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『おひとりさま出産』(七尾ゆず)感想~年収200万円以下!ワーキングプアなアラフォー漫画家による本気の妊娠体験記~

      2014/12/13

38歳、年収200万円以下の漫画家が、結婚せずに1人での妊娠・出産(・子育て?)を目指すコミックエッセイ(作者の実体験を描いた漫画)です。
おひとりさま出産

読んだ感想を一言で述べると「amazon、楽天レビューが荒れそうな漫画だ…」でした。
とはいえ売れないとそういったことも起きないので、人の目に触れる機会が増えると良いなと、感想を書きます。

「普通に考えたら、そんな選択はしない。」
万人にそう言われそうな妊娠体験記ですが、作者本人が選んだ道が険しくとも幸せなものでありますように。

B6版サイズで160ページ、670円です。
出版社サイトで1-2話が読めます

※amazon、楽天ともにレビューなし

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【内容紹介】

独身です。貧乏です。40歳直前です。
だからこそ、子どもを産みたい、育てたい!
自分も子どもも幸せになる、という覚悟を持って臨みます!

作品あらすじ

1話8ページ×19話と、おまけ漫画(2ページ)が収録されています。

38歳のある日、ふと気が付いた。
結婚出来るまで子どもを作らずに待っていたら、結局、何もできないまま人生を終えるのではないか。
おひとりさま出産

「産めるときに産んでおけば良かった」そんな後悔だけはしたくない。
あえて無謀な計画を立てよう。甲斐性のない男を待たずに、一人で産んじゃえ!そう決意します。

彼氏と交渉の末、結婚しないでとタイミング法を試して妊活開始。5カ月挑戦し、39歳目前で妊娠。
その後、アルバイトをしながらお金を貯めたり、反対する母親をなだめすかしたりしながら過ごす、妊娠5ヵ月までの日々が描かれます。
おひとりさま出産

【感想】

正直、人を選ぶ作品です。出版社サイトで1-2話が読めますので試読しての購入をお勧めします。

作者と近い境遇の人は共感できるかも知れません。
”フツウ”の妊娠・出産漫画を探している方は避けた方がよいと思います。1巻は妊娠5カ月で終わっており、出産まで至っていませんし、読後感が良いとは言えない(色々な意味で続きが気になりますが)。

私は”電波少年的”な作品だな、と思いました。
(アラフォーの人ならなんとなく雰囲気が伝わる筈だけど、30歳以下の人には伝わりにくい表現ですみません…。)

作者は本気。決して悪ノリしている訳ではない。
しかし社会実験的な意味合いをはらんでいるし、漫画として描き世に出すことに、作者の物書きとしての業を感じさせる作品です。

色々なことを考えさせてくれる作品だと思うのだけれど、普通に読んだら壁に投げつけたくなるような衝動を覚えても不思議ない気がします。

作者のプロフィール

作者の七尾ゆずさんは大阪生まれのAB型。
アルバイト歴24年、年収200万円以下のアラフォー漫画家。
おひとりさま出産
彼氏のミウラ氏は借金を抱え、税金を滞納して口座は差し押さえ。国民年金さえ払っていません。
おひとりさま出産

この漫画の特徴

私には姉がいて、作者と近い状況で生活しています。
40歳、独身、年収200万円そこそこ(だと思う)の非正規労働者。

そのせいか、あまり他人事とは思わずに読みました。

特徴的なのは2点。
1)年収200万円以下(ワーキングプア状態)での妊娠・出産生活が描かれている
2)アラフォー独身のおひとりさまのリアルが描かれている

作者は、
・年収200万円以下
・彼氏とは結婚できそうにもない

…という状況で、1人で子どもを産み、育てることを決意。
タイミング法にチャレンジします。

基礎体温を測って婦人科病院に通い、排卵チェック。そこで初めて”排卵してない月もある”ことを知る。
私も最近まで知りませんでしたが加齢って悲しいもので、そうみたいですね。「いつでも妊娠できる」とか、思っちゃいけないんですけど、中々気付けない。
何気に、基礎体温の測り方のポイントが書かれていますね。「婦人体温計を使って、朝一に寝たまま測る」って当たり前のことですが適当になりがち…(私も本で読むまで知らなかった)。
おひとりさま出産

妊活5カ月目には、無事妊娠。スムースですね。
しかし、アルバイト生活で年収200万円以下、貯金は17万円しかない状況。産後の生活を考えると休む余裕もなく働かねばならない。

妊娠中に100万円貯めて、産後はそれを切り崩しながら生活する…という計画を立てて短期アルバイトを増やす作者。つわりが軽く身体も丈夫なのでこういった対応もとれましたが、読んでいて不安を覚えました。
おひとりさま出産

喜ぶ間もなく、使える行政サービスなどは全て使わねば!と電話で相談。

ひとり親家庭への相談窓口」なんてのがあるんですね。知らなかった。
更に言えば、年収200万円以下って生活保護ギリギリの水準なのですね。
入院助産制度なんてあるのか…。初めて知りました。
おひとりさま出産

相談窓口の方のアドバイスが現実的ですね。

生活保護を受けたら漫画家なんて不安定な仕事は辞めなければならない。
養育費は少しでももらった方がいい。
それでもギリギリカツカツの生活。

それはそうだろうなあ…。
おひとりさま出産

漫画を連載している現在は既に出産した後なのですが、実際に相談した当時は現実を突きつけられる度にへこんだろうなあ…。

本人だって「このままだと将来が不安」だと思っているし、出来る限りの対策はとって来たでしょう。
働いていない訳ではない。贅沢している訳ではない。でも手元の貯金は17万円ちょっとしかない現実。

実際、非正規雇用を続けて正社員として働く機会を得ないまま40歳近くになっていたら、履歴書だけで選考から落とされます。
条件の悪いパートタイム(=アルバイト)の仕事しか選べない。
いわゆる”ワーキングプア”状態。日本でも労働人口の4分の1を占めるといわれ、社会問題ともなっています。

アラフォーの作者が「年収200万円以下の世界から抜け出してから、子どもを産む」ことは、結婚してから産むこと以上に、現実的ではない。

そんな悪条件の中で、計画的に子どもを妊娠し、産む決意をする。
今よりも困難な状態になるかもしれない方向に舵を切る。

これは、生半可な覚悟では出来ない決断だと思うのです。
おひとりさま出産

そんな年収で子どもを妊娠して産みたいなんて、無責任だ。
計画性がない。お金を貯めてから産めばいいのに。
女1人で妊娠・出産して子どもを育てるなんて。子どもがかわいそう。
自分が後悔したくないからって…!子どもはおもちゃではない。

様々な切り口から、作者を批判するのは簡単です。
実際、親にも友達にも散々言われている様子は作中で描かれていますし。
おひとりさま出産

作者もその辺は分かっています。
作者にとって、この作品は”笑わせる漫画”というスタンスなのか?おどけながらサラーっと描いちゃうので印象に残りにくいのですが、作品の中にチラチラ葛藤や自己否定的な場面が登場します。

そもそも5カ月間子作りしている間に、散々揺れる想いは経験したでしょうし、妊娠してからもずっと迷う想いは抱えてきたでしょう。
それでも産むと決めたのです。
おひとりさま出産

例えば作者が、漫画家という仕事を諦めていたら。
20代のうちに契約社員や派遣社員としてフルタイムで働いていれば、収入も安定したしキャリアも築けていたかもしれない。
新しい彼氏だって見つかって、結婚して幸せな家庭を築けたかもしれない。

過去の自分にダメだしして、「出来ない言い訳」をして、世間の常識に従って、彼氏や母を恨んで、社会や政治や世の中を呪って、卑屈に嗤いながら生きていくこともできた。

でも、そんな未来を選ばなかった。
後ろ指を指されても、人から笑われても、後悔しない人生を選ぶ決意をした。
勇気ある、前向きな決意だと思います。

漫画家という仕事が諦められなかったからワーキングプアになってしまった側面もあるでしょうが、諦めなかったからこそ、今の作者があり、この作品が産まれている。

他人にとって馬鹿らしく批判したくなる決断だったとしても、作者の未来は作者自身のものです。
未来は刻々と変わっていくし、自分自身の未来は変えられる。

普通に考えたら「無謀」ともいえる選択をした作者が、その選択によって生まれた子どもが、不幸になるとは決まっていません。
そして、幸せも不幸せも、解釈次第。世間ではなく、自分自身が決めることです。
おひとりさま出産

単純に読むと「何も考えてない能天気な作者」に見えるかも知れませんが、丁寧に読むと葛藤や迷いの跡を感じます。

気になるところ

水を差しますが、読んでいて二ノ宮知子さんの影響が鼻につく。
私にはただの真似にしか見えませんが、実はギャグ(パロディ)の可能性もあるのかな…?
ネタならば「ぎゃぼー」とか書き入れるくらい徹底した方が読み手も「あ、のだめネタか」と分かり、スッキリします。
おひとりさま出産

まとめ

「現在」という時代を反映した、尖った雰囲気の妊娠・出産漫画です。
人を選ぶのは確かですが、この作品が必要な人は確実にいると思います。

私は「子どもの為に生きるという作者の決意は歪である」とも思っていますので、作者の意志を全面的に支持することは出来ませんが、未来を向いて生きていることには敬意を表したいです。
(2巻、3巻と作品が続いていく内に変化することに期待。)

作者の覚悟や本気が、作者とお子さんにとっての幸せにつながりますように。

補足:貧困という社会問題

こんな作品もあるようです。
『失職女子。』生活保護を受けて生活している女性が自身の体験談を書いた本。未読。
作者:大和彩さんのブログ

また、こういう本もある。親の貧困が、子どもに連鎖するという問題を書いた『チャイルド・プア』。
こちらは読みましたが、なんとも切ない気持ちになりました。

努力しても負(貧困)のサイクルが断ち切れない。それもこれも全部、親の責任なのか。
将来を悲観し、自殺する親もいて、負の連鎖は子をがんじがらめにする。抜け出せない。

語るのが難しいのですが、Togetterまとめ「生活保護のリアルを描いた話題本『失職女子。』ーー著者が、出版後の反響に対して感じたこと&問題提起」を読むと、『おひとりさま出産』という作品が炙り出す現代社会の差別意識が見えてくるかと思います。

例えば

1)努力次第で何とかなる(貧困は回避できる)
2)(生活保護を受けるくらいなら)結婚すればいい
3)結婚しないで子どもを産むとかありえない

私はワーキングプアを「社会的システムによって出来た落とし穴」だと思っていて、私自身が落ちることもあり得ると思っています。
変な例えですが、自動車が普及したことにより交通事故が起きるようになったのとあまり変わらない(=本人の努力だけでは防ぎきれないエラー)。
加害者が見えない(社会システムのエラーだ)から、特定個人の責任として語られることが多いのですが、社会(福祉)の問題です。

しかし、一般には「努力が足りない!」と糾弾されやすいテーマです。
「継続的に結果が出せない人は基本的人権も放棄しろ!」と言っているのと変わらないのですが、責める側の視野は狭く、その事実に気づかない。

話がややこしくなるので今回の感想はワーキングプアに絞りましたが、この他に婚外子差別やシングルマザー・ファーザーへの対応不足、女性差別といった日本社会の問題が絡みます。

冒頭で「amazonレビューが荒れそう」と書いたのは、パッと読んで批判や説教をしてしまいそうな作品だと思ったからです。

作品が届くべき人に届くことを願っています。

追記:インタビューや紹介記事へのリンク

「おひとりさま出産」 年収200万円以下、アラフォー、独身の漫画家が描く実体験いがやちか
無謀? 結婚ナシ、金ナシ、リミット目前での〈おひとりさま出産〉―アラフォーマンガ家の挑戦三浦ゆえ
「金も男も要らぬ。私はとにかく子が欲しい!」 “貧乏アラフォー女子”が「未婚で出産」を決意した理由(根本聡子)
アラフォー、リアル物語 おひとりさま出産(七尾ゆず)(漫画偏愛主義/松尾慈子
『おひとりさま出産』(七尾ゆず)感想まとめ(Togetter)

 - 1-1-2 出産時の年齢が30~39歳 , ,

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