私のブログは育児漫画を読みたい人、育児漫画を描いている人、育児漫画を作っている人が集まりやすいと思います。
今後の注意喚起も含めて「こういう出来事があった」ことを記しておきます。
以前、育児漫画の新刊情報としてご案内した2月3日発売予定の『アホ男子かるた』(甘井ネコ)。
2012年頃、Twitterで盛り上がった「#アホ男子母死亡カルタ」をネタに漫画を描いた、という触れ込みの作品です。
体験エッセイ漫画ではないけれど、育児をテーマにした作品だし男児漫画は少ないし…と思って、このブログでも紹介しました。
本日、私が定期的に読むブログ「スズコ、考える」にてこの書籍について言及されておりました。
●「アホ男子かるた」出版の件
結論からいうと、この本で扱われている「かるた」=tweet の内容は
発言者の許可をとってない上に、出版社の企画がオリジナルであることを偽装した(元となったtweet(#アホ男子母死亡カルタ)を無いものとしようとした)
…という、悪質な企画であったことが分かりました。
その為、紹介している部分は削除しました。
私は2012年の頃の出来事を知らなかった為、完璧に出版社の作意に嵌まっておりました…。
「アホ男子かるた」と「アホ男子死亡かるた」も同一のものだと思い込んでいましたし、いずれにしても作者である甘井ネコさんが考案者なのだと思っていました。
(ちょっと前にTwitterで盛り上がった「育児ことわざ」の発案者が漫画家の瀧波ゆかりさんであるように。)
ここ数日の経緯はNAVERまとめの記事が分かりやすいです。
●【パクリ?】#アホ男子かるた「ツイート無断使用」書籍発売騒動まとめ【未解決】
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一連の騒動を目にしていて、モヤモヤします。
単純な想像ですが、編集者がTogetterのまとめ主やスズコさんに連絡し、彼女らの協力を元に関係者の承諾をとっていれば、ヒットしたかもしれない。
名前(Twitterアカウント)の掲載だけでも嬉しい人は多いと思うけれど、45作という話だったので、謝礼として献本してもいいかもしれない。
相手は主婦クラスタ。特定の層にマッチした広告費と割り切れば、十分な効果が出るでしょう。
人によっては、献本とは別に買ってくれるかもしれません。
勿論、著作権料などの金銭を要求する人もいるかも知れません。
その場合は交渉が必要でしょうが、提示した条件で納得いただけない場合は掲載しなければいいという話で。
小学生男児の育児漫画は少ないし、まっとうに作ればそこそこ売れたと思うんですよね。
(無名作家の育児漫画の初版部数って1万部いかない気がするので、私がいう「売れた」=2~3万部のレベルですが…)
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仮にですよ。
ふと、編集者が「本が売れるように、作者がオリジナルで作ったことにしよう」と思ったとします。
そこまではいい。人間、魔が差すことはある。
でも、ネットにはログが残っています。
そして、ネットは集合知です。
過去に、漫画家やイラストレーターのトレパク騒ぎがどれだけあったことでしょう…(他の人の絵や写真を紙に写す行為)。
最近でも昆虫写真の件があった。
過去に、小説家の盗作騒ぎがどれだけ見つかったことでしょう…。
最近でも星海社の新人作家の件があった。
誰かが気付く。そして、気付いてから真実が暴かれるのは一瞬。
それが集合知のすごさです。
出版業に携わる人間なのに、上に上げたような騒動を知らないのだろうか…?
知っていても、自分は大丈夫だと思ったのだろうか。
嘘を重ねれば、何とかなると思ったのか。
編集者に子供がいるのかどうか、それはわかりません。
でも。
子供をテーマにした漫画だよ?
子供達に胸を張れない作品を作って売って、どうするの?
子供を傷つけたり、苦しめるかも知れない作品を作ってどうするの?
仮に出版された場合、1番の被害を受けるのは作者のお子さんたちな気がします。
長男は中学2年生。
家にあった母親が描いた本を目にして、Googleなどで題名を検索したら。amazonのレビューを見たら。
「母親がこんなことを…」と思うでしょう。編集者や出版社ではなく、母親が。
編集者は、それで良かったのでしょうか。
Twitterで参加していた親も嫌な気持ちになり、作者も作者の子も嫌な気持ちになる。
何も知らずに買って「おもしろかった!」と思った読者も、ネットで調べると「うわあ…」て気持ちになる。
これ、誰のための本(商品)なのかな。
編集者は、誰のために、何のためにこの本を作ったのだろう。
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編集者の言葉を鵜呑みにしていた作者に対しても、思うところはあります。
私自身も騙された経験は何度かあります。騙されて失ったもの(主にお金ですが)もあります。
騙された人間に追い打ちをかけるのは人としてどうかと思います。
作者はTwitterプロフィールに『我が家のアホ男子がモデルの漫画』と書いています。
一般に、漫画でも書籍でも、イラスト部分を担当した人は(絵)(漫画)、アイデア・ストーリー部分を担当した人は(原案)(作)と分けた表記がなされます。
個人的に、漫画『キャンディキャンディ』著作権裁判の漫画家・いがらしゆみこを思い出しました。
(『キャンディキャンディ』は名作だと思うけれど、小さい頃に好きだった作品に泥を塗られたのでモヤモヤします)
自分の家族をモデルにして漫画を描いているから「この表現は許される」と思ったのか。
それとも編集者が良いといったから、なのか。
「からくり」を知ってから出版社のサイトを見ると「読者を騙そうとしていた」ことは伝わってきます。
作者が発案者であるように物語が作られています。
一連の発言を読むと「いっかいの主婦だから~」等、言葉の端々で「逃げ道」を作っているように見えるので、編集者の嘘に気付いていたように思うのです。
今回の件、作者は「どうなっても、自分の作品!」…と、腹を決めていたのかしら。
ペンネームとはいえ自分の名前をつけている。そこに決意はあったのかなあ。
夢を叶えたい一心で、自分の目に、心に蓋をしていないかなあ。
自分に嘘をついて、子供にも嘘をついても、それでも、単行本が出れば良かったのかなあ。
(その決心があるんだったら、それはそれで悪くないと思う。自分は選ばない道ですが。)
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出版不況だし、知名度のない人の漫画が書籍化される機会も減っていると感じます。
そんな時期だからこそ、「書籍化」の声がかかると喜び舞い上がってしまった作者の気持ちも分かる。
法律や契約について分からないから、「大丈夫」という編集者の言葉を鵜呑みにしちゃう気持ちも分かる。
でも、育児漫画って、作家1人だけの話で終わらない。
嫌な思いをするのは、自分の子供だったり、夫だったり、家族だったりする。
どんなに優秀な編集者でも、医者でも、学者でも、あなたの子供を守ってくれないよ。
自分の子供を守れるのは自分だけだよ。
自分が「知らない」ことに開き直り、「知ろうとしない」「考えようとしない」ことで傷つくのは、自分の1番大事な人たちです。
その危険性は頭になかったのかな?
編集者もダメだと思うけれど、ほわわーんとした疑念を放置していた作者にも責任はあると思う。
編集や出版社を責めたい気持ちはあっても、作者としての責任から逃げちゃダメだ。
対価をもらって描くプロの仕事のはずなんだけど、プロ意識を感じないなあ。
そんな風に思いました。
今日の午後、出版社から報告があるそうなのでそれを待ちたいと思います。
(1/30追記)
結局出版は無期延期となったようです。
甘井ネコさんはTwitter、HP、ブログを閉鎖されました。