【書評】妊娠育児の創作漫画

『コウノドリ』5巻(鈴ノ木ユウ)感想~立会出産・双子・卵子提供

投稿日:2014年7月1日 更新日:

何度かおススメしている、産婦人科病棟での妊娠・出産の様子を描いた医療漫画です。
まとめて感想を書こうとしていたのですが、書きたいことが多すぎてまとまらないので、1巻づつ書くことにしました。

5巻では【立ち会い出産編】【双子編】【卵子提供編】の3シリーズを収録。
珍しく1冊で綺麗に終わっているので、試しに1冊だけ購入して読んでも十分楽しめるし、作品の雰囲気もわかるかと思います。
「モアイ」で試読できる4話(短期連載の頃)と比べると、絵が安定してサクラ先生(主人公)が男前になってると思います。

B6版・208ページで価格は607円(税込)です。
※Kindle版は7月25日発売。
講談社サイト「モアイ」で4話試読できます

amazon レビューなし
楽天 ★★★★★(4.67) ※レビュー3件

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【内容紹介】

出産は病気ではない。だから通常の出産に保険はきかない。産科医療は怪我や病気を治す訳ではない。なので通常の出産に産科医は必要ない。だが、何かが起こりうるから産科医は必要なのだ——。

【立ち会い出産編】初めての出産、初めての分娩室。見ず知らずの人間に囲まれた空間での出産の際に、夫が傍にいるということが、妊娠の不安を大いに和らげる。
他【双子編】【卵子提供編】を完全収録。

【あらすじ】

現在、講談社「モーニング」にて連載中。
総合病院の産婦人科を舞台にした漫画です。様々な事情を抱えた患者の妊娠・出産の様子を1話~4話程度で描いています。

余談ですが妊娠・出産漫画『うわばみ妊婦』の中で作者のカワハラユキコさんもおススメしてました。

登場人物

主人公は鴻鳥(コウノトリ)サクラという男性医師。
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毎回登場するキャラクターとして、個性豊かな医師や助産師が登場します。
同じく産婦人科医でサクラの後輩にあたる下屋女医(長髪でメガネ)、助産師の小松さん(お団子頭。若そうに見えるけどアラフォーくらいの筈…)。
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サクラと同期の産婦人科医、クールな四宮先生。
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NICU(新生児集中治療室)の白川先生。
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ER(救命救急)の加瀬先生、麻酔科医で趣味はマラソンの船越先生。
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2巻まではサクラ先生と下屋先生の2人だけだったのに、気付いたらかなり増えているな…(連載を読むと更に増えてますが…)。

1・2巻をまとめて買って読んだけど、サクラ先生のキャラがつかめず、あまり好きになれなかったんですよね…。
3巻を買うかどうか?で迷いましたし。

3巻を読んだら違和感が薄れてキャラクターへの愛着ができ、色々考え、ハマって。
サクラ先生の「実はジャズピアニスト」という設定も受け入れられるようになりました。

今はサクラ先生も含め、みんな好きです。特に加瀬先生と小松さんが好き。
たまに登場するエロダメオヤジな院長も気に入っています。緊張感が高いマンガなので、箸休めとしてはいい。

作者のプロフィール

作者の鈴ノ木ユウさんは1973年生まれ。

大学卒業後、ロックミュージシャンを目指し事務所と契約し、活動。2006年くらいから漫画の投稿を始める。
2009年・35歳の時に息子さん誕生。
2010年・投稿作「えびチャーハン」が第57回ちばてつや賞入選。
2011年4月に37歳で『コウノドリ』連載開始。

以上、作者さんのサイトから引用しました。
鈴ノ木ユウOfficial Web Site

「ちばてつや賞」は懐が深いよな…。『ドラゴン桜』の三田紀房さんも借金の返済の為に漫画を投稿して30歳でデビューしてたし。
※余談ですが受賞作品はWEBで閲覧できます。第65回では『仁科さん。』が好き。

【感想】

4巻は救命救急・夫のDV・風疹がテーマで、読みごたえはあるけれど内容がヘビーでしたが、今回は4巻よりは明るかったように思います。

立ち会い出産編

今回一番好きだったエピソード。
立会出産は人によっては抵抗があるかと思います。育児漫画『まんが親』や『おかあさんの扉』を描いている吉田戦車・伊藤理佐夫妻はNGでしたし。
どちらかが「やりたくない」と思っている場合はやめた方が良いです。

でも、どうしよう?と迷っているなら是非。作中で助産師の小松さんも言っていますが、たしかに「人生変わる」みたいです(うちの旦那さんも変わったと言ってました)。
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作中では3組の夫婦が描かれます。
出産について予習万全?な田村さん夫妻。
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6人目を出産する出川さん夫妻。
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立会い出産で人生が変わった川崎さん夫妻。
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田村さん夫婦

立会出産の体験について、後日、旦那さんや男友達と話したとき、「え??出産てこうなの!?と驚くことが多くて…」と話していました。
未知の部分が多く、体験して初めて知ることが多かったと。

田村さん夫妻の体験を通じてコミカルに描かれるのそんな部分です。
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「立会出産」の体験談は、飲み会で盛り上がるテーマですね。
奥さんがあまりに辛そうなので戸惑った、あんなに時間がかかるとは思わなかった、頭を吸引するなんて知らなかった(子どもの頭の形が変わって心配した)、出産で血が流れるとは思わなかった…等々。近くで見ている男の人も色々考えるようです。
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会陰切開についてはうちの旦那さんも知らなかったらしく。内心は田村さんのようだったと思います。
私の記憶では、両親学級で軽く説明されたと思いますが、印象には残っていなかったようで、びっくりしたと。
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予習していても「知らないこと」「わからないこと」が多いのが出産。
陣痛が起こってから出産まで、ほんの12時間の経験なのですが、あれだけ濃厚な体験はなかなか出来ないと思いました。

出川さん夫婦と5人の息子

「長男を立ち会わせたい」と希望するも、断られる出川さん。
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この夫婦のエピソードは「母の出産に際して、戸惑いや照れももありスマホをいじっている長男」を中心に描いています。
読みながら実際にはこういう旦那さんもいるのかも知れない…などと思いました。

息子さんの場合は「どう接すればいいかわからないから、スマホに逃げている」感じでしたが、「逃げでスマホをいじり始めたら、妻そっちのけで(本気で)TwitterやLineでの実況をすることになった」りしたら、嫌だなあ…。
(うちの旦那さんは写真を撮影するとき以外、スマホには一切、触りませんでした。)

そんなことも夫婦で話し合っておいた方がいいのかも知れない時代なんだな…。
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余談ですが近年、立会出産が出来る病院は増えていますが、病院によって対応が違うので出産の予約をする前に確認した方がいいかもしれません。
総合病院では感染症予防などの観点もあり、子どもの立会いは断っている場合もあります。逆に、個人病院では家族全員で立ち会えるところもあります。

川崎さん夫妻

「オレには何もできないのに…」と思いつつ、出産に立ち会う川崎さん。
この場面でのサクラ先生の言葉は本当にそう。初めての出産で不安なのは女性も同じで。夫が近くにいてくれるだけで全然違いますから。
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川崎さん夫妻の体験談は、作者・鈴ノ木ユウさんがインタビューで答えていた内容とリンクするので、自身の体験をモデルに描いたのでしょうね。
すべての子の誕生は「奇跡」であり「おめでとう」-『コウノドリ』作者・鈴ノ木ユウさん(ミキハウス)
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小松さんの言葉「人生変わるよ」

丁寧だな、と思ったのは、助産師の小松さんは「人生変わるよ」と言い切っているのに対し、サクラ先生は「人生が変わるかはわからないけれど、夫婦にとって大切な時間になる」と表現していること。
サクラ先生が「立ち会うと人生が変わりますよ」と発言しても良さそうな場面なのですが、でも、言わない。言わせない。

小松さんが「人生変わるよ」と自信を持って発言出来るのは、助産師である母親が介助した出産に立ち会ったことで彼女の人生が変わっているから。
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【立ち会い出産編】を読んだ後、3巻の【自然出産と帝王切開編】を読み直すと、最初に読んだ時とは違った感想が浮かびます。
それぞれ、患者側の目線、助産師の目線。経膣分娩と帝王切開が描かれていて、対になるように感じました。
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双子編

過去に「双子の育児漫画一覧」をまとめたりしましたが、双子の妊娠・出産がどんなものか?はよくわかっていませんでした。育児漫画だから、主となるのは産まれた後ですし。
今回【双子編】を読んで、双子を妊娠した母親の精神的・肉体的ストレスがひしひしと分かり…。「なんで双子なんですか!?」とも言いたくなるよな…。

DD/MD/MMといった3つのタイプとそのリスクについての説明もわかりやすかったです。
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双子編では2組の夫婦が描かれます。
DDで不安いっぱい、双子を妊娠してネガティブになっている佐藤さん。
MDで子どもが小さい為、管理入院中の込山さん。1人目の子どもは死産している。

双子編で印象的だったのは、帝王切開での出産が決まった込山さんの必死の訴えかけに対し、ボソリとつぶやく白川医師。
「なーんか大袈裟だなぁ」
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普通にムカッとする発言ですが、NICU(新生児集中治療室)で日々赤ちゃんを助ける為に働いているはずの白川医師の発言でしたから、私は呆気にとられてしまって。
周囲にいた医師全員に聞こえてたのであれば、込山さんにも聞こえていそう。患者への配慮に欠ける発言だけれど、白川医師は若手でもあるので、ありそうだな…とも思える。

四宮先生の対応も素晴らしかったけれど(苦笑)、サクラ先生の言葉にはじーんと来ました。
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物語の終盤には、白川医師の真意というか、発言の裏にある事情も描かれています。

【双子編】は、現在「モーニング」掲載中の【NICU編】のプロローグでもあるのかも知れません。
白川医師がいるNICU(新生児集中治療室)の苛酷さの片鱗もうかがえますし、このエピソードで白川医師の成長を描いたことで、NICU編で描かれる白川医師の態度にも納得がいきます。
※NICU編は7巻か8巻に収録されるかと思います。
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卵子提供

アメリカで卵子提供を受け、45歳で妊娠した竹下さんを中心としたエピソード。
妊娠してから出産後までが描かれます。(卵子提供を受けるに至るまでや卵子提供の様子、金銭については描かれていません。)
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卵子提供については夫婦2人だけの秘密。なんとなく後ろめたさを感じ、近親者に伝えた方がいいのか?と葛藤する夫妻。
この辺は難しい問題ですね…。
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卵子提供だけでなく、高齢出産のリスク、女性の妊娠と仕事について(マタハラや社会制度の問題)、養子について、女性が子宮を失うことについてなどにも触れられます。

妊娠したものの、プロジェクトの責任者だから…と中絶の相談をする34歳の女性。
四宮先生の言っていることはそのとおりで。妊娠するのは、運の要素も高いと思う。妊娠したからといって、無事出産まで至れるか?は別の問題だし。
仕事を優先したいという気持ちもわかる。妊娠を簡単なものだと、軽く見る気持ちも分かる。でも肯定は出来ないなあ…。
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その一方で、女医の妊娠・出産について、怒りをぶちまける下屋医師。
このエピソードではサクラ先生、加賀先生、下屋先生の3人での世間話が数回描かれますが、子持ちの加賀先生がサラッとハラスメント発言をしているのが印象的でした。加賀先生のキャラだから淡々と「あー、こういう会話は日常的にありそうだなー」と思って読めるのですが。
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院長の「子宮はお役御免ってとこかな」という発言も。なんというか…ありそうですよね。
(子宮を摘出することで)命が助かったのであれば仕方ないけれど、他人には言われたくない言葉。
この後の小松さんのカウンターが素晴らしかった。
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サクラ先生が子宮全摘出を判断した件は、3巻収録の【喫煙妊婦】のエピソードと合わせて読むとより重く感じます。

まとめ

産婦人科医師にとって、私たち患者は何百、何千人のうちの1人。だから、軽く扱われたと感じることも少なくないし、医師の態度に腹が立つこともある。
一方で、私たち患者も産婦人科医師の日々の葛藤や判断は知らない訳で。

『コウノドリ』を読むことで、妊娠・出産に関する知識も増しますが、それ以上に産婦人科医の仕事のハードさ、難しさを痛感します。

6巻は【子宮外妊娠】【性感染症】【口唇口蓋裂】を収録予定とのこと。
最近の刊行ペースだと、9月発売かな?

次の巻も楽しみにしております。

※9/28追記
6巻発売しました。買いました。
今回は自分が全く知らないテーマが多く、色々考えさせられました。
また感想、書きたいな…。

そして次の7巻はNICU編ですね…。

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