高瀬志帆さんの育児漫画は『オットと育児。』に続いて2冊目です。
題名を見た時点では、作者が育児をしている人にインタビューして描いた漫画を想像していました。
読んでみたら想像とは全然違ったけれど、面白かったし新鮮に感じました。
題名で損しているな、と思う本(雑誌掲載時の『イケナイ家族』が表紙にあっても微妙なので、別案が浮かばないんですが…)。
※amazon、楽天ともにレビューなし。
【内容紹介】
エレガンスイブで好評連載中の「イケナイ家族(ファミリー)」がついに単行本化!
超話題の人気コミック「おとりよせ王子 飯田好実」の高瀬志帆が描く本当にものすごい育児法とは?
【感想】
うちは娘なので共感する場面は少なかったのですが、男の子を持つ親ならより楽しめるような気がします。
基本、笑える内容です。息子を持つお母さんが読んだら共感できる「子供の成長が嬉しいけど寂しい感じ」も描かれています。
作者の高瀬志帆さん(アラフォー)、夫のケイゴさん、長男・こうすけくん(2003年生まれ)、長女・かなちゃん(2005年生まれ)の4人家族。
漫画は息子・こうすけくんに関わる話が多くを占め、娘・かなちゃんに関わる話は1割程度?少なめな雰囲気です。
単行本ではこうすけくんが保育所の年長~1年生の終わりくらいまでが描かれています。このくらいの男の子が描かれた育児漫画は珍しいかも。
こうすけくんの話は、大きく3つに分けられます。
1)戦隊やライダーの話
2)習い事(空手)の話
3)生き物(虫やザリガニ)の話
保育所の年長~小学校低学年男子の脳内ってこれらで占められているのかしら…。
感心したのは「(嫌々ながら)子供に付き合ってあげる」という感じではなく、親も一緒に楽しんでいるところ。
息子と両親と戦隊・ライダーの話
私の旦那さんはライダーも戦隊ものも大好きで、ずっと見続けています。
私も一緒に見たりしていたので、なんとなくは分かります。フォーゼは全話見ましたが、娘を産んでからは忙しいので見れてません。
親がライダーと戦隊ものにハマる
こうすけくんが戦隊ものやライダーを見始めたのは4歳の頃。
嫌々ながらつきあっていた時、『仮面ライダー電王』が始まる(電車+タイムスリップだから電王。佐藤健くんが主人公でした)。
そして本気で見るようになる…。電王おもしろかったよね…。
それにしても、子供と一緒に見ていて両親ともにはまり、平成ライダーを全部見る…てのはすごいですな。
ヒーローものとファッション
息子とヒーローものについては、二ノ宮知子さんの『おにぎり通信』でも描かれていましたが、どちらかといえば玩具中心。
今作は「ヒーローものの服」に関する記述が深いと感じました。
息子さんが着る服について「うちはだんぜんなりきり派!」と語る作者。
子供が生まれた頃はおしゃれなブランド服などを選んでいたけれど、今は戦隊やライダーのなりきり服を着た息子を見て「イケてる!」と喜んでいる。
ママ友から「お子さんに付き合ってあげてえらいわ~」と褒められるも、「子供に合わせている」のではなく「似合うから着せている」という感覚の違いに驚いたり。
最近の子供服には「なりきり服」なんてあるんですね。コスプレ風のパジャマがあることは知っていたけれど、普段着にできるものがあるとは知りませんでした。
仮面ライダー鎧武のなりきり服を探してみました。スマホでARまで出るとは…。すごいね、バンダイ。
1枚2990円ってところでした。
結構なお値段…とも思うけれど、ブランドがついている服はこのくらいするしなあ。
鎧武のデザインはフルーツがモチーフなので笑えて仕方ないんですが(脚本が虚淵さんなのでちら見してますが、まだ盛り上がりが足りない感じ)、世の子供さんは喜んでみているのだろうか…。
ライダーは秋スタートになってから売上が伸びたらしいですね(クリスマスプレゼント需要。戦隊ものは春でこどもの日商戦…)。
なりきり服を喜んで着ていた息子さんも、小学校にあがった頃から変化が。
着る頻度が減って来て、戦隊やライダーもそろそろ卒業かな…?と思える時期が来る。
なりきり服のサイズは120㎝まで。小学校に上がるとみんな着なくなるそうです。…まあ、それはそうじゃないかな…。
うちの甥は小5で、テレビ朝日の朝の番組(戦隊~ライダー、そのあとトリコとワンピース)は見ているそうですが、1~3年生の方が「まだ戦隊とか見てんの?だせー」…てもんじゃないでしょうか。
その後はベイブレードとかポケモンにハマったらしいですが、この辺のルートは甥っ子と変わらない印象…。
(甥っ子の場合はダンボール戦機とか爆丸にも手を出していましたけれど、小5になってからは3DSのゲームで落ち着いている感じ。)
男の子の流行モノって、お金かかりそうだなあ…。
娘は娘でお金がかかるんでしょうけれど、男児みたくコロコロ変わらない印象。
まあ、知り合いのお母さんには「プリキュアにはまったら変わらない」と言われていますが…こ、こわい…。
卒園式での寸劇
この漫画で一番好きなエピソード。
卒園式の後に行われる寸劇で『仮面ライダーW』の手作りコスプレをして寸劇をした話。
元々、女児のお父さんが主体となって企画した寸劇。
『プリキュア』など女児向けは力が入っていたけれど、男児向けの部分が適当だったので、高瀬さん夫婦が主体となって男児の部分を盛り上げた…という。立派だー。
手作りのコスプレ衣装を工夫して作り上げ、夫婦で変身まで再現!
寸劇部分は写真が入っていました。大人が子供向けのお面をつけているのが笑えますが、衣装はよくできているな~と感心しました。
自分が作ったりするのが苦手な人間なので、人が物を作る話はとても好きなのです。
ビニールテープとか西友の安い服とか紙とかを駆使して作っているのもよかった。
どうでもいい話ですが、女児向けの方はコスプレが『フレッシュ!プリキュア』で、ダンスは『ハートキャッチプリキュア』でした。
卒園式は3月、プリキュアは2月スタートだから、ダンスだけ新作にしたのかな。短期間であのダンスをマスターしたのであれば、女児の父母もすごい。
ハートキャッチのダンスはかわいいですよね~。…あれをお父さんたちが踊ったのか。すごいな。熱いわ。
(本当にどうでもいい指摘…。すみません、私はプリキュアも好き…)
息子と母と空手の話
エネルギーがあり余っている息子が習い事として「空手」を始めた話。
空手って、小学生から出来るんですね。礼儀も正しくなりそう。
空手を習い始めてから、なんだか不穏なことを言うようになった息子さん(笑)。まあ、本気の発言ではないでしょうけれど。おもしろいわー。
そして、息子に付き合って空手を始める高瀬さん。楽しそうだなあ。
息子さんが「帯」の概念を勘違いしてしまっていたとき、高瀬さんが「大人と子供の違い」を教える場面があり、これは「お母さんも空手をやっている」方が息子さんは納得できそうだなあ、と思ったり。
小さい時期から大会にでるのも良い経験ですよね。強い人は沢山いるけれど、試合で勝てるようになるとやっぱり楽しいし。
カツヤマケイコさんの『ごんたイズム』の中では、息子さんがブラジリアン柔術を習っていて、教室のお兄ちゃんたちに「違い」を教えられる場面(57回)があります。
今の世の中、ガチで喧嘩をさせるのは難しいと思うけれど、こういった経験を通じて学ぶことは多いと思うし、武道を習わせるのはいいかもな~…などと思いながら読みました。
息子と父と生き物の話
…子供が男の子だったら避けて通れない道なのでしょう…。嫌々ながらも付き合っている高瀬さんはえらいと思います…。
私は虫自体、苦手なのですが、狭いカゴで飼うと起きてほしくないことが起きることがあるからイヤなのですよね…(起きるのは面倒をみない自分のせいですが。哺乳類を飼う方が気持ち的に楽…)。
この漫画の中でも、飼っているザリガニ(大)がザリガニ(小)を食べてしまった、というエピソードがあって。
カゴが足りないからと、ほんの1日だけ2匹にしたら、起こってしまった事件。
この出来事が教訓になって、息子さんは生き物をむやみに飼おうとせず餌をきちんとあげるようになった、とのことなので、色々学べたのは良かったなあ…。
私は自分で死なせた経験があるので、出来れば面倒を見たくないけれど、回避できないんだろうな…。子供が大きくなったらどうしようかな…。
でもって。虫などの生き物を育てるのに息子さんも夢中だけれど、旦那さんの方が夢中だという話。
生き物関係は旦那さんに任せてしまうのも手か…。でも自分の家に虫とかザリガニがいると思うとぞっとしてしまう…(慣れかしら…?)
気になるところ
全体として、漫画はおもしろいです。同じくらいの年齢の息子がいたらより楽しめるのではないか、と思います。
この本を読み終わった時に「なんか物足りないな~」…と思って色々と掘り下げた結論として、気になるところを挙げておきます。
私が気になったのは2点。
息子さんのエピソードは楽しめましたが、娘さんのエピソードはちょっと笑えませんでした…(汗)。
ちょっと怖くなって笑えなかった。
娘さんの突飛な行動が自分の子供の頃を思い出させるから、余計に苦手意識が沸くのかも知れません(同族嫌悪というやつです)。
そこはちょっと残念でしたが、気にならない人は全く気にならない話だと思います。
もう1点は、絵の持つエネルギーが少ないと感じました。
絵については主観的なものなので「え?かわいいじゃん」…という人は問題ないかと思います。
高望みしすぎかな~…とも思うのですが、絵だけを見てかわいい、と思ったりきゅんとしたりはしなくて。
正直、小学生男子の姿を絵で描いて「かわいい」と思わせるのは難しいとも思いますし、それなら乳幼児を描いた漫画を読めばいいのでは?…とも思います。
カツヤマケイコさんが『ごんたイズム』(44回)の中で、実際の息子の等身で描いた絵に対して「かわいくないのでいつものサイズに」…とコメントしているのを見ると、「自分の子供に似ている」「その年齢に見える」けれど「かわいく見せる」ことについて、描き手の皆さん試行錯誤されているんでしょう。
変な話ですが、今回、感想を書いていて育児漫画は意外と「萌え漫画」と近い要素があるんじゃなかろうか…と思いました。
エピソードより、絵の持つ力や表現による差が「おもしろさ」(=高評価)に繋がっているような気がします。