絶版している双子育児漫画。
中古価格がえらい高騰しています。絶版した育児漫画では最高額に近いんじゃないかな…(現時点で2300円くらい)。
その評価が納得できるくらい、内容の良い本なんですが…高いよね。
ひとまず近隣の図書館を検索し、ない場合は司書さんに相談して取り寄せてもらってもいいかもしれません。
amazon ★★★★★(4.8)
楽天 ★★★★★(4.92)
【内容紹介】
かわいさ2倍。うんちも2倍。うれしさは2×2倍。
双子の子育ての疑問がとけ、元気になれる一冊。
ママにはもちろん、パパやおじいちゃん・おばあちゃんにも絶対オススメ。
【感想】
産後の子育ての難しさや苦しみを描いてるため、独身の方よりも妊娠・出産を経験した人、妊娠中の人の方が楽しめると思います。
私は図書館で借りて読みました。最初に本棚で見つけたときは「絵が古いなー…うちは双子じゃないしなあ…」と思って棚に戻しました。
その後、借りて読んだらおもしろい。特に産後うつの話は、これだけの内容の漫画を読んだのは初めてでした。
作者のプロフィール
作者の横山文恵さんは、旦那様、長男・梨一くん、次男・貴也くん+三男・聖也くん(双子)の5人家族。
長男・梨一くんが3歳半を過ぎた1999年の夏頃に双子を出産。
2000年頃?育児雑誌「ベビーエイジ」に双子育児漫画を投稿。2001年7月号から連載を開始。
この漫画の気に入っているところ
まとめるとこの3点。
1)0歳~1歳8か月頃までの様子が2カ月ごとに描かれている
2)泣いたり怒ったり、うつになったり。つらい経験もが描かれている
3)双子育児は大変そう、だけどとっても楽しそう
気になったのは絵の古さ。でも、読んでみたら全然気になりませんでした。
双子も表情豊かでかわいいし、長男の梨一くんもかわいい。
書き文字が多くてちょっと読みにくいと感じますが、情報がみっちり詰まっているので読むのは楽しいです。
0歳~1歳8か月頃までの様子が2カ月ごとに描かれている
漫画に描かれたエピソードの時期が描かれているので、こういう時期はこんな感じかあ…と想像できるのが楽しいです。
特に双子ならではのその時期の悩みについて、作者の解決策や使って便利だったグッズが描かれているのがいいですね。双子でなくても参考になります。
例えば哺乳瓶でミルクを2人同時に上げる時に楽な体勢、寝かしつけはトルコ式がいい…等々。
生後23日にして母乳を諦めて哺乳瓶に切り替えたそうですが、編み出された技「クロス授乳」の方法についても床でやると腰をやられるからベビーベットに寝かせてやるといい等、細かく描いてあって勉強になります…。
※トルコ式寝かしつけは高橋由佳里さんの『トルコで私も考えた・トルコ嫁入り編』に描かれていた方法ですね。
トルコ式寝かしつけだと「手があくからもう一人をあやせる!」という喜び方は双子ならではの喜び方ですね~。
amazon、楽天のレビューを読んでいると、双子を持つ親からの指示が高いと感じますが、それも納得の内容の濃さです。
双子育児漫画は「双子の育児漫画一覧」にまとめましたが、この漫画は中でも双子育児に役立つ情報が多いので育児書のように使えると思います。
泣いたり怒ったり、うつになったり。つらい経験も描かれている
作者の大変だった、苦しかった経験を描いているけれど愚痴っぽくは感じないところはすごい。愚痴っぽく感じないとはいえ、描いてある経験は「壮絶」の一言。
赤ちゃんが泣くとパニック状態になる。生まれたての赤ちゃんが泣く頻度でパニック症状が発すると思うと、生きた心地がしません。
作者は通院して症状が落ち着いたようですが、大変だったろうなあ…。
産後10か月くらいまではまともに睡眠を確保できず、みんなでボロボロになりながらの育児。作者の表情が大変すばらしいと思います…(やばい、という思いがひしとが伝わる…)。
11か月の頃には双子の1人・聖也くんが入院。退院したと思ったら今度は「はしか」に。
そして長男・梨一くんが結膜炎に。あれよあれよと、慌ただしく過ごしていたら双子の誕生日を忘れてしまう…。
梨一くんが発熱した時のお母さんの言葉が涙を誘います…。3人まとめて熱出したりしたら対応しきれる気がしないわ…。
産後うつだったこともあり、長男のわがままに対して怒りが爆発し母に怒られたとか、双子の近くから逃れたい衝動に駆られたとか。
最終的に「ちょっとぐらい赤ちゃんが泣いてもいいじゃん」と開き直って育て始めたようですが、大変だったんだなあ…と思います。
旦那さんやお母さん、お姉さん、医師、看護師さん等々、近くにいる人たちに頼って甘えて乗り切った日々。
特に旦那さんの行動や言葉は素晴らしいし、すごいと感じました。
昼間は仕事、夜は作者に変わって寝ないで双子の面倒をみたり(赤ちゃんが泣いても起きないけれど、作者が泣いたら起きてくれていたらしい)。
2人いると思うからプレッシャーに感じる、むっちゃ手にかかる1人を育てていると思えばいいよ!と提案したりとか(逆転の発想…!)。
産後うつのことを描いている漫画自体が少ないこともありますが、ここまで詳細に描いているものは珍しいです。
この漫画がとてもわかりやすくて、多くの人に読んでほしいと思いました。
生まれてから1年間の育児の大変さが描かれているけれど、それは双子でなくても感じる部分で。漫画に描いてくれているから読んでいる読者は気持ちが楽になるというか、苦しいと感じる自分を肯定できます。
多種多様な作者の表情が育児の壮絶さを物語りますが、自分が同じように苦しいと感じた時に作者の顔を想像したら、なんだか笑えるんですよね。
この漫画が予防線を張ってくれるから自分はどん底まで落ちなくて済むといいますか。
しかも、読んでいて作者の苦しみに共感するけれど、作者が甘えているとか愚痴っぽいとか嫌な気分にはならない。
このさじ加減が絶妙だと思います。
双子育児は大変そう、だけど楽しそう
ここが重要というか、この漫画のすごいところ。
読んでいると長男+双子の3人の子供を育てることの大変さ、辛さを感じます。それでも最終的に「楽しそうだなあ」「双子もいいよねえ…」と思わせてくれる漫画です。
沢山「辛かったこと」を描いているけれど、成長に合わせて「楽になったこと」や「双子ならではの楽しいこと」も描いてあり、喜ぶ作者の様子を見て一緒に嬉しくなります。
「楽になったこと」が1人育児とはちょっと違っているのも面白い。ささいなことが喜びに繋がるのはいいなあ。
漫画の中では10か月くらいから手がかからなくなったと描かれていますが、ベランダに出たりいたずらしたり、今度は目が離せなくなったことが描かれています。
子育て話の流れで、双子が1歳8か月の冬、旦那さんの実家に引っ越すことになった話も描かれています。
子供3人抱えての引っ越しはなかなか壮絶ですね…。冬だから作者は風邪に倒れ、引っ越し直後に子供は病気になり…(水ぼうそうって冬でもかかるんですね…)。
新生児の時期から約1年8か月の育児の様子が描かれており、作者が経験した産後うつについても描かれています。
双子漫画としてだけでなく育児漫画としても良い出来だと思うので、中古価格が高くなるのもうなずける内容でした。
出来れば沢山の人に読んでほしいと感じる漫画だけれど、入手しにくい状況が歯がゆいです。払ったお金が作者に還元されないし。
作者さんの知り合いがこの記事を読むことがあったら、最近はJコミなどの電子書籍で出すことを検討してほしいとお伝えください…。