タイトルに「43歳のゆるすぎる妊娠生活」と書きましたが、43歳・高齢出産!…と思って読み始めると、拍子抜けするくらい、ゆるっゆるの妊娠生活が描かれています。
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【内容紹介】
生活の大半は仕事…という“ヒゲ度の高い”人生を歩んできた漫画家・ひうらさとるが齢43にして突然の妊娠発覚!!
超★高齢出産を働きながらどう乗り越えてきたのか!?
【感想】
ひうらさとるさんは1966年生まれ、41歳の時(2007年9月)に結婚。43歳の時(2009年9月)に出産。
綾瀬はるか主演でドラマ化・映画化された『ホタルのヒカリ』が代表作で、来年、漫画家生活30周年です。
43才での妊娠発覚。
描かれるエピソードの基本は笑い。9割くらい笑えるエピソードで構成されています。
1割の真面目な話を読むと、作者の本心が垣間見える気がします。
総合的には好きな漫画ですが、先に悪い点や気になる点を上げます。
妊娠中の作者の行動の「ゆるさ」「笑い」を不快に思う人もいると思います。
妊娠時に苦労した話を読んで共感したい場合はおススメしません。
また、ひうらさんは成功したキャリアウーマンだと思います。
金銭感覚がリッチすぎて、自分とは違う…と感じました。
私には「(40代で年収1千万以上・既婚子なしの知り合いがいるので)あの人が妊娠したらこんな感じかもな…」と思えましたが、感覚の違いについていけない人は不快になるかと思います。
作者が「高齢出産だから医学の力も科学の力も借りて安全確実に!」…という決意をし、無痛分娩を選んだり…、というのはいいと思うのです。
(※無痛分娩は、大きめの病院しかやっていない+麻酔など施術費用がかかる=普通分娩より出産費用が高くなります。)
でも、(作者はギャグのつもりでしょうが)『ホタルのヒカリ』のバブルで手にしたお金があとちょっとある…などと書かれるのは…ちょっと…。
40才過ぎまでガツガツと第一線で働いたのであれば手元にお金はあるでしょうし、自分で働いて稼いだ金だから好きに使っていいと思うのですが、『ホタルのヒカリ』も好きな分、うーん…となってしまいました。作品が運んだお金でしょうけれど、その言葉はいらなかったんじゃないのかな…。
この辺のエピソードが最初に描かれていることもあり、正直「あちゃ…失敗だったか…」と思いました。
でも、読み進めていくうちにだんだんと面白く感じました。
1割の真面目な話に共感を覚えたからです。
以下は重要なネタバレ含みます。
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ひうらさんは漫画家を職業として生きていくこと、結婚すること、という2つの夢を叶えて達成感もあり「42歳で妊娠とか…ないないない」と思っていたそうです。
40歳で結婚した後、2回、流産を経験。
特に2回目はひどく落ち込んでしまい、不妊治療も行わずに過ごしていたら、3回目の妊娠。
時期的には『ホタルのヒカリ』が最終回間近。
妊娠している自分の体調と仕事との両立に苦しんだり、「子供を授かって親になる未来の自分」の姿が見えるせいで、「ひとりで頑張って漫画を描いてきた今までの自分」の存在が否定されているように感じて苦しくなったり。
『ホタルのヒカリ』は良い意味で期待を裏切る終わり方で、読み終わっての満足度が高い作品でした。
真面目な話は全11話のうち2話だけです(1つが上に感想を書いた仕事と妊婦の両立について、もう1つが不妊治療・流産・羊水検査についての話です)。
あとはほとんどが笑いで構成されています。
高齢出産だから「ぶじに産めればそれでいい」と、お金や科学や医学の力を借りながら、出産へと突き進んでいきます。
食事制限もなく、ゆるゆると過ごす日々…。
ひうらさん、本当に食べ過ぎだと思うんですよ…。自由すぎて驚くくらい…。
「最終的に何Kg増えたんだろ…」と心配しちゃうくらい、充実した食事内容でございました…。
妊婦なら控えるであろう行動や、深刻になりそうなテーマをできるだけ笑いやユーモアを交えて描いているの描いているのは、この本を手にとる読者へのメッセージだと思います。真面目な話を描こうと思ったら、いくらでも描けると思うんです。
女性は妊娠した途端に、真面目な話や厳しい話、将来への不安、過去の自分への不満にぶち当たるからかと思います。
私は34歳で出産しましたが、病院の先生やら親やら色々な人から「ああした方が」「こうした方が」と言われ、我慢することが増え。
まだ生まれてもいない子供の年齢を計算しては将来を悲観し、再就職しやすい職種を選べばよかったとか、もう10年早く産めば…と計画力のない?自分を恨み。
子供ができて、ものすごーく幸せなのですけど、幸せだからこそ、今まで気にならなかった色々なことについて悩んだりしてました。
私だけでなく、妊娠し出産を控えている妊婦さんは、みんな色々考えたり、悩んだり、怖かったりするでしょう。
実際に43歳で出産した作者が「大丈夫大丈夫、私でも産めたんだから!」と明るく描くことで、読んだ後に「あれ、私、ちょっと考えすぎだったかな…。もそっと楽に構えていいか~」…と肩の力を抜くことができるのかな、と思います。
あと、子供がいないときに、たくさん美味しいものを食べて遊んで思い残すことがないくらい色々やっといた方がいいよ~というメッセージでもあるかもしれない。
子供が生まれると自分の時間がなくなるので。
子供を育てること自体は楽しいのですが、妊娠したとき想像した以上に、自分の時間がなくなりました。はい。
『ヒゲの妊婦(43)』というタイトルにしているのも、妊娠していた頃のひうらさんと近い年齢の人たちの目に届きやすいように、比較してちょっとでも安心してもらえるように、という配慮ではないかしら。
この作品の前に描いたエッセイ漫画とタイトルを合わせる為でもあると思いますが、わかりやすくて良いタイトルだと思います。
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作中では、ひうらさんが着ていたマタニティ服についてや、役に立った育児グッズなどについても描かれています。
私は妊娠中に読んでいて、産後、マリエン薬局のハーブティ(授乳・乳腺炎対策ブレンド)を買いました(おっぱいの出がよくなり、乳腺炎を予防する効果があります)。200gのパックを1袋。
出産後、おっぱいが出なくて困って、慌てて買いました。ドイツからの直送になる為、到着までに10日くらいはかかったと思います。
2週間くらい飲み続けていたら効果があり、おっぱいの出がよくなりました。
2014/11/9追記
この感想を書いた当時はハーブティのお蔭だと思っていましたが、産後、根拠となるデータはないことを知りました(タンポポコーヒーなども、そうです)。リラックス効果はあると思います。
7月に2人目を妊娠・出産しました。今回は何もしてませんが、トラブルなしです。おっぱいが出ない時の一番の特効薬は「しっかり寝る・休む」ことだと思います。
『マンガで読む 育児のお悩み解決BOOK』や、産婦人科医によるTwitter、ブログでの意見を総合すると「産後2カ月くらいはおっぱいが安定しない」ようです。
おっぱいに関する悩みは、産婦人科医・戸田千先生のブログがおススメです。
●やわらかな風の吹く場所に:母乳育児を応援
●戸田千先生のTwitter
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育児漫画を描いている漫画家さんが複数登場して驚きました。
『あかちゃんのドレイ』の大久保ヒロミさん。
『おかあさんの扉』の伊藤理佐さん。
『ひねもす暦』のおかざき真里さん。(巻末には、おかざきさんとの対談がついています)
交友関係広い…。どうでもいいけれど、おかざきさん以外は全員子どもが娘さんだな…。
(大久保さんは娘2人、伊藤さんは娘1人、おかざきさんは娘・息子・娘の3人です)
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余談です。
私は小学生の頃になかよしを購読していたのですが、『レピッシュ』読んでました…。『ぽーきゅぱいん』も。
小学2~3年生の頃に感じた”すごーく都会に住んでいる、すごーく年上のおしゃれな人”というイメージがあります。
(あさぎり夕先生が看板作家で『あこがれ冒険者』や『なないろマジック』を連載していた頃…)
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2019/1/20追記:
ひうらさんは現在、『ホタルノヒカリ BABY』を連載中です。気になるんだけど追えてない~(汗)