2011年~2013年発売

『はるまき日記』(瀧波ユカリ)感想~笑って笑って考えさせる、名作育児エッセイ~

投稿日:2013年9月30日 更新日:

鳥居みゆき主演でドラマ化もされた『臨死!! 江古田ちゃん』を描いている瀧波ゆかりさんの育児日記(エッセイ)です。

文字を太くして書きますが、この本、育児漫画ではありません
内容紹介にもあるように4コマ漫画が収録されていますが、まえがき、あとがきとしてちょっとだけです(6Pくらい?前半部分はamazonで読めます)。

育児漫画ではないのですが育児日記として共感でき、自分が好きな本なので紹介します。
文章もテンポがよくて長すぎず、読みやすいと思います。

amazonで試読できます

amazon ★★★(3.2)
楽天 ★★★★(4.40)

【内容紹介】

瀧波ユカリはじめてのエッセイ集。
2010年9月に生まれた娘、名付けて「はるまき」が、寝たきり乳児から走り回り乳幼児になるまでを描いた育児日記には、子育てものに欠かせない「かわいい?」や「共感しちゃう~!」は存在しません。
その代わり、乳児を抱える新米夫婦の大いなる妄想や現実逃避、大人のホンネが満載! スリル満点のおむつ替え、新しい授乳法「おっパブ」の開発、乳児に向かって時には歌い踊り、時には淡々と説諭する夫。飲む出す吐くしゃぶる寝る泣くを繰り返すはるまきの、突然やってきた赤子の宇宙人感や赤ちゃん特有のむっちり感はたまりません。
はるまきの成長とともにつづった爆笑の育児エンタメ・ノンフィクション! 書き下ろしの4コマ漫画も収録してます。

【感想】

作者の瀧波ゆかりさんは1980年生まれ、2007年に結婚。
2010年9月に30才で娘・はるまきちゃんを出産。
家族は瀧波さん、夫(1978年生まれ)、はるまきちゃんの3人。

『はるまき日記』には、はるまきちゃん生後2ヶ月の2010年11月から1才2ヶ月となる2011年11月までの育児日記が収録されています。

サブタイトルに「偏愛的」とある通り、娘かわいい、娘かわいい、娘おもしろい、愛しい…と、作者の娘への愛情が爆発しております。
私も、子供を産んで「自分の子供ってこんなにかわいいのか…!」と衝撃を受けた人間なので、色々な言葉で娘さんの様子を表現できてすごいなあ、と感心します。

私が最初に『はるまき日記』を読んだのは娘が6ヶ月の頃です。
半分くらいが未知の世界で、こうなっていくのか〜と思いながら読みました。

今回再読したら、はるまきちゃんの成長と娘の成長が重なって、より面白く感じました。

電話をかける真似とか、クレジットカード好きなのは、赤ちゃんに共通した何かなのでしょうか?スマホいじる機会が多いから真似るのは分かるけど、クレジットカード好きはよくわからないなあ…(伊藤理佐さんの『おかあさんの扉』でも、電話かけたりカード集めたりしてましたが、うちの子もそうです。あと、海苔が好きなのもいっしょ…)。

歩き始めると、ハイハイしていた頃が思い出せない、という話も同意。
ハイハイも、寝返り打てずにずっと仰向けだった頃も思い出せない…。
ほんの1年前のことなのに。

『はるまき日記』は子どもの様子を表現する例えが作者独自のものでありながら、短い言葉で的を得ているから想像しやすく、笑いながらドンドン読めました。
挿絵がまたよくて、文章の邪魔をしない箸休めになります。

注意点として、性的な例えが結構多いです。

一例として授乳について赤子の舌使いがどうとか、吐き戻した母乳を白いものが…!と書いていたりします。

読んで「うわーーーーーーーーーーっ!!気持ち悪い!育児とセックスを繋げるなよ!」と思う人もいるはず。
作者の個性ともいえるのですが、「性的な話とつなげる必要ないのでは?」と思う人、下ネタが苦手な人は読まない方がいいと思います。

育児漫画は作者と読者(自分)が似ているかどうかで評価が異なるものですが、似てる・似てない以前に嫌悪感が先に立つ人もいると思う。

また、江古田ちゃんが好きな人の評価は低いようです。
私は江古田ちゃんが苦手だったので、逆に評価が高くなっていると思います。

作品の途中で3.11が発生して雰囲気がガラリと変わるので、1冊まるまる笑って読めるわけではありません。
これについては賛否両論かと思いますが、震災から2年半が過ぎた今読んでみて、私の評価は上がりました。

作者は冷静に淡々と文章を綴っていますが、3.11以降の日記は読んでいて胸が苦しくなります。

3月10日までは、楽しい育児日記でした。はるまきちゃんの成長を感じる行動やそれに対するツッコミが、一日1ネタみたいに入っていました。
11日以降は、日々の記録になり、客観的に俯瞰的に世の中の出来事が書かれています。

瀧波さんの文章がカリカリに渇いている感じで、書かれているままを読め、雑念を感じさせないのがすごい。

短い言葉に作者の色々な不安と、家族としてこれからの道を選んでいく様子が見えます。

福島原発の様子から今後を考えて一時的に実家がある札幌への移住を決意し、4月には部屋を見つけて引っ越しを手配したり。
実家でお風呂に浸かりながら、ちょっと冷静になって、実家に逃げるという自分の判断を肯定している場面は、なんだか切なくなりました。

当時、2年半前の私は妊娠もしておらず、会社から自宅までの20kmを歩いて帰りました。
その後、紙オムツがない、ミルクがない、水がないと報じられてたけど、不安はあれども切羽詰まる感覚はありませんでした。
原発のニュースを聞いても、なるようにしかならないし、という諦めもありました。

1歳の息子がいた男友達は会社から自宅に歩いて帰りながら色々考えて、「水が止まると息子のミルクが作れなくなる!」と、自動販売機で500mlペットボトルを買いながら帰ったと話していました。
2011年の夏にその話を聞いた私は「買占めよくないよー」…と思ってしまったのですが、子供がいる今は、友達の気持ちや判断もわかります。

大人だけなら我慢して時が過ぎるのを待てばいいけれど、子供がいたらそうはいきません。
震災後の日記を読みながら、今、同じことが起きたら自分はどうするだろう。どんな備えがあればいいだろう。
色々な想像をしながら読みました。

なんとなくですが、切羽詰った時の優先順位が見えてくるような気がしました。

3.11以降は淡々としているけれど、正直、暗い。
でも、はるまきちゃんのことが書かれている部分は明るくて、愛があって、希望が見える。

子供ってすごいなあ、と感じさせてくれる作品です。

===================

『はるまき日記』から離れますが。
3.11については、『おかあさんの扉』や『まんが親』でもちょっとだけ触れてましたが、作者自身の体験を描く育児漫画でもあまり描かれてないように思います。

現在進行形の問題でもあり、災害時に子供を抱えている状態で漫画を描くのも、作品として昇華させるのも難しいからかと思いますが、ないのも困るなー…と思うのです。

『はるまき日記』の評価が上がると書いたのも、震災を描いた育児モノが少ないと感じるからです。

3.11をテーマに「あの日、子どもとどう過ごしたか?」という体験談や防災に関してまとめた本『被災ママ812人が作った子連れ防災手帖』も、読んで色々考えさせられ、子供がいる家の備えを考えるのに良いです。
体験漫画が収録されてますし、挿絵も多くて読みやすいです。

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