~2000年発売

『はいからちゃんがやってきた!』(大和和紀)感想~45歳での出産と育児

投稿日:2013年6月5日 更新日:

1998年発行。残念ながら、絶版しております。
私はこの本を図書館で手にとりました。

「はいからさんが通る」で有名な大和和紀先生。
学生時代に「あさきゆめみし」で源氏物語に触れたな~という方も多いのではないでしょうか。

この本、中身は漫画ではなく、イラスト付きの文章エッセイです。
かわいいイラストとテンポの良い文章ですらすら読めます。内容もさっぱりしていて、年の功のようなものを感じます。

amazon ★★★★★(5.0)※レビュー2件 
楽天   ★★★★★(5.0)※レビュー1件

【内容紹介】

子育てはいつだってドラマチック!
あの『はいからさんが通る』の大和和紀が急転直下母になり、漫画に育児にフル回転!
ぶっつけ本番!臨場感あふれる子育て絵日記
子育ては誰もが素人。育児のドタバタを漫画家の鋭く、ユニークな観察眼と母親の温かな眼差しでとらえたイラスト&エッセイ。笑える、腑に落ちる子育てコピーつき

【感想】

この本の著者紹介によると、1991年に結婚、1994年に娘・菫ちゃんを出産とあります。
1948年3月生まれらしいので、菫ちゃんが大和さんの誕生日前に産まれていれば45歳での出産、誕生日以降であれば46歳での出産、となります。

菫ちゃんが2~3歳くらいの時期のエピソードを中心に構成されています。
既に絶版となっているのですが、「年を重ねてからの妊娠・出産」をポジティブに捉えさせてくれる良作です。

はいからちゃんがやってきた!P4-P5

1テーマが4Pで構成されており、菫ちゃんを妊娠・出産したときのこと、公園デビュー、保育園のこと、子供服のこと、子連れの旅行、産後の体型戻し、トイレトレーニングなどについて書かれています。
文章エッセイだと、読むのが億劫になる方もいるかもしれませんが、大和さんの文章は読みやすいです。

はいからちゃんがやってきた!P38-39

2回の流産を経て、大和さんが菫ちゃんを産んだのは32週のとき。1102gの超未熟児。
1歳8か月の時点で身長80㎝、体重9㎏。
1歳半から2~3か月に1回、未熟児発達外来に通っていたらしい。

高齢出産の苦労や愚痴は書かれていませんが、医師の言葉に気を揉むことやカチンとくることが多々あったのでしょう。
歯磨きの講習会で出会った初老の歯医者の対応に対して、こんな感想を書いています。

=====
聞きながら次第にむかついてきたのは、オジさん医者の言外にちらつく「この馬鹿っ母は」とか、「近頃の親はまったく…」というニュアンスだった。
近頃の…だが、このトウの立ったハハは怒るゾ。
(中略)
育児ビギナーの私が言うのもナンだが、子育ては目先のことも大事だが、それより20年、30年たってその子がどんな大人になっているかが問題なのではないか。
歩くのが何か月早くても遅くても、言葉やおむつはずしが1年やそこら遅くたって、二十歳になれば笑いバナシではないか。
(はいからちゃんがやってきた!P7-P8)

=====

また、菫ちゃんを妊娠した当時を振り返り、

=====
たまたま親となった私たちはその子に選ばれ、大きなところから生命を預けられたのだ。そしてその役割は、その子を守り、サポートすることにすぎないと思う。
赤ちゃんは親の私物ではないのだ。
(はいからちゃんがやってきた!P20-P21)

=====

サクサクした客観的な文章がとても心地よいです。

はいからちゃんがやってきた!裏表紙

最初の方だけ引用すると真面目な内容に見えますが、”保育園に入れるまで、私の夢は「家出」だった”…と、疲れて悪循環に陥りそうだった体験や、元々子供が苦手だしモノグサな性格だから、子育てがしんどくて子どもまで嫌いにならないように育児は楽を決め込んで自分の時間を作るようにした、という話も書かれています。

はいからちゃんがやってきた!P125

文章の間に挟まれる挿絵は、流石!と思えるかわいさです。娘・菫ちゃんの表情がとても良い。

テンポも良いのでスラスラ読めますし、押しつけがましくもなく、説教臭くもありません。
伝えたいことは短い言葉でスパッと書いてあり、心を打たれます。

平易な言葉で年齢・性別を問わず読めるであろう育児日記。これは中々書けないと思うんです。
文字で「40歳を過ぎて出産したけれどすばらしいよ!娘を産んで私は幸せ」などと書かれるより、よほど説得力がある。

漫画家としてデビューして25年間、第一線で描き続けた女性の高い表現力と「年の功」を感じます。

=====
菫ちゃんが生まれてから描かれた「ベビーシッター銀」は物語系育児漫画の名作として挙げる方が多いです。
ご自身の経験を活かして描かれたのでしょうか。このエッセイ内でシッターさんに助けられたとも書いてありました。

それにしても、今も現役で面白い漫画を描き続けているのがスゴイです。
連載中の「イシュタルの娘」は大変面白くて、戦国時代好きの私にはたまりませんです…。

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