじゃないの…?」などと、ちょいちょいチェックを入れます(これがムカつくんだ…)。
13話では、妻が「何か言いたいことがあるんじゃないの!?」と切り出すと、色々な不満を述べる夫が一言。
「色気がなくなった…」
産後がどれだけ大変か分かってんのか!
美しくあるにも、余裕が必要なんだよ!!…等々、妻としての言い分が渦巻き、作者の気持ちとシンクロして胃が痛くなりますが、1人の男性の素直な気持ちとして、理解は出来ます。意識が子どもに行き過ぎて、夫に触れることもありませんし。
1回のページ数は少ないのに思いや出来事がぎゅぎゅっとつまっていて、自分のことを振り返りながら色々考えます。
王子=夫の言い分にムカつきつつも、言い争うのではなく落としどころを見つけるにはどうすればいいか?一緒に考えることができます。
それぞれの作者が違った産後の悩みを描いていますが「気付かないうちに夫婦の間に溝が出来ている」という点は共通しているように思います。
男と女だったものが夫と妻になり、父と母になる。その途中で齟齬が生じやすいのかもしれません。
そして、人によってはこのズレがセックスレスの原因になるのかも知れない。
セックスレスをテーマにした漫画いろいろ
読んでおもしろかったものをいくつか。
セックスレスの判断や治療方法
「ゆうメンタルクリニック」(心療内科)でWEB連載中の「マンガで分かる心療内科・精神科in渋谷」がわかりやすいです。
セックスレスの判断や治療方法の一例は「第54回 セックスレスの治療法」に描かれています。
セックスレスとは、特別な事情もないのにも関わらず、1カ月以上性交渉がないカップルのこと。
そもそも論として、日本人全体の性行為が少なくなっていることを指摘。
セックスレスの原因は、女性だと「性嫌悪症」(性行為を元々嫌う状態)、男性側だとED(勃起障害)の他に、パートナー(妻)に性的興奮を覚えなくなった等が挙げられます。
治療例は普通の?セックスレスなご夫婦で、妊娠中・産後ではありませんが、治療方法は実生活で使える気がします。
「夫婦関係で、うつにならない方法」「女は、うつになりやすい?~PMS」 も合わせてどうぞ。
夫婦のセックスレス体験を描いた漫画ブログ
4歳の娘・2歳の息子・0歳の娘の3人の子供を持つtohuさん(女性)のブログ「レス嫁の絵日記」。
読みながら夫婦の性欲が違うと大変だなあ…と思いました。生活時間帯が違うと誘いにくいし。機会を見つけて自分の意思を伝えているtohuさんはえらいなあ。
育児漫画もかわいくていいですよー。
●レス嫁の絵日記
セックスレスをテーマに描かれた漫画単行本
たかせシホさんの『ごぶさた日記』。
産後のセックスレスについて作者自身の体験を描いたコミックエッセイだと、この1作しかないはずです。電子書籍はKindleや楽天Koboで買えるようです。
自分も電子書籍で買いました。話題の中心は子どもたちが小学校に上がったくらいの話ですが、産後のセックスレスはあったようです。
1人目出産後にセックスレスになったけど、「2人目が欲しいから」セックスを再開できた。でも、2人目を産んでしまうとそれどころではない。
「草食系で性欲薄めの旦那様」と「子どもたちに囲まれ生活感溢れる自宅の一室」で「仕事で疲れている中」セックスする…のは、たしかに難しい気がしました。
また、作者がママ友たちに取材して色々な夫婦の姿の実態が語られますが、セックスレスでない家庭には別の悩みがある…(疲れているけど断れないとか、旦那さんの頻度に合わせられない)といった話は興味深かったです。
作中にもありましたが、親や友人が読むかも知れないこと、将来子供が読む可能性があることを考えると、実録系は難しいのでしょうね…。
創作漫画だと『夫婦の体温 』(幸田育子)、『情熱のアレ』(花津ハナヨ)、『はてなの花』(河原遥)などあるようです。
…狙ったわけでもないのに、全部集英社だ…。
『ふれなばおちん』(小田ゆうあ)はセックスレスがテーマではないけれど、家庭を第一に過ごしてきた主婦が夫以外の人に恋をしたのをきっかけに変化していく漫画。まだ1巻しか読めてないのですが気になります。
(浮気や不倫ともとれる話なので好みは分かれると思います…)
男性は産後のセックスレスについて、どう考えている?
漫画ではありませんが、『新しいパパの教科書』という本を読みました。
読みやすいし、重要なポイントは押さえてあるなと思います。沢山のお父さん、お母さんの意見を元にして丁寧に作られた本だなという印象。
●末尾の感想文:『新しいパパの教科書』~夫への不満の棚卸に使おう~
この中に妊娠中や出産後のセックスの話ってあるかな?と思って読んでいたら、Q&Aの部分でちょっとだけ触れられていました。
パパ飲み会で盛り上がるネタ…。そうなのか。男の人にとっても相談しにくい問題なのは変わらないようですね。
夫婦の数だけ工夫がある問題、という言葉には納得。
男性視点で産後を描いたコミックエッセイ『産後が始まった!』(渡辺大地)。産後のセックスレスについて触れています。
●末尾の感想文:『産後が始まった!』感想~父親になった男の、素直な疑問と勘違い~
この漫画で描かれる夫は、どちらかといえばセックスに積極的ではありません。
正直に言えば(育児が大変で)夫婦ともに「めんどうくさい」と思っていたようです。
「セックスしてもいいよっていっても…どう誘えばいいんだ?」という、男性側の迷いには共感できました。
まとめ
出産直後はホルモンのバランスの変化、切開した会陰の違和感、生まれた子どもの面倒をみる疲れ、慢性的な睡眠不足…。
セックス自体が億劫になったり恐怖感を感じたり、夫が嫌になったりする理由は沢山あります。
自分は、イヤな時は無理にセックスすることはないと思います。
ただ、妊娠中や産後、女性の身体や心が変化することについて、夫に知ってもらう必要はあると感じます。
可能であれば、妊娠がわかった時点で一緒に勉強するなり、説明するなりしておいた方がいいように思います。
うちの旦那さんは(私が妊娠・出産・育児漫画をせっせと買うこともあり)、妊娠・出産について勉強していた方だと思いますが、立会出産中に目にするまで出産中の会陰切開は知らなかったそうです。
私自身、妊娠中は「産後は身体が元通りになるから(セックスや夫婦関係も含めて)全部、元通り~」…などと思い込んでました。出産経験がない女性(妊婦)でもこんな感覚です。
男性が産後の女性の身体について、新生児を育てる生活の大変さについて、最初から知っていたり、察することが出来るとは思えません。
(※画像は『マンガで読む 育児のお悩み解決BOOK』(フクチマミ)
男性が、産後に妊娠前と同じようにセックスを誘うのは自然だと思います。出産前に夫婦で話し合う、両親学級を受講するなどして、女性の体の変化(疲れ、衰え)について夫に知ってもらうことが大切だと思います。
また、夫婦でセックスについて話すことは大切だと思います。
挿入に拘らず、オーラルでもボディタッチでもスキンシップでも、お互いがセックスについて納得した状態を作るのは大事だと思いました。
なんだかまとまりの悪い文章になってしまいましたが、産後クライシスについてはこれからも色々考えていきたいなあ、と思います。
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4/15追記
妊娠中、産後のセックスについてはこの本が分かりやすかったです。
セックスの話だけでなく、妊娠に関する様々な情報が解説されています。おすすめ。
良い本だったので感想書きました~
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【書評】産婦人科医ママの妊娠・出産パーフェクトBOOK(宋美玄)~妊婦の不安を解消する本~
産婦人科医であり一児の母でもある宋美玄さんによる妊娠・出産の解説書です。 妊娠中の女性のよくある疑問について、感情論でなく、一方的に押し付けるわけでもなく、根拠となる文献を提示しながら論理的に解説して ...