妊娠・出産漫画ですが、元獣医で現在漫画家という異色の経歴を持つ作者の解説が丁寧でわかりやすいので、男性や独身の方、妊娠していない方にも読みやすいと思います。
作中に描かれるペットを飼っている方向けの情報(トキソプラズマのことや子供とペットとの接し方のポイント)が具体的で役立ちそうです。
※amazon、楽天ともにレビューなし。
内容紹介】
元獣医で現役漫画家による妊娠出産体験マンガ!!
子宮筋腫?つわり?高齢出産?ペット?
あらゆるお悩みも読めば解決!?
【感想】
楽天ブックスで予約していたのですが、直前に価格変更があったようで発送が保留されておりました。
作者は、元・獣医師という異色の経歴を持つ梅川和実さん。
2010年、37歳で妊娠、38歳で出産。
作者の経歴は帯にも書いてありました。
作者と近い経歴を持つ女性…働いて働いて、自分でキャリアを切り拓いてきたような、35歳前後の妊婦さんには特にオススメしたい漫画です。
全編フルカラー、全160ページとボリュームもありました。
この漫画の良いところ
最初にも書きましたが、解説がわかりやすく、読みやすいです。
獣医師としての経験があるからでしょうか?
説明が難しくなく、短い説明文と絵でさらっと読ませます。でも頭には入るという。
すごいなあ。
作者さんは「男性にも読める妊婦マンガを目指してみた」とあとがきで書いていますが、たしかに。
妊娠を経験しない(できない)、けれど子供を持つ可能性がある男性読者に向けて描いているせいか、単なる妊娠・出産の体験を描いた漫画にとどまらず、妊娠の諸症状についての解説書としてもよく出来ていると思いました。
妊娠週数の数え方、つわりについて、妊娠線について、羊水検査について、子宮筋腫って?切迫流産て??…等々、とっつきにくい話を、その言葉を聞いたこともないような男性読者にも分かるように図付きで解説してくれています。
表紙裏は、妊娠週数の赤ちゃんの図でした。
これは作者さんがつけたくて描いたのでしょうね。便利。
ニンプの身体と、仕事への想い
妊娠漫画として共感を覚えたのは仕事に対する想い。
つわりがひどくて休み、風邪をひいて休み、切迫流産で休み…。
このままでは連載が打ち切りになるかも?
…でも、休まないと赤ちゃんが危ない。休まざるを得ない。
作者の葛藤はいかばかりだったのでしょう…。
出産後に連載を開始している為、真っ最中の時期よりは冷静に描いていると思いますが、「仕事を休むこと」に対する恐怖心や不安がひしひしと伝わってきます。
読んでいて泣けました。
不安や恐怖から、お腹をパンチしていた、とも描いています。
これは批判覚悟で本当のところを描いたのでしょうね…。胸がいたい。
妊娠・出産の喜びと合わせて襲いくる「仕事なくなるかも」という恐怖感は女性特有だと思うのです。
自分の力ではどうしようもない、ある意味、運命のような絶対的な力で諦めることを強要されているような気持ちになったり。
頭では贅沢な悩みだとも思うし、子供を授かった喜びや出産が楽しみな気持ちもあるのですが、仕事との距離を変えなければならないのは苦しいです。
ご自身が経験されたこともあって、切迫流産に関する解説や体験談がわかりやすくてありがたかったです。
これは、作者自身が反省した点であり、働いている妊婦さんへの注意喚起でもあるのかな…?
幸いにも私は、36週まで働いても何のトラブルもありませんでしたが、先日出産した友人(35歳女性、会社員)は、切迫流産気味で有給を全部使い切った上に休んでいました。
「切迫流産気味らしく、医者に家で安静にしていろって言われて何もできなくて暇すぎて困る」と話していて、え?安静=何もできないの??…と、彼女の状態がよくわからなかったのです。
この本を読んで、安静にするって「立ちあがってはいけない」「寝てなければならない」状態だということを初めて知りました。それは辛い…。
妊娠9か月目くらいから体重もぐぐっと増えるから、更に辛いなあ…。
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仕事と妊娠・出産の両立(?子供を産んで、諦めることを少しづつ覚えていくことと言いますか…)という作者自身の経験と、わかりやすい解説のおかげで、読みながら自分と照らし合わせて色々考えることができました。
旦那さんに読ませたい妊娠・出産漫画としては男性が描いた阿部潤さんの「はじめて赤ちゃん」くらいしか思い浮かばなかったのですが、この本は妊娠した女性が買って、旦那様と一緒に読むと良さそうだなあ、と思います。