【感想】父親による育児漫画

『そせじ』(山野一)感想~父親目線のシュールな双子育児漫画~

投稿日:2014年8月22日 更新日:

山野一さんによる双子育児漫画です。
双子の育児漫画」はいくつかありますが、男性漫画家さんによる、父親目線の育児漫画はこれが初めてじゃないかしら。

双子の娘・ミミ子とハナ子(4歳~5歳くらい)、アル中でちょっと変なお父さん(作者)と、毒舌で鋭いツッコミを繰り出すお母さん。
個性豊かな4人家族のちょっと変わった日常を描いた漫画です。

『私たちは繁殖している』(内田春菊)と同様、作中に”フィクション”表記があります。
”実生活をモデルにしているけれど、描かれている出来事、全てが実話ではない”ことを念頭に置いて読んで頂ければ、と思います。

オール描き下ろし、144ページで390円。この質とボリュームでこの価格は破格です。
販売はKindleのみです。KindleUnlimited対象。

amazon ★★★★★(4.8) ※レビュー17件

【内容紹介】

「世の中に双子というものがいるのは一応知ってましたが、自分の元に生まれるなどとは夢にも思ってませんでした…」(山野一)
双子の女の子、ハナ子&ミミ子と元・鬼畜系漫画家の父親+毒舌母さんが繰り広げる波瀾万丈な日々。

山野一が自身の体験をもとに描き下ろした、シュールでハッピーな新型育児コミック。

【感想】

私は山野一さんの過去作を読んだことなく、今回初めて読みましたが、作家の色がはっきりした漫画だと思いました。

育児漫画というより「山野家の記録」と表現した方が正確かも知れません。

育児漫画では子どもが立った、歩いた、子ども服が小さくなった、言葉を覚えた…等々、「子育てあるある話」が描かれることが多いです。
この漫画で描かれるのは山野家の日常。でも他の家から見るとちょっと変わってると感じるような話。

例えば、5歳5か月の双子がしげる先生とかずお先生の漫画を読むのを見て「じろう先生も読ませるか…」と考えるお父さん。
素晴らしいラインナップだな…!胸熱…!!

漫画として面白くて楽しめる上に、全編を通して読むと作者の深い愛情といいますか、家族に向ける優しい眼差しを感じました。

後述しますが、私は絵や漫画自体の技術力の高さに魅せられました。
コマの端々、隅々まで読むと色々細かい仕込みがあって楽しいです。好き。
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育児をしていない独身の方でも、育児中の方でも楽しめる作品だと思います。
反面、人を選ぶ作品だとも思いますので、購入前にKindleの「無料サンプルを送信」で1話を試読することをお勧めします。

例えば、この漫画に描かれるお父さんは嘘つきです。
お父さんは娘2人に、今放映しているかのように、初期の『ゲゲゲの鬼太郎』のDVDを見せる…という描写があります。
これに限らず、作品の中で作者=お父さんは双子に対して、色々な嘘をつきます。
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それを見て「面白い親だな~」と思うか「親としてありえない」「娘がかわいそう」と思うか?
試読部分を読んで「ありえない」「かわいそう」と感じたのであれば、購入して読むと不快になると思います。

作者のプロフィール

作者・山野一さんは1961年生まれ(52~53歳)。
代表作は『四丁目の夕日』。

1990年頃から、当時結婚していた漫画家・ねこぢるさんの作品に裏方として参加。
1998年から「ねこぢるy」名義での活動を開始、『ねこぢるyうどん』等を執筆。

2006年に再婚し、2008年(46~47歳の時)に一卵性双生児のミミ子、ハナ子が出まれたようです。
作者、奥様、ミミ子、ハナ子の4人家族。
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漫画の構成

個人出版ですが、出版社の単行本と見まごうようなバラエティに富んだ内容です。

1話8ページの漫画が7話、1コマ漫画、口絵、双子が保育所で描いた絵などで構成されています。
第8話「うらっかわ」は40ページの長編。読み応えあります。
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好きなところ

今回は絵と漫画の手法的な話を中心に。

双子の服や双子を使ったデザイン

娘2人は、「ミミ子」と「ハナ子」なので、服の柄として耳や鼻が描かれています。
お母さんはえのき。何故えのき…?(笑)
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娘たちのカップにも耳と鼻が描かれています。細かい。
この他に、娘2人の服に「相模湾」「駿河湾」と描いてあったり、普通に読んだら気にならないけれど目を留めるとニヤリとすることが多かったです。
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口絵に描かれる双子モチーフのイラストがポップでかわいくて。
↓これとか。ちょっと不気味でもあるのですが、かわいいし目を惹きます。
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細部まで描かれた背景

一番好きなのは第8話「うらっかわ」です。
ラテン系イケイケなじいちゃんに南米大陸を連れまわされたという、お母さんの子ども時代の思い出話。

双子は聞き役としてしか登場しないのですが、自分の親も子どもの頃の話をよくしていたこともあり、懐かしく感じながら読みました。
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8話は細かく描きこまれた背景が多くて、見ごたえあります。
太陽のピラミッドとかマチュピチュといった、マヤ文明の遺跡。アルゼンチンの食べ物や街並み。
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この日本家屋が描かれたコマも好き。猫と鶏、ヒヨコとカラス。
一見、ほのぼのとした田園風景なのですが、冷静に読むとヒヨコや鶏が猫やカラスに喰われそうで、心配になりますね…(笑。考え過ぎな気もする)。
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手書きの文字と活字

この漫画、子どもの台詞は手書き文字、大人の台詞は活字です。
これにより、子ども独自の語り口というか、ちょっと舌足らずだったり、理論的でない部分が感じられます。
(※1話と1コマ漫画は全て手書き文字なので、比較すると違いが分かりやすいです)

私が過去に読んだ育児漫画でこういった手法を使っている作品はありませんでした。
すごいなあ、効果的だと感心しました。

まとめ

正直、あまり期待してなくて、「まあいいか。安いし」…で買ってみたら大当たりでございました。
電子書籍(Kindle)だけの販売ですが、興味のある方は是非。

関連サイト

こちらの応援サイトに作者のインタビューが掲載されています。
そせじKindle版応援サイト
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***
2018/11/26追記:
現在、3巻まで発売中です。どれも面白かった。3冊ともKindleUnlimited対象です。


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