産婦人科医であり一児の母でもある宋美玄さんによる妊娠・出産の解説書です。
妊娠中の女性のよくある疑問について、感情論でなく、一方的に押し付けるわけでもなく、根拠となる文献を提示しながら論理的に解説してくれます。
本なのですが、診察室で宋先生と向かい合って、具体的なアドバイスをもらっているような感覚で読めます。
はじめて妊娠したとき、この本を読みたかったなあ。
予防接種を受ければ感染症にかかりにくいように、読んだら周りの人やネットの情報に惑わされずに済む気がします。
妊娠を考えている方、妊活中の方、妊娠中の方におススメしたい一冊です。
B6版・144ページで、1380円+税です。
amazon ★★★★★(5.0) ※レビュー1件
楽天 レビューなし
【内容紹介】
「身体を冷やすと陣痛が弱くなる」「妊娠中に太ると難産になる」など、こと妊娠・出産に関する情報には医学的根拠のないウソが多いもの。
そんなウソに振りまわされて無駄に悩まされる多数の妊婦さんたちを診てきた産婦人科専門医で一児の母である著者が書く、初めての妊娠・出産の実用本です。
一般的によくある疑問に対して、
1.医学的根拠のある本当のことで、
2.リアルに実践できそうなことを、
3.偏りなく論理的にまとめました。
経験論や精神論ではなく、根拠のある情報を知りたいという方におすすめです。
【感想】
私は現在2人目を妊娠中です。
1人目を妊娠した時は何も知らなくて、ネットに書かれた様々な情報に惑わされることも少なくありませんでした。
「ネットは微妙だ…。」と書籍に手を伸ばすと、専門家がトンデモ説を述べていたり、一昔前の意見のだったり。
産婦人科の先生に相談すればいいんですけど、常に混んでいるせいかピリピリしているし男性医師だし…と勝手に遠慮して質問でき無かったりしました。
はじめての妊娠は不安でいっぱいな上に、考えること、決めること、調べることもいっぱい。
はじめて触れる情報もてんこもりで、怪し気なものも多いけれど振り回され。もっと勉強しとけば良かった…と思うこともありました。
この本はやさしいです。
言葉が平易でわかりやすいのもありますが、1人目の子供を妊娠中の不安な気持ちに寄り添ってくれている。
寄り添いながらも伝えるべきことは伝えるという姿勢で、必要な情報が明確かつ論理的に書かれています。
読むことで妊娠・出産に関する情報を整理することができ、妊娠・出産にまつわる疑問や不安を解消してくれる一冊です。
試読ページは見つかりませんでしたので、迷う場合はネット上にある宋先生の記事を読んでみるのもいいかもしれません
●間違いだらけの妊活習慣(Project Dress)
●妊娠糖尿病に対する誤解と食事療法(朝日新聞apital)
この本の構成
プレ妊娠編、妊娠編、出産編、産後ケア編の4部構成で、番外編として妊娠カレンダーなどがついています。
それぞれの時期のよくある疑問について解説されています。
本に収録された「よくある質問」は出版社の紹介ページに全て書いてあります。
プレ妊娠編(約11ページ)
「予防接種はしておいたほうがいい?」「そのほか、妊娠前にすべきことは?」「妊娠のサインってどんなもの?」という3つの質問に対する解説が書かれています。
例えば予防接種の解説は4ページに渡ります。
・妊娠中に感染症にかかることのリスク(感染症別に具体的に)
・受けた方がいい検査の話(抗体検査なんてあるんですね)
・不活化ワクチン、生ワクチンに関する解説
最後に2行程度の「Answer」が書かれて終了。合わせて、根拠となる論文の情報も示されます。
こんな感じで「よくある質問」に対する「細かい解説」、「解答(結論)」が書かれています。
頭に入りやすいせいか、1-2時間くらいでさらっと読めました。
妊娠編(約67ページ)
妊娠編はページ数が最も多く、3部構成になっています。
「普段の生活」…運動、食事、薬、嗜好品、セックスなど妊婦がしていいこと・してはいけないことについて
「トラブルについて」…つわり、体重増加、逆子、高齢出産、妊娠中毒症などのトラブルについて
「病院のこと」…病院の選び方、健診の内容、出生前診断、無痛分娩など病院関連のはなし
病院の選び方については、各施設の特徴や特色(大学病院や総合病院、個人病院で何が違うのか)、出産にのキーワード解説などがまとめてあって便利だと感じました。
そして、助産院と自宅出産、両方合わせても1%に満たないという話はびっくりしました。そんなに低いのか…!
雑誌などで総合病院や個人病院と並列で書かれているので、もっと比率が高いと勘違いしていました。
出生前診断についてもわかりやすかったです。
名前は知っている母体血清マーカー検査、胎児超音波スクリーニング、NIPT、羊水検査・絨毛検査の4つについて解説されています。
検査って4つもあるのか!…とびっくりしました(私は母体血清マーカ検査と羊水検査しか知らなかった)。
検査で得られる確率についての解説を読んで2度びっくり。
可能であれば妊娠する前に勉強し、冷静に考えたり夫婦で相談したりして、心構えを作った上で検査した方がいいと感じました。
出産編(約17ページ)
出産の兆候や一連の流れ、安産のためにできること、自然に産みたいという想いに対する解説など。
「自然に産みたい」に対する解答として「多くの医師は自然経過に任せます」「でも赤ちゃんとお母さんの安全のためには医療介入が必要なことがあります」とあり、主な医療介入について解説されています。
そういえば忘れてしまいがちですが、出産は命がけの作業でした…。赤ちゃんだけでなく、自分自身の命にも危険がある。自然であることにこだわり過ぎて安全を見失ってはいけないなと感じました。
産後ケア編(約16ページ)
産後の身体やセルフケア、母乳のこと、セックスのことなど。
番外編(約10ページ)
妊娠カレンダーと超音波写真の見方が書かれています。
妊娠カレンダーはあっさりしていますが、必要な情報はカバーされていて見やすいです。
妊娠中のセックスと体重管理について
うちのブログで一番人気の記事は「WEB漫画を読みつつ考える、妊娠中のセックス・産後の夫婦関係・セックスレス」。
2番目に人気の記事は「妊娠時の体重管理におススメのレシピ、体重計、アプリ」
実は育児漫画の記事より「妊娠中・産後のセックス」と「妊娠中の体重管理」の方が人気です。
(これらの記事が人気なのは、「妊娠 セックス」等のキーワードで検索して見に来ているからです。)
この2つについても、この本では解答されています。
自分の体験談を読みたい人が探しているのであれば、参考になればと思います。でも、自分の中の疑問や不安を解消したいのであれば、この本を読んだ方が早いです。
ほんの数ページの情報ですが、ネットでこの情報を見つけるのは大変だと思います。
セックスについて
セックスについては「(妊娠中に)セックスってしていいの?」「産後のセックスはいつからOK?」という2つの質問に答える解説がついています。
妊娠中のセックスについては「したいときにしましょう。したくないときはやめましょう」という言葉から始まり、お勧めの体位、セックスをするとお腹が張る理由などが書かれています。
体位については、妊婦が長時間仰向けでいると(=つまり正常位だと)仰臥位血圧症候群になるかもしれない…という言葉にびっくりしました。そんなのあるのか…。
マッサージを断られるのも仰臥位血圧症候群が原因だとか。勉強になりました。
妊娠中、寝るときはシムスの体位がいいと言われるのも、姿勢が楽というだけでなく、これの予防が理由の一つなんだろうな…(あまり語られませんけれど)。
妊娠中にセックスするとお腹が張る理由にも納得できました。
体重の管理について
「体重が増えていると叱られました」「太ると妊娠中毒症になるって本当?」などで解説されています。
運動や食事のこと、つわりのこと、妊娠糖尿病のことなども体重管理と関連する部分です。
ただ「増やすな」と言われるだけではどうしようもないのが体重管理。
宋先生の体重管理の考え方はこの記事にエッセンスが込められています。本だともっと詳しいですが。
●妊娠糖尿病に対する誤解と食事療法
個人的に、番外編にある「妊娠カレンダー」の体重増加の目安が現実的だと感じました。
妊娠5カ月時点で1.5~2.5㎏。6カ月でも2.5~3.5㎏。
(手元にないのですが)私が読んだ何冊かの妊娠解説書より少なめな気がします。
まとめ
ネットで検索して誰かが書いた記事を読むより、この本を1冊読んでしまった方が早く不安が解消するし、どうすればいいか?が分かると思います。
専門家=産婦人科として働いているだけでなく、妊娠・出産を経験した人が書いている本だからこそ、の説得力があります。
個人的に、自分では普通だと思っていたことが間違っていたり、自分の情報が古かったりすることに気付かされたり、本当に勉強になりました。
専門家医ママシリーズは他に2冊あるようなので、こちらも機会をみて読んでみたいと思います。