珍しく創作漫画です。
先日、「産婦人科医師・看護師を描いた漫画」をまとめたとき、『ブラックジャックによろしく』のことをすっかり忘れていたことに気付きまして。
主人公は研修医ですが、NICU(新生児集中治療室)は出産と関わるテーマなので紹介することにしました。
今まで見つけたWEBで読める妊娠・出産・育児漫画はこちら。
●WEBで読める妊娠・出産・育児漫画
ブラックジャックによろしく(佐藤秀峰)
『ブラックジャックによろしく』は全13巻を無料公開しています。
※記事を書いた当時。2019年1月時点では有料販売になっています
今回紹介するNICU(新生児集中治療室)編は3巻の途中~4巻に収録。
あらすじ
「NICU、そこでは正義と現実が命を巡ってせめぎあう。」
病院に戻ってきた斉藤を待ち受けていたのは、同僚の医師たちからの冷たい視線だった。そんな中、新生児集中治療室(NICU:別名ベビーER)での研修が始まる。
わずか900gで生まれた双子の未熟児を担当する斉藤が目にしたもの。
それは、不妊治療、未熟児医療、障害、追い詰められていく両親・・・新生児科医の日常は、医者と両親の苦悩と矛盾の日々だった。
社会的大反響を巻き起こす衝撃の医療ドラマ第3巻。
感想
NICUを舞台にした漫画なので仕方ありませんが、重い内容なので気分が良い時に読むことをお勧めします。
不妊症治療の末にようやく子どもを得た田辺夫妻。
ところが、妊娠28週目に緊急帝王切開で子どもを出産、900gで生まれた双子はNICUで育てられることに。
泣き崩れる妻。子どもの存在を認めないと断言する夫。
双子の子とも達、そして夫婦のこれからはどうなってしまうのか…?
主人公である研修医の斉藤英二郎を妻夫木聡さんが演じたドラマもヒットした『ブラックジャックによろしく』。
私は連載時に単行本で読んでいましたが、5巻以降(癌治療編や精神病棟編)の方が印象に残っていましす。当時は独身でしたし、仕事漬けの日々で結婚・出産願望もありませんでした。
自分に残っていたのは、作中に登場する田辺さん(夫であり、双子の父。上の画像のメガネの男性…)の発言が冷たすぎて、登場するたびに腹立たしかったという気持ちでした。
今回、約10年ぶりに読み直してみたら、当時と感想が違っていて。自分も妊娠・出産を経験したせいか、田辺さんの対応も分かるな…と思えました。
読みながら発する言葉にムカつくんですが。暗い気持ちになるのですが。それでも、分かる。
前に読んだ時は、奥さんの印象がほとんどなかった。
今回は、涙を流して子どもたちに謝る奥さんに涙せずにはいられず。読み終えるまでずっと泣きっぱなしでした。全然違うなあ…。
田辺夫妻に対する怒りのような感情も沸きますが、「私が同じ立場に立たされたら?」と思うと、何も言えないです。
特に4巻の、高砂先生と田辺さんの言い争いの場面は読んでいて痛い。
私も「完璧な子ども」なんて求めているつもりはない。子どもに幸せであってほしい、それだけなのだけれど。
幸せと完璧さは別のことなのに「完璧でなければ幸せになれない」と思い込んでしまいそうな危険性。田辺さんが真面目で優しい性格だったから、余計にその考えにとらわれて今うのかも知れません。
今回は田辺夫婦と自分とを重ね合わせて読みましたが、NICUで働く医師や看護師の人たちの様子や気持ちも描かれています。
単行本1冊半でこれだけの濃度はすごいと思いました。
赤ちゃんが産まれるって、当たり前のことではない。
そんなことに気付かせてくれる作品です。
NICUが描かれる漫画
私が知っている作品だけ挙げときます。2作品。
コウノドリ(鈴ノ木ユウ)
現在(2014年6月)発売中の雑誌「モーニング」掲載分がNICU編です。単行本だと6巻に収録されるのかな?
6/12(木)発売号ではNICU編2話。
緊急帝王切開・未熟児として生まれた子ども。父親、母親、それぞれの苦悩が描かれます。
『コウノドリ』の良いところは、登場するキャラクターとの間に一定の距離があり、希望も絶望も冷静に読めるところ。
『ブラックジャックによろしく』を読むと気持ちが落ちすぎるのですが、『コウノドリ』は淡々と受け入れられる。今回だと「NICUでお隣」と話す西山さんの存在が場を一転させてくれました。
本屋で購入してもいいのですが「モーニング」は電子書籍が便利です。
最初は試読用として1冊無料で読むことができ、会員登録したら月間500円で読めます。登録しない場合も数話が無料で読めます。
興味が沸いたらDLして試読するのも良いかと思います。
●Dモーニング(講談社)
NICU 命のものがたり(仙道ますみ)
上で紹介した2作は医師の視点で描かれた創作漫画ですが、こちらは患者の母の視点で絵がれた体験漫画です。
漫画家・仙道ますみさんによる、第2子・穂並ちゃんの出産~NICUでの治療体験を描いたコミックエッセイ。
私も購入して読みました。治療の様子や医師・看護師のこと、NICU内のこと、負担する費用や病院に持っていくもの等についても描かれており、わかりやすいと思います。
最初に読んだ時、特に序盤の作者の軽さや明るさが不思議に感じました。でも読み進めるうちに、その不自然なまでの明るさが身に染みてきて。穂並ちゃんに起こる奇跡に喜び、その後知らされる事実に打ちのめされました…。
絶版しているので電子書籍をお求めください。リンクはAmazon等ですが、全ての電子書籍ストアで配信している筈です。
以上、NICUについて描かれた漫画3作でした。
3作とも、出来が良いですが、読むと苦しくなるのもまた事実なので、余裕がある時に読むことをおススメします。