幼児・赤ちゃんの描写がかわいい!と思う創作漫画のご紹介。
雑誌・LaLaで現在も連載中の作品です。
2013年12月時点で8巻まで。
amazon ★★★★★(4.5)
楽天 ★★★★★(4.60)
【内容紹介】
飛行機事故で両親を亡くした竜一と幼い弟の虎太郎。
二人は森ノ宮学園の理事長に引き取られる。
しかし、理事長の交換条件は何と「学園の保育室でベビーシッターをする事」!!
パワフルなベビーズ相手に竜一は――?
大人気!スクール「子育て」スクランブル★
【感想】
時計野はりさんが描く、ほのぼの家族の学園コメディです。
私は初連載作の『お兄ちゃんと一緒』が好きでその頃から時計野さんの漫画を読んでいます。
『学園ベビーシッターズ』は過去作に比べて時計野さんの長所が発揮されている印象です。元々、童話的なモチーフを描くのが上手いと思っていましたが、乳幼児と組み合わせたことで絵の魅力が一層増しています。
ストーリーもよくまとまっていて、笑える・泣ける・ぐっとくる。
LaLaの看板作家の一人となったのもうなずけます。
物語は1話で完結しているし「先の展開が気になる!!」…みたいな物語ではないので、ちょこちょこ読みでも満足できます。
1巻に6話+αが収録されています。
学園に設置された保育ルームが舞台のこの漫画には2つの軸があります。
1つは主人公・竜一を中心とした学園ラブコメディ。
もう1つは、保育ルームに関わる人たちによる家族の物語。
保育ルームは、子供や家族の物語を描く為の舞台装置としての役割を果たしており、それ以上でもそれ以下でもない感じ。例えば病児保育や時間外預かりの問題など、現実に近い話や問題が描かれることはありません。
かわいい子供たちの様子ををみて楽しむコメディです。
作者がお姉さんの子供(姪っ子)をみてヒントを得たり、読者の経験談などを元に物語を組み立てているせいか「あー、こういうことありそう…」と思える、かわいらしいエピソードが多いと思います。
例えば、パンダ柄の傘を買ってもらったけれど、雨でパンダさんが濡れるから使えない、とか。かわいい。
例えば、ベランダに出ている間に子供が窓のカギをかけた!(更に、子供がそのまま寝てしまった…)とか(笑えない)。
乳幼児はひたすらかわいい。
学生が織りなす恋愛や友情の様子は、読んでいて甘酸っぱい気分になります。男の子も女の子もかわいい。
…などと書きながら、自分が乳幼児だけでなく高校生も「子供」だと思って読んでいることに気付いてちょっとショック…。
登場キャラクターのこと
登場するキャラクタは3つの年齢層で分けられます。
主人公・竜一と同じ年齢の高1のみなさん。
竜一の弟・保育ルームに預けられた虎太郎(こたろう)と近い年齢の幼児(0歳~4歳くらい?)。
そして保育ルームの子供たちの父・母たち大人。
1番多く登場する幼児は虎太郎だと思いますが、とてもかわいいです。
片言でも話をするので2~3歳くらいかな?
エピソードが多いと感じるのが狼谷(かみたに)兄弟。
兄・隼(はやと)は竜一と同級生。弟・鷹は4歳くらいかな?よく話し、泣き、戦隊ものに憧れ。コロコロ興味が変わる感じが「男の子」て感じがします。かわいい。
おしゃまな女の子・奇凛ちゃん。
鷹くんと同じかちょっと下?3~4歳くらい?
双子の兄弟、拓馬くんと数馬くん。
拓馬くんは元気よくニコニコ笑っていることが多く、数馬くんは引っ込み思案でメソメソしていて。双子が登場すると画面が華やかになりますね~。お母さんもかわいくて好き。
最年少の美鳥ちゃん。おすわりとはいはいができる0歳児(8か月くらい?)。
歩けないこともあり登場頻度は低いのですが、台詞が無い分よく描けていると感心します。
抱っこされながら鷹くんのおもちゃを舐めていたり
だらーりとよだれをたらしていたり。
高校生まで紹介すると多いので割愛。
竜一を引き取った理事長は「悪い魔女」のような外見、かわいげのない口調など、とっつきにくいおばあさん。
外見も含めて、理事長はとても魅力的なキャラクターだと思います。
ところで、私が好きなキャラクターは執事・犀川さんです(※どうでもいい)。
大人は個性が強いけれど弱いところやダメなところも描いてあります。
そのせいか苦手と感じるキャラクターがいない(私はみんな好きです)のも、この作品の良いところです。
創作作品を見ていて「全員が善人とかっ!ないわ~!」…と思っちゃうタイプには合わないと思います。
大事な人がいない、ということ
全体としては笑わせる話が多いのですが、家族の大切さや有難さを思い出させるような話もあり、そのバランスが見事だと感じます。
主人公・竜一と虎太郎兄弟は、飛行機事故で両親を亡くしています。
そして、竜一をひきとった理事長は実の息子を亡くしています。
「大切な人がいなくなった後の生活」がどんなものなのか。
親を亡くした竜一と、子供を亡くした理事長。
残された子供と、残された親。
基本的には「かわいい子供たちを見てほのぼのして癒された~」…と思って読み終わるのですが、たまに香る喪失の匂いが物語をぐっと引き締めており、この漫画の特徴だとも思います。
子供たちを見てかわいいと思ったり笑ったりするだけでなく、泣けたり、きゅんとしたり、色々な感情が沸き起こるのが嬉しい。
日々の生活に疲れて「何も考えたくないわ~」…というときに、なんとなく読める手軽な作品なのに、読んだ後の満足感が高い、良作だと思います。
『赤ちゃんと僕』と似てる?
余談ですが。同世代(アラフォー)の読者がいちゃもんつけているように感じましたので。
結論ですが、8巻まで読むと「別の漫画」です。
でも、私も第一印象は「赤僕と似てる」と思いました。そういう印象を持ったこと自体は事実なので、その後の感想についても言及します。
ぱっと浮かんだ2作の「似てるキャラ」を上げると(前が本作、後が『赤ちゃんと僕』)
・主人公・竜一と拓也。
・弟・虎太郎と実。
・友人・狼谷くんと藤井くん。
・奇凛ちゃんと一加ちゃん。
私も話が進み、個々のキャラクターが掴めるまでは似ていると思っていました。主に見た目の印象が大きいと思いますが、読み進めると別人です。
巻数が進むとそれぞれのエピソードも増えてきて、2つの作品は全然似てないと分かります。
でも『赤ちゃんと僕』が好きだった人には『学園ベビーシッターズ』は楽しめると思えるのでお勧めです。
どちらが良いというのではありませんが、『赤ちゃんと僕』の方が勢いがあり笑いが多く弾けている印象、『学園ベビーシッターズ』は登場するキャラクターが多く話がバラエティに富んでいる印象です。
全体として、主人公に親がいるのかいないのか、の差は大きいと感じました。
私も『赤ちゃんと僕』が好きです。でも、私が高校生の頃の作品ですからね…(15年前)。
当時は本当に面白かったし珍しくもありましたが、ちょっと前に読み直してみたら、絵もネタも古いと感じました…(現在の既婚子持ちが、春実パパを評価したらDisることしか出来ない気がする…)。
1話は今でも泣ける自信あるけど!高校生の時、本屋で立ち読みしていてボロ泣きしたんですよね…(懐かしい)。
電子書籍のセールの時、赤僕を電子書籍で買い直してますが。
特に(セール対象になりやすい)1-3巻。私の頭の中の拓也と顔が違って驚きました。羅川さんの絵は連載中に変化したんだなあ…。
長々と思い出を語りましたが、結論で言えば、学園ベビーシッターズとは別物です。
最近の羅川さんの作品だったら『ましろのおと』がおもしろいです。
三味線マンガ。熱い。表現が巧み。