【記録】とある新人漫画家関連

【メモ】コミックエッセイには「事実を描かなきゃいけないのか?」問題

投稿日:2017年6月29日 更新日:

『とある新人漫画家~』に関連して。
コミックエッセイ(実録漫画/エッセイ漫画/私小説漫画)には事実を描くべきかどうか、て話が上がっているので私の見解を述べます。

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コミックエッセイと事実描写について

「コミックエッセイ」の定義

「コミックエッセイ」
実録漫画/エッセイ漫画/私小説漫画も同じ意味という解釈で良いかと思います。

元々は「エッセイ漫画」の方が一般的な呼び方だったと思います。
メディアファクトリーが「コミックエッセイ」という言葉を推すようになって、「コミックエッセイ」の方が定着・一般化してきた感じです。

エッセイとは?

エッセー【essay】 の意味(出典:デジタル大辞泉)

《「エッセイ」とも》
1 自由な形式で意見・感想などを述べた散文。随筆。随想。
2 特定の主題について述べる試論。小論文。論説。
goo辞書より引用

随筆とは?

ずい‐ひつ【随筆】 の意味(出典:デジタル大辞泉)

自己の見聞・体験・感想などを、筆に任せて自由な形式で書いた文章。随想。エッセー。

随想とは?

ずい‐そう〔‐サウ〕【随想】 の意味(出典:デジタル大辞泉)

折にふれて思うこと。また、それらを書きまとめた文章。「随想録」

まとめると

コミックエッセイ=自己の見聞・体験・感想などを、筆に任せて自由な形式で書いた漫画

…で「自己の見聞・体験・感想」て部分がポイントになるかと思います。

コミックエッセイで許されている創作部分

創作というか「ハッキリ描かないのが普通になっていること」として、名前があります。
特に育児漫画だと、子どもの名前は仮名(偽名)であることが多いです。

・「息子」「娘」と呼んで名前は出さない
・ごっちゃん、あーちゃん、など一部は出すけど全体は出さない
・全く違う名前

『とある新人漫画家~』では編集者を「ボーノ氏」と呼んでいますが、特に問題はありません。帯などで「実名を挙げてすべてお見せします」と書いているのが少々引っかかりますが…。

『とある新人漫画家~』とねとらぼの件

詳細はこのまとめ参照。コメント欄でも色々意見が交わされています。
「ねとらぼ編集部の見解」と、それに関するコメント

全て事実である必要はないし、漫画だから誇張表現もあると思っていますが、事実確認や客観性もまた、大切だと思っています。

2ページの漫画を丸々転載

前も書いたけど、これは事実誤認だと思う。
佐倉色さんがこのコミックエッセイを執筆した当時は、「ねとらぼ」の記事は削除されているので確認できません。
でもネット上に残っている「謝罪漫画」は確認できます。これは1ページ(1画像)しかありません。

後で公開された「ねとらぼ」記事で使用されている画像は、単行本1巻の表紙・謝罪漫画の切り出し・ブログのスクリーンショットなので3枚。これも一致しない。

この件は”2ページ”て描かなくても通じる話です。無断転載された、で済む。単純に、書かなくて良い情報なのです。

「作者がそう記憶している」のは仕方ないですが、これは一種の告発漫画なので、確認して、事実を踏まえた方が説得力が増したと思います。
その点は残念に思います。

『私たちは繁殖している』のフィクション宣言

内田春菊さんの育児漫画です。単行本1巻は1994年刊行。
文庫版イエローの文章エッセイ部分で「フィクションです」と書いています。

フィクション宣言は漫画でも描いていたと記憶してますが、その部分が見つけられなかった…orz
漫画で描かれた「フィクション」の説明としては「私と言うフィルターを通したのだから、実体験を描いているけどフィクションだ」(意訳)といった内容でした。

『毎日かあさん』の”エピソードはフィクションだった”という話

先日最終回を迎えた『毎日かあさん』。
インタビューを読んだら「フィクションだった」と答えていました

西原理恵子さん 新作は「卒母した女性の悩みや第二の人生描きたい」(毎日新聞)より引用

--家族を題材にしつつも、漫画はあくまでフィクションでした。

実際、いろんなお母さんがネタをすごい持ってきてくれたんですね。

エッセイは「作者の見聞を元に描かれている」ので、他のお母さんから聞いた話(他者の体験)として描いていれば問題なし。
他者の体験を自身の体験として描いているとしたら、「エッセイ」の定義から外れます。

インタビューは一部を切り取っているので私が勘違いしている可能性もありますが、作中のエピソードが創作されていた可能性はあります。

『ど根性ガエルの娘』の事実と異なる演出描写

玄関にある壁の穴

2015年刊行のKADOKAWA版単行本の1巻に収録されている話(2017年発売の白泉社版にも同じものを収録)。

玄関にある壁の穴を秘密基地のようにして遊んでいた、というエピソード。

父が荒れていくのに従って、壁の穴は増え続けた、と描写されています。

父からのツッコミ

単行本描き下ろしで、父・吉沢やすみさんが「事実と違う」と訊いてきた、という小話が収録されています。

これに対して作者(大月悠祐子さん)は、実態はもっと酷かったことを述べたうえで”そのまま描くのはやめて(中略)創作エピソードで表現しました”と書いています。

事実とは違うけど、事実はもっと酷く、凝縮・演出した描写ということ。

父親が描いたエッセイ漫画『パパとゆっちゃん』

こちらも持っていますが、たしかに壁の穴は玄関に1つだけです。穴は父が蹴って出来た、ということも描かれています。

『パパとゆっちゃん』は「吉沢やすみ」ではなく「吉沢かすみ」が主人公の漫画です。

この漫画も、設定が事実と違っていて。

娘・ゆっちゃんは小学1年生。息子・やっちゃんはゆっちゃんの7歳上(設定では兄妹です)。
『ど根性ガエルの娘』によれば、姉・ゆっちゃんと1歳年下の弟・やっちゃんです(事実は姉弟です)。

作品を連載していた時期が1991年~1994年頃なので仕方ない気もしますが、こういう例もあります。

フィクション系コミックエッセイ?

内田春菊さんの使う「フィクション」とは意味が違います。人物、エピソードを含め、すべて創作されたコミックエッセイ(?)。
私の認識では、KADOKAWAメディアファクトリー系のコミックエッセイだけに起きている現象で、描いているのは野原広子さんとおぐらなおみさんに限られています。

レタスクラブの『私の穴が埋まらない』

おぐらなおみさんによる、セックスレスをテーマに描かれた漫画です。
説明文に「フィクションコミックエッセイ」とあります。

コミックエッセイ劇場の一番人気はフィクション作品

KADOKAWAの「コミックエッセイ劇場」はよく読みに行くのですが、デイリーランキング1位は常に野原広子さんの『離婚してもいいですか?』(フィクション)です。

人気があることは悪くありませんが、実録系漫画と勘違いして読む人も多い。
amazonレビューの★1で多数指摘もされています。

野原広子さんの単行本の内容紹介はこんな感じで変化しています。1冊目は実際の体験なので別です。

『ママ 今日からパートに出ます!』(2014年1月刊)→コミックエッセイ
『離婚してもいいですか?』(2014年8月刊)→特に記載なし
『ママ友がコワイ』(2015年8月刊)→セミフィクションコミックエッセイ

「コミックエッセイ劇場」にも「レタスクラブ」にも特に注意表記なし。
「コミックエッセイ劇場」は名前からして誤解を生むし、「レタスクラブ」はコミックエッセイの並びに配置されている。「フィクションです」て注意表記してよい話だと思うけれど。

また、無理に「コミックエッセイ」と呼ばず、単純に「漫画」「コミック」との表記で良いとも思います。

子どもがいない人が描く育児漫画

現在、「子どもがいない人が育児漫画を有名サイトで連載している」て話もありまして。
実名は伏せます。

「夫婦で2人の息子を育てている」て設定だけど、子持ちとは思えない描写や発言が多くて大変話題になっています…(悪評という意味で)。
誤解であるならば単純に、子の後ろ姿を写真にとって上げれば解けるのだけど。

私が情報を追う限りでは、子持ちな感じはしませんでした。

※追記
その後注意喚起を行うこととなりました。
育児系サイトはキュン妻さんを起用するのは止めた方が良いと思う、という話。

まとめ

コミックエッセイは人気のジャンルとは言え、こうなってくるとちょっとなあ…。
作者・編集者・サイト運営者のモラルとは…(遠い目)

私はコミックエッセイに「事実だけしか描いちゃいけない」とは思っていません。『ど根性ガエルの娘』のような演出はあっていいと思いますし、漫画ならではの表現もあって良い。

でも正直、ちょっと危険な感じがするんですよね。誤解が膨れて読まない人も増えるのではないかと。

コミックエッセイと創作漫画の話は、2014年にも書いています。

【番外】コミックエッセイと創作漫画の違いについて考えた

この記事を書いていて思ったことです。興味のある方だけどうぞ。 ●日経DUALで岡山進矢さんの『初めまして、パンダ親父です』が始まりました~2児の父親による半創作の4コマ漫画

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現在のままだと『西遊記』も『三国志』も、4コマや8コマで読みやすく表現したら「新感覚!セミフィクションコミックエッセイ!」てなりますね。
そんな漫画、誰が読むのでしょうか。

そうなる危険性に気付いてほしいと思っています。

話がズレた感がありますが、この辺で。それでは~。

※8/5追記:
『透明なゆりかご』(沖田×華)も私の中では創作漫画扱いです。主人公は作者の名前ですし、実体験がベースにあったとは思いますが…。

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