【記録】とある新人漫画家関連

【読書メモ】『とある新人漫画家に、本当にあった怖い話』(佐倉色)感想と色々考えたこと

投稿日:2017年6月14日 更新日:

『とある新人漫画家に、本当に起こったコワイ話』(佐倉色)を読みました。
その後、5つほどTogetterまとめを作りました。

今回はその経緯と、Twitterで感想を読む中で感じたことなど。
感想や作品紹介というより、編集部の対応についての意見記事みたいになりました。すみません。

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Twitterではお伝えしましたが、今回扱われるKADOKAWAの編集者は、育児漫画やコミックエッセイを編集している方とは別です。
育児漫画を編集している方たちは本当に頑張ってくださっています。その辺の活動を称える記事は別に書く予定です。

とある新人漫画家に、本当に起こったコワイ話(佐倉色)

2017年6月9日に発売されたコミックエッセイです。
2015~2016年頃に起きた「色紙1600枚手描き(無償)問題」の当事者だった作者が、当時を振り返り、問題提議するような漫画です。

B6判・216ページ、紙の単行本は1080円、Kindle等電子書籍は969円です。

こちらで3章まで試読できます。
マンガハック
Togetterまとめ

内容紹介

2016年、ネットを大炎上させた、某巨大出版社とのバトル
一部始終を実名をあげてすべてお見せします!

デビュー作にしてとんでもない担当にぶち当たった漫画家。我慢に我慢を重ねたけれど、
「1600枚、ギャラなしで読者プレゼント色紙作成をお願いします。」と言われ、我慢は限界に・・・・・・。

データ紛失、ネタバレ、ネットでの中傷・・・・・
新人作家を襲った信じられない出来事を業界を干される覚悟で描きます。

作者プロフィール

作者の佐倉色さんは、会社員として働きながら漫画を描く兼業作家。

大人になって初めて画材を買って趣味で4コマ漫画を描き始め、「マンガハック」に投稿。
他社から話があったあと、KADOKAWA「少年エース」系の雑誌編集者・ボーノ(仮名)氏にスカウトされる。

2015年にKADOKAWAの『桜色フレンズ』で連載開始。全2巻。

ネタバレありの感想

漫画として気になった部分

作者がエピローグで指摘していますが、漫画としては文字が多い。顔芸になってる。
正直読みやすい作品とは言い難い。

表現として評価する部分

でも表情や表現の幅・演出は素晴らしい。本当にバラエティ豊かだし、演出、決めゴマなどメリハリも効いている。
漫画を描き始めて2~3年の人とは思えない技術の高さや工夫を感じます。

作品としてはグイグイ読ませます。
ただ、かなりヘビーで暗い体験ですのでフラッシュバックを起こす方もいるようです。ご注意を。

中心人物・ボーノ氏について

内容として気になったのは、結果的に作者を自分の都合の良いように、コントロールしている編集者・ボーノ氏。

最初は「仕事ができない」で済んでいた話が、だんだんと意図的に見えてくる。

記事を取り下げる為に、「ねとらぼ」に作者自ら連絡させる。スカイプや電話には反応しないのにTwitterは監視している。読者のハガキを1枚だけ送り付ける。

その1つ1つの行動と描写は、まさにホラー。こわい。無意識っぽい(自然体でやってる)のが余計にコワイ。
この部分が読み解けるかどうかで、作品評価は違ってくると思います。

ボーノ氏と、その指示に従った作者の危うさについては、漫画家・紅林直さんや、歴史作家・恵美嘉紀さんがブログで解説しているので、そちらを参照ください。

『とある新人漫画家に、本当に起こったコワイ話』に関する、漫画家・紅林直さんのコメント
「とある新人漫画家に、本当に起こったコワイ話」の話題の中心がねとらぼになってしまう理由(歴史ニュースウォーカー)

私も、編集者によるコントロール感(結果的に事実だけでなく嘘/デマを使って作者を動かしている)までは理解していたものの、それが「業界的にタブーな事例」「作家を潰す行為」とは思っていませんでした。

洗脳?共依存??自己評価が低い?

ボーノ氏に反論できない、ボーノ氏を否定しきれない作者の姿は「新人漫画家だから」だけではないと思います。
DV被害者とか洗脳(マインドコントロール)経験者に近い気もして、依存に近い感じ。かなり危うい。

なんというか、色紙1600枚も描くの?≒暴力振るわれても離婚しないの?≒それだけやられても嫌いにならないの?…みたいに感じていたところ、市川大河さんが書評を発表されまして。これを読んで合点がいきました。

とあるライター20年生が読んだ、本当にアルアルな怖い話

一部引用すると、

もっと簡単な比喩を用いれば。
ああいう輩、「あちら側」はヒモ男なのだ。

ヒモ男は、自分では仕事をせず(原稿は書けない)、甘い言葉と臭い台詞だけで、いいように働かせようとする。

言語化してもらえて有難い…。

作者は気付いてないようですが、正直、新人漫画家さんにはその点も気をつけて頂きたいと思います。

パッと聞くとやさしい言葉だけど、脅しに近いし、嫌なことでなくても違和感があれば逃げ出しても良い。

好きだったところ

上述したような、ご自身の壮絶な体験を「おもしろい漫画として」描き切った点はもちろん評価しますが、個人的に好きだと思ったのは最後の10ページです。

作中に描かれた作者の新たな行動や志を羅列すると、

・色紙1729枚を手描きで描き切ったこと
・漫画で当時の思いを描き、216ページの本として発行したこと
・現在、4コマ漫画誌で連載をしていること
・出版界に問題提議しつつも、「他人に代わって貰おうと思うことはやめ」「自分を変えること」を念頭に置いていること

作者は単にコミックエッセイを描いて、編集部への批判や不満を述べているのではありません。
実際に新たな行動を起こし、結果を出している。

諸々読み込んだ上で、作者さんの決意や行動は素晴らしいと思いました。
だから是非、読んで欲しいと思いました。

Togetterを使ってまとめたもの

私は2016年当時はネット活動を休んでおり、知らないことばかりでした。
作者のブログは読みました(はてブ経由で)。でも知らない作家だしTwitter見てないしで、当時はチンプンカンプンでした。

作品中に登場するWEB関連情報まとめ

2017年6月11日(日)作成。あらすじのようなものです。

単行本を読んで、多分、ネットでの話は知らない人も多いだろう、と思ってまとめました。
まとめても、作品のおもしろさは損なわれないと判断しました。

個人的なクライマックスは作者さんの新連載情報だったんだが…。そこは注目されないっていう…orz

試し読みページまとめ

「WEB情報まとめ」を作成するにあたって、試し読みがあった方がよいだろうと思い、試読ページまとめも作りました。
この時はあまり考えてなくて。作品を多くの人に知って欲しい、という単純な想いで作りました。

でも翌日、自分のTwitterとTogetterまとめの通知欄がすごいことになっていて…。
予想外のバズが発生していました。びっくりした。

「ねとらぼ」が見解を表明

6月12日(月)、作中で取り扱われていた「ねとらぼ」が見解を表明。

そしてこの記事もバズる…。
Togetterまとめ2本とねとらぼ記事、複数のバスが発生した結果、単行本の感想が吹き飛んでしまいました。

単行本読んだ人の感想まとめ

6月13日(火)作成。
作者さんや編集さんがまともな感想が読めない…と思い、6月12日に早朝作っていた個人用の「単行本感想まとめ」を再編集し、公開。
「作者さんが読むこと」を意識しているので、大変長いです(無断転載拒否の方のみ削りました)。

「ねとらぼ編集部の見解」と、それに関するコメント

6月13日(火)作成。
「ねとらぼ」記事に対し、作者がTwitterでコメントを発表していたので、別に「ねとらぼ」記事に対する反応もまとめました。

色々なコメントを読んで自分も勉強になったし、読者や作者さんというより、ねとらぼと、飛鳥新社の中の人に読んで欲しいと思いました。

記事を読んで「ねとらぼさん、ちょっと落ち着いて」と思いました。
また「なんで作者を矢面に立たせてるんじゃ~!それをしたらKADOKAWAと同じやろが!!」という飛鳥新社への不信感もあります。

一応、公平・公正にまとめています。
こちらも、無断転載禁止の方、「ほう/へー」といった感嘆詞のみのもの、「あとで読む/読んだ」というものだけ削りましたが、コメントと思うものは全部入れてます。

個人的に、出版元が「ねとらぼ」に確認をとる必要はないと思っています。でも作中では具体的な名前を伏せてもよかったとは思います(すぐにバレるけど)。

漫画家・紅林直さんのコメント

6月13日(火)作成。「ねとらぼ」に関するまとめのコメント欄でまとめた方がよい、と言われたので作成。紅林直さんの許可も頂いています。

上にも書いたけど、この部分を読み解けるか?で作品評価は変わると思います。

自分の経験から、編集部の対応を考える

今は別業種なので過去の経験になりますが。
メーカー+小売店の大企業と、モバイルゲームを営む小さい会社での勤務経験があります。出版業ではありません。

担当者の立場で、「ねとらぼ」の記事への対応

自分が担当者だったとして。
会社の規模によって法務部が顧問弁護士になる時もあるし、フローが違う場合もあるでしょうが、概ねこんな感じではないかと。

1)事実を上司に報告。今後の対応を確認。
2)窓口は広報部が担当。「ねとらぼ」への連絡もこちらから。
3)反論記事やプレスリリースも広報部が作成。
4)法務部、IR部がサポート役となり、チェック&アドバイス。
5)告知前にカスタマーセンターに連絡。対応マニュアルをメンバーに周知。
6)事実を伝える記事を公開。
7)公開後は企業の窓口は広報部、株主の窓口はIR部、個人の窓口はカスタマーセンターが担当。

流れとしては読むと大仰に見えるけど、多分、1-2時間程度のやりとり&ミーティング開催で済む案件だと思います。
正直、大した手間ではない。

例えば商品なら企画担当者(プランナーやデザイナー、MD)、ゲームだと作った人(ディレクター、プランナー、プログラマなど)が関係しますが、その人たちは一切出ません。出す必要ないし。
仮に「商品のパクリ疑惑」が起きたとしても、矢面に立つのは企業であり、窓口は基本、広報部・IR部・カスタマーセンターで、パクリ元企業との対応は法務部になります。

漫画家はフリーランスですが、例えばゲーム制作の現場でもフリーランスのディレクター、プランナー、プログラマ、グラフィッカーが働いています。
タイトルの売上が変わるほどのビッグネームでもない限り、表には出ません。

参考:過去の事案での講談社「Kiss」編集部の対応

出版社だとこうするのが普通かな、という参考に。
きちんと反論する部分は反論するし、非を認める部分は謝罪する。

『コトコトくどかれ飯』へのツイッター上でのお問い合わせに関する編集部の見解とお知らせ

ただこの件、講談社の対応は悪くないと思いますが、作者の峰氏は扶桑社を通じてではなく、Twitter(個人)で抗議行動を行っています(しかも企業が休みになるお盆期間に…。)
それを受けて作者の田所さんが返信するという悪手を打っている。

新人漫画家への教育の必要性

今回のコミックエッセイの中で作者の佐倉色さんは(色紙問題について)「漫画家が窓口になるわけにはいかない」と描いていますが、その通りです。

企業に勤めた社会人として、現在の「作者が矢面に立つような出版社の対応」はまずいというか、常識がない。
また、トラブルが発生したとき、編集部を通さずに作者が勝手に情報発信するのもどうかと思います。無駄に問題を大きくするだけ。出版社のダメージにもなりますが、名を出している作者さんのダメージが一番大きいと思います。

情報の取り扱いについて

大きめの企業だと、社員は新人研修などで社内の機密情報管理について学びます。また、先輩上司(コーチ/メンター)をつける等して相談しやすい体制を作るなど、トラブル防止策をとります。

ゲーム会社だとフリーランスの方と取引・発注前に「秘密保持契約書(NDA)」を結ぶのが普通です。別に「業務委託契約書」も交わします。

契約書は正直、手間・お金・専門知識・読み解く技術が必要になるので導入は慎重にした方が良いですが、常識的な部分のレクチャーを含めて「秘密保持契約」くらいは結んでも良いような気がしています。

画像の引用・無断転用や著作権のこと

「ねとらぼ」の記事と、作者の対応に関連して、画像の引用・無断転用の件も話題になっています。
特に昨今、TwitterなどのSNSで無断転用が当たり前になっていますし、出版社が販促の為にそれを促進するような動きもある。

普通の人に「引用」と「無断転載」の判断ってつくのでしょうか?
自分も日々悩みつつ記事を書いていますが、特に現在は判断が難しいと思うんです。

例えば今回、Twitterに投稿された漫画の試し読みページは著作者による発表。
でも読者がKindleの画面キャプチャをTwitterに添付した場合は無断転用になる。
togetterまとめも無断転載にあたります。(作者・公式アカウント・編集部に作成報告はしています)

この辺は編集者も認識しておくべきだし、作家自身に積極的に教えてもいい部分です。

新人編集者・漫画家向けにマニュアルやQ&A作って配布するだけでも違うと思います。

まとめ

現在でも作者さんを応援したいな、単行本をちゃんと読んで欲しいな、と思っています。

出来ればネット上の情報だけで判断せずに、漫画を読んで欲しい。
漫画を読んだ上で、作者の姿勢や作品を批判するのは自由です。

また、変な話ですが、まとめ記事やはてなブックマークのコメント欄を読んで欲しいです。
若干荒れ気味だし、コメントつき過ぎて読みにくいですが…。

色々な事実が目の当たりに出来ます。先輩作家さん、漫画家さんのコメントも素敵だと思って読みました。

作者さんが望むのは、感想の先にある、未来に向けた改善だと思います。まとめやコメント欄が、そこに辿りつくきっかけになれば良いのですが。

紙の単行本が在庫不足気味ですが、出来れば読んで頂ければ幸いです。
マンガハック
Togetterまとめ

※追記
育児漫画を担当しているKADOKAWA編集さんの活動について記事を書きました。

KADOKAWA発の育児漫画・告知/広報活動の変遷を追う~編集者さんのがんばりを讃えたい企画

昨日、『とある新人漫画家に、本当に起こったコワイ話』の記事を書きましたが。作中に登場するのは「大変ヒドイKADOKAWAの編集者・編集長」です。 育児漫画単行本を一番多く出しているのもKADOKAWA ...

続きを見る

※更に追記
とりあえず、Togetterで意見を求めて「新人作家さんの役に立つチェックリスト」を作成することにしました。

【日記】新人漫画家や小説家に知っておいて欲しいTipsを作成してます

単なる近況報告です。 ここ1-2週間くらい、ブログ更新の頻度が下がるし、更新しても育児漫画から離れた内容になると思います。 がんばるぞ~

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※重ねて追記
わかつきひかるさんの自費出版エッセイ(電子書籍のみ)が、佐倉色さんへの回答のような内容でした。
数々のトラブルを経験した新人女性作家が、20年のキャリアを積み、当時を回想しながら新人作家にアドバイスするような内容です。
漫画家、小説家問わず、作家さんが読めば参考になると思います。

【読書記録】生業としての小説家戦略 (わかつきひかる)感想~小説家や漫画家必読!情報満載な実用書

いやいや、とても面白かったしお役立ちでした。 『とある新人漫画家~』読んでショックを受けた人は、これ読んだ方が良いよ。 漫画と小説でジャンルが異なりますが、先輩作家によるアンサーのような1冊です。 自 ...

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