2011年~2013年発売

『子育て戦線異状あり! ファルコン隊長』(うえみあゆみ)感想~新しい!キャラは良いけど読みにくい~

投稿日:2013年11月16日 更新日:

表紙に惹かれていたので、迷いに迷った挙句購入しました。
感想は「キャラはいいのにな~!新しいのになあ~!…よ、読みにくい」。

そんな感想なので「是非読んで!」と勧められないのが寂しい。
ですが、新しいと感じるから知ってほしいし、磨き方次第でもっと輝くとも思える作品です。

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amazon ★★★★(4.4)
楽天 ★★★★★(5.0) ※レビュー1件
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【内容紹介】

この作品は、「ファルコン」と呼ばれるママ友の子育てをマンガ化したものです。
初めはネタか?と思いましたが、次第に周りのママ友たちも魅了されていき…。
現在、ファルコン式子育てを取り入れた結果、多くの家庭でそれはもう極上の男が発育中。

【感想】

うえみあゆみさんはイラストレーターで漫画家。小学5年生の娘さんと小学1年生の息子さんがいるそうです。

作中に描かれるのは、息子さんが保育所の年長さんの時期(5~6歳?)。
息子4人とママ友4人の日常が描かれ、その「普段の生活の中」に潜む母親の気の緩みや子供の成長のカギが描かれます。

この漫画のここが好き!

1)「ファルコン隊長」という強烈なママ友キャラ
2)日常の中での再発見(次に繋がる気付き)が描かれている

育児漫画としては新しいと感じました。アイデアはいいと思います。

「ファルコン隊長」という強烈なママ友キャラ

ファルコンはいいキャラしていると思います。
突っ込み役として秀逸だし、指摘にムカッときませんし、かっこいい。
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作者のママ友がモデルだそうです。
現実ではこんな姿ではないでしょうが、いるかもしれないと思えるリアリティがある、良いキャラクターだと思います。
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2)日常の中での再発見(次に繋がる気付き)が描かれている

私が好きなのは「社会の常識を知れ」という話。
物語は、作者母子とファルコン母子がスーパーで出会うところから始まります。

ファルコンと世間話をする間、作者の息子はスーパーの商品を触ったり通路でしゃがみこんだり。
作者は気付きませんが、ファルコンは作者の息子の様子を見ています。
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そんな中、鮮魚売場で息子が陳列してある魚を触ってしまいます。
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「触っちゃダメ!」と子どもの手を取り、拭こうとする母親。
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違うだろうが!?」ファルコン隊長は母親の間違いを指摘。作者母子は鮮魚の担当者に謝ります。
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ファルコンの指摘によって、母親自身が間違いに気付き、息子と共に頭を下げる。
この流れはとても良い。読んでいて爽快感があります。

伏線もあるので、母親がとっさに「手に匂いが…!」と自己都合な言葉を口にするのも理解できます。
ファルコン隊長が息子ではなく友人である作者に対して指摘するのもいい。

欲を言えば余韻を残すために後日談も欲しいところですが…(この辺の指摘は後程)

気になるところ

お前何様だ?…という調子で書きますが、この漫画は出来不出来の差が激しくて、安定感がありません。

気になるところは2点。

1)絵がわかりにくい
2)話(教訓)がわかりにくい

私は、絵が下手なのは読むうちに慣れるので気にしませんが、わかりにくいのはダメだと思っています。
この本、1冊1260円です。冒険するには値段が高い。

上で紹介した「エピソード2」(2話目)の出来は素晴らしいと思うのですが、1冊まるごと読むと読みにくいと感じることが多いです。

1)絵がわかりにくい

単純な話です。キャラクターの描き分けができていません。
メインキャラである母親2人=ファルコン隊長とあゆみ(作者本人)はわかりやすいのですが、2人の息子の顔が似ていて…。
アップだと違いが分かるのですが、引きで見るときには髪の毛のトーンと服装で判別するレベル。
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また、表紙部分でファルコンが作者の息子と触れ合っているのも混乱の原因です。
私は表紙を見て作者の息子=ファルコンの息子と勘違いし、漫画を読み進めると話の筋が通らないから気付く、ということがありました。
表紙の絵はオフショットといった雰囲気でファルコンの表情も優しく、好きな絵が多いのですが、なぜ自分の息子(ジュニア)とのツーショットじゃないんだろう…?
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説明もなく新キャラ(作者の娘さん)が登場して、この子だれだっけ??…てなってしまったり。
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漫画の基本的な文法が守られてないので、混乱しました。
最初の2話が読みやすくておもしろいと感じる分、読み進めるほどにわかりにくくなるのが残念。

話(教訓)がわかりにくい

この漫画はこういった起承転結で描かれています。

起…子供(たち)が問題行動を起こす
承…母親(たち)が子供に同調する(注意しない)
転…ファルコンが登場、間違いを指摘
結…母子ともに自分の間違いに気付いて改める

漫画が8Pと短いこともありますが、最後の2ページに転と結が来ることが多いです。そして、余韻を残すコマやページはありません。
育児漫画は8Pのものが色々あり、私が読んでいるものの多くは最後に「オチがある」「余韻を残す」構成になっています。

『ファルコン隊長』は教訓を語って終わる為、1番盛り上がったところで唐突に終わるという印象です。結果「え??これで終わり?」…という気持ちになりました。
間違っていないかページをめくり直すこともしばしば…(最後に余韻がある終わり方をしているのは「千年のメソッド」という話くらい)。

こういう漫画だと思って読めばいいのかも知れませんが、心に落ちてこないんですよね。教訓をもう一押しして欲しいといいますか。

後半になるにつれて、起・承でのテーマの説明が不十分なままファルコンが登場し、理解が追い付かないまま終了するようになります。
ファルコンが語っている内容が良いだけに、伝えるテーマを絞って漫画で読ませて欲しいなあ、と思いました。

偉そうに色々書きましたが、客観的にチェックできる人がいれば直りそうなことなんですよね。

続編に期待したい

新しさってなかなか生み出せない要素です。
ファルコン隊長というキャラクターを生み出して描いた時点で勝ちだと思うんです。この力強さはなかなか生み出せない。

SNSによって情報が拡散する現在では、サムネイルや表紙絵の力があることは強みになります。
ファルコンは女性受けもするけれど、男性も「おっ」と思うキャラです。

5-6歳くらいの男子の育児漫画は少ないし、以前ヒットした『ママはテンパリスト』などともかぶらない。
ファルコンのキャラクターとビジュアルは出来上がっているし完成度が高いので、ネームが良くなれば大変身すると思うんだけどなー。

続編に期待したいと思います。

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