私が初めて読んだ村上たかしさんの作品は『星守る犬』。書店に平積みされているのを購入してボロ泣きしました(1巻発売直後の時期)。
育児漫画について調べていて、村上さんは昔から育児漫画(家族漫画といった方が正しいかな?)を描いている男性作家の一人だと知りました。
amazon ★★★★(4.3)
楽天 ★★★★★(5.0) ※レビュー3件
【内容紹介】
昔はあんなに可愛かったムスメが、いまや父を『メガネ』よばわり。
大喰い、遅刻魔、生意気盛り、反抗期ムスメとの仁義ある(!?)闘い。
泣いて笑って、父と娘の親子エッセイ。
村上家のルーツがわかる感動の描き下ろしエッセイも収録。
【感想】
娘・いゆちゃんの成長の様子を描いた『くう・ねる・そだつ』。『ムスメが悪くて~』を読む前にこっちを読みたいと思っていたのですが、絶版していたので諦めることにしました。
村上たかしさんは1965年生まれ。奥様はエッセイストの村上佳代さん。
長女・いゆちゃんは2011年1月時点で15歳とのことなので、1995年前後(村上さんが30歳くらいで)生まれたと思われます。
長男・いおくんは8歳年下なので2003年頃(同じく38歳くらいで)生まれているようです。
単行本では娘・いゆちゃんが15歳の終わりから17歳くらいまでの、反抗期?の様子が描かれています。
タイトルが『ムスメが悪くて困っています。』なので、どれだけ酷い反抗期なのだろう…?などと心配しながら読み始めましたが、娘さん、全然悪い子ではないです…。意思がはっきりした頭の良い子だ、という印象です。
娘さんがあとがきを寄稿しているのですが、この文章が気が利いていて、テンポもいいしキレもあるし、笑えるし。
この父にしてこの子あり、なのかなあ。
「ムスメが悪い」の何か悪いのか。
例えば口が悪い…とか
遅刻し続けて17日連続で日直をやっているとか
食い意地が張っていて隣町まで餅をもらいに行くとか、学食でカレーばかり頼んでいたら「いつもの」で通るようになったとか(これはすごい…!)
テスト前に集中力を高める為に木刀を持って『仁義なき戦い』のテーマソングを流すとか。
「年頃の娘を育てている気がしない…」と嘆く両親を横目に、マイペースで突き進む娘・いゆちゃん。
おもしろいなあ。友達になりたいタイプの子だ(笑)。
私も女なのですが、高校の頃は色気より食い気だった気がします。恋愛やおしゃれに夢中な子もいたけれど、グループが違ってました。
毎日毎日、部活して友達とだべって、授業中に居眠りして、家では勉強したり漫画描いたり本を読んだり。
忙しかったから、親と話したり遊んだりすることはほとんどなかったと思う。
いゆちゃんは、両親や弟ともコミュニケーションをとっているし、父親が自分のことを漫画に描いても怒らない。
「漫画に描くな!」と言った話もあったけれど、この気持ちはわかる気がする。「良い自分」や「優しい自分」は面白くはないですし、照れくさいし。
私は育児漫画は好きですが、子供が思春期や反抗期を迎えた時期まで続けることには疑問を抱いています。
単純に、私だったら描かれたくないので。自分の人生だし、自分で表現するならいいけれど親の解釈で描かれたくはないな…と思ってしまう。
更に本作は「ムスメが悪くて」と言っている。これはどうかなあ…?
読む前は色々と気にかかりましたが、読んでみて、村上さんの家は大丈夫な気がしました。
描き下ろし部分に、村上さん自身の家族について言及してあります。
父はよそに女の人がいて離婚しその後は放浪?
母は子供を育てる為に美容室で働き、妹は16歳にして家出。
自分には反抗期というものがなかったこともあり、反抗期を迎えた娘の言動に腹を立てながらも、父親である自分がある意味で信頼されているからかなあ、と思える。
家族、そして奥様・佳代さんへの愛情があふれていて素敵だと思いました。
高校生になる娘がいて、本人も50歳近くになっていても奥様を愛していらっしゃるんだなあ。
読んでいて、娘・いゆちゃんの言動がかわいらしく面白い思えるのは、作者・村上さんが愛と信頼と自信を持って娘を描いているからなのでしょうね。
『ムスメが悪くて困っています。』という題名は、いゆちゃんが「描くな!」というエピソードと同じで。「ムスメがいい子でシアワセです」なんて書いたら照れくさくてやってられないから。作者の裏腹な気持ちを表しているのかも知れません。
本当に悪い子で手がつけられない状態だったら、こんな題名には出来ないですよね。
=======
読み終わって、いゆちゃんが小さい頃の漫画も読みたくなりました。
育児漫画はシリーズで色々出ています。
『ほんまでっせお客さん』全3巻と『村上たかしのほんまかいな見聞録』。
帯に書かれた西原理恵子さんの文章が的確に作品を表していて、感心しました。